質問を頂きました。1回の食事のタンパク質量についてです。

初めて質問します。
先生のブログと本で勉強させてもらっています。
一回の食事でタンパク質の吸収できる量について教えてください。
「よく20gずつ分けて食べ分けないと吸収されない。一回量で、たくさんは吸収できない。」と書かれている事がよくあるのですが、本当でしょうか?先生の仰る通り、人類が3食食べていたわけはなく、狩が成功した時しか食べられなかったとしたら、タンパク質が吸収される量が少ないと言う事はあり得ないと思うのです。一回の食事で吸収できるタンパク質の量に上限はあるのですか?

20g上限説がどの研究に起因しているのかはわかりませんが、例えばこの論文(図はこの論文より)では、下の図のようにトータル80gのタンパク質を10gずつ8回に分けて摂る(下の図の白)か、20gずつ4回で摂る(下の図のグレー)か、40gずつ2回で摂る(下の図の黒)か、という3つのグループに分けたところ、20gずつのグループが最も筋肉の合成が増加したのです。

また、この論文(図はこの論文より)では、筋トレ後のタンパク質合成やアルブミン合成は20gのタンパク質摂取でプラトーとなり、40g摂ってもほとんど増加しませんでした。

これらの2つの研究はドリンク(2つ目は卵入りですが)でタンパク質が提供されています。人類の進化の過程で(卵を除いて)液体のタンパク質は摂取してきませんでしたので、もしかしたらドリンクのプロテインは急速に吸収されるために吸収の上限が低いのかもしれません。しかし、人類の食事は液体のタンパク質ではありませんし、他の栄養素が様々な割合で一緒になっています。そうすると、タンパク質の吸収スピードにも影響するでしょう。

もし、1食のタンパク質吸収の上限が20gだとしたら、1日1食の人は大変です。非常にタンパク質欠乏となってしまいます。肉であれば100g以上食べてもそのタンパク質は吸収されないことになり、食べるだけ無駄になってしまいます。人間の体はそんなおバカなのでしょうか?

もしかしたら年齢も関係するかもしれません。この論文(図はこの論文より)では、高齢者の筋肉合成は20gよりも40gの方がかなり増加しています。若者よりもタンパク質量が多くなった時の上乗せが多くなるようです。逆に考えれば高齢者ほどタンパク質を積極的にたくさん摂るべきなのかもしれません。この図を見れば、若者の20gと高齢者の40gは同程度です。

ほかの研究では、1日のエネルギー摂取量を3回の食事と1回の食事で食べた場合の比較をしています。1日のタンパク質摂取量は87~88gです。

平均年齢45歳、BMI23.4、脂肪量は16.2kg、除脂肪体重50.1kgでした。8週間後どうなったでしょうか?(表は原文より改変)

1食/日3食/日
脂肪量(kg)14.2±1.016.3±1.0
除脂肪体重(kg)50.9±0.449.4±0.4

1日1食の方は脂肪が減少し、除脂肪体重、つまり筋肉量は増加しました。1日3食よりも1食の方が血清アルブミンは4.5%高く、コルチゾール濃度は48.9%低く、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロールは、それぞれ11.7%、16.8%、8.4%高くなっていました。

恐らく、タンパク質の上限が20gだったとすると1日1食では筋肉量は減少し、アルブミンも低下すると推測されます。実際にはこの研究では3食よりも筋肉は増加し、アルブミンも増加していました。ということは、恐らく80gかどうかはわかりませんが、3食よりも1食の方が多く吸収された可能性があります。または吸収量は同じでも合成と分解のバランスが変化したのかもしれません。タンパク質の分解が大きく減少した可能性はないわけではありませんが。空腹の時間が長くなると吸収が良くなるのかもしれません。

いずれの研究も、糖質過剰摂取です。糖質制限では筋肉は減少しません。ただ、1回で糖質制限をしながらタンパク質大量に摂った場合のタンパク質吸収は今のところ私にはわかりませんが、恐らく上限などはあまり考えなくても良いのではないかと思っています。上限がないとは言えませんが、100gくらいなら十分に吸収できるのではないかと思います。人類の進化の過程で重要なタンパク質を1回に20gしか吸収できないなんてありえないでしょう。飢餓との戦いだったので、タンパク質も糖質もできる限り吸収するように進化したと思います。

また食事の時間も関係するかもしれません。進化の過程で人類は朝食を食べることはありませんでしたので、夕食時の吸収が最も良いかもしれません。

体操選手の内村航平選手も1日1食であの筋肉を保っています。

ちなみに私は朝と夜の2食です。本当は昼と夜にしたいのですが、諸事情で朝と夜です。朝タンパク質およそ15~20g、夜はおよそ80~120gです。筋肉は全く減った気配はありません。

 

「A controlled trial of reduced meal frequency without caloric restriction in healthy, normal-weight, middle-aged adults」

「健康な、正常体重、中年成人におけるカロリー制限のない少ない食事回数の比較試験」(原文はここ

12 thoughts on “1回の食事のタンパク質量の上限は?”
  1. 自称トレーナーの方々は根拠も示さずプロテイン信仰が多い印象です。
    (少量ずづ1日に何回も摂るとか、まあボディービルなどは健康目的ではないでしょうが)
    ところで、北海道日本ハム新庄ビッグボスは野球選手らしからぬカッコイイ肉体ですが、
    どういう食生活、トレーニングをされているのでしょうね。

    先生の新著間もなく届く予定です。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      根拠は記事の中で示したように、20gまで吸収できるという研究が存在しているので、
      それを信じているのでしょう。
      プロテインを1日に何回も摂取することは、長い目で見ればがんのリスク増加になる可能性があると思います。

  2. 堀江貴文さん著『糖尿病が怖いので、最新情報を取材してみた』読みました。
    残念な内容です。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      『糖尿病が怖いので、最新情報を取材してみた』は私は読んでいませんが、
      是非、糖質過剰症候群1&2を読んでいただきたいですね。

  3. 「タンパク質は、一度に20gまでしか身体には吸収されない」←これを言っている連中は、どんな資料や証拠を根拠に言っているのでしょうか。20gまでしか吸収されない、…人体はそんなにポンコツにできているのでしょうか。プロテインを売りたがっている連中か、そうでなくば、そんなに自分自身の身体が信用できないのか?
    我々の身体は、水分、タンパク質、脂肪でできているのですから、満腹感が訪れるまでこれらを充分に摂取できていれば、貴重な筋肉を身体がみすみす壊してまでエネルギーにするわけが無い。
    バカげています。

    糖質制限食を露骨に嫌っている連中の大半も同様です。資料や根拠の内容が、曖昧か恣意的なものを引き合いに出そうとしてきます。

    1. クリードンさん、コメントありがとうございます。

      プロテインを売っている企業だと思います。
      まあ、疾患のガイドラインでさえチェリーピッキングでできていますからね。

  4. いつも有益な記事をありがとうございます。
    一点質問があります。(汚い話で恐縮です)
    極力糖質を避けてタンパク質や脂質の多い食事をしていると、決まって大便は黒に近いこげ茶色で水に油が浮きます。インターネットで検索すると、上記の様な大便は食事の乱れや胃腸ないしは膵臓の不調を示しているので注意、とあり心配です。
    こういった情報は糖質制限食を考慮していないので無視すべきなのでしょうか? 先生のご意見をお聞かせいただけると助かります。
    お忙しい中誠に恐縮ですが、宜しくお願いします。

    1. Heroさん、コメントありがとうございます。

      胃などに問題があってタール便で便が黒いのであれば問題ですが、恐らく肉を多く摂っていれば便は黒くなると思います。
      また、食べものの色素でも黒くなります。
      油が浮くほどの便に油が混じっているというのは、どの程度かわかりませんが、吸収しきれないほど油を摂取したのかもしれません。

      すい臓の問題であれば、脂肪便となるかもしれませんが、色も白っぽくなるのではないでしょうか?
      便の色などについての情報は、恐らく糖質過剰摂取が前提の便です。糖質制限ではどのくらいの色が適切かは良くわかりません。
      肉などを多く食べていると腸内細菌が乱れてアルカリ性になり、黒くなるとも言われていますが、
      糖質制限で腸内細菌が乱れるとは思っていません。
      形もありスルッと立派なうんこが出ているのであれば、多少黒くても、臭くても、問題ないと思います。
      肉食動物のうんこは黒くて臭いはずです。
      ちなみに私は雑食なので、茶色です。

      1. 清水先生、お返事ありがとうございます。

        >便の色などについての情報は、恐らく糖質過剰摂取が前提の便です。糖質制限ではどのくらいの色が適切かは良くわかりません。

        やはり糖質過剰摂取が前提なのですね。糖質制限時の大便に関する研究は今後に期待します。

        >肉などを多く食べていると腸内細菌が乱れてアルカリ性になり、黒くなるとも言われていますが、糖質制限で腸内細菌が乱れるとは思っていません。
        形もありスルッと立派なうんこが出ているのであれば、多少黒くても、臭くても、問題ないと思います。

        とりあえず今のところ形もありスルッと出てくる大便ですので、あまり気にしないようにします。

  5. 清水先生、こんにちは。
    「糖質過剰」症候群IIが届きましたので、じっくり読みたいと思います。
    先日、ためしてガッテンを見ていると、タンパク質は朝に摂るのがいいと言っていました。

    1. じょんさん、拙著のご購入ありがとうございます。

      まあ、所詮テレビ番組ですから、根拠もないことを平気で言います。

  6. まさか質問が掲載されるとは思わず驚いてしましました。ご返答ありがとうございます。同僚が「ためしてガッテンでタンパク質を朝20g取るように言っていた。一回で取れる量が決まっているから小分けにして摂るのが良いらしい。」と言ってきたので「?」と思い質問しました。この先も小分けや朝食などに拘らず、タンパク質摂取を心掛けます。

よしこ へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。