最近、オートミールというものが健康的な食品として取り上げられています。(この記事参照)オートミールはオーツ麦を調理しやすく加工したものです。
100gあたりエネルギー380kcal、タンパク質 13.7g、脂質 5.7g 、炭水化物 69.1gですが、食物繊維が9.4gなので、糖質は59.7gです。食物繊維以外にも様々な栄養素が豊富なので、健康的だと思われています。
当てにならないGI値は55だそうですが、食べ方にもよるでしょうし、個人差も大きいでしょう。
まあ、これさえ食べれば健康になれるとは誰しも思っていないでしょう。でも体重減少効果や糖尿病に対する効果を信じてオートミールを食べている人もいるでしょう。
では、オートミールはどれほどの効果があるのでしょうか?今回の研究では、2型糖尿病で過体重の人にオートミールを提供して1か月と1年後の状況を評価しました。今回使用した全粒オーツ麦100gには、炭水化物63.5g、脂質7.6g、タンパク質13.7 g、繊維8.7gが含まれており、そのうち約5.3gがβ-グルカンでした。対象は298人のBMI24以上の2型糖尿病の人です。4つの食事のグループにランダムに分けています。
コントロールは通常の自分の食事で食事療法の介入を受けないグループ。
健康的な食事グループは、食事ガイドラインに則って低脂肪で高繊維の食事を摂りました。男性で2275kcal、女性で1890kcal(炭水化物60%、脂質22%、タンパク質18%)と30gの食物繊維を含む1日3回の食事が提供されました。
50gと100gのオーツ麦のグループでは、健康的な食事と同じ量の穀物をそれぞれ50gと100gの全粒オーツ麦に置き換えた食事を摂ります。
30日間はホテルで過ごし、その後は自分でそれぞれのグループの推奨された食事を行いますが、オーツ麦群の人には50gと100gのオーツ麦が継続して1年間提供されました。(表は原文より改変)
通常食グループ | 健康的な食事グループ | 50g-オーツ麦グループ | 100g-オーツ麦グループ | ||
体重 | ベースライン | 71.54(5.82) | 73.77(8.58) | 72.60(8.67) | 74.44(7.63) |
30日後 | 71.45(6.00) | 72.59(7.94) | 71.74(8.50) | 72.70(7.21) | |
変化量 | −0.18(−1.39、1.02) | -1.20(-2.22、-0.19) | -1.67(-2.69、-0.65) | −1.74(−2.76、−0.71) | |
1年後 | 71.47(7.35) | 72.76(8.70) | 71.39(8.68) | 72.43(7.58) | |
変化量 | −0.11(−0.68、0.46) | −1.08(−2.31、0.16) | −1.44(−2.74、−0.15) | -1.97(-3.06、-0.88) | |
BMI | ベースライン | 25.17(0.89) | 27.19(2.82) | 26.91(2.69) | 27.39(2.42) |
30日後 | 25.14(0.94) | 26.77(2.66) | 26.28(3.86) | 26.77(2.33) | |
変化量 | −0.08(−0.49、0.33) | −0.43(−0.78、−0.08) | −0.60(−0.95、−0.25) | −0.63(−0.98、−0.28) | |
1年後 | 25.13(1.25) | 26.80(2.91) | 26.48(2.33) | 26.64(2.74) | |
変化量 | −0.05(−0.39、0.29) | −0.37(−0.74、0.00) | −0.50(−0.91、−0.09) | −0.73(−1.08、−0.39) | |
腹囲 | ベースライン | 92.69(7.94) | 94.81(7.01) | 93.38(6.79) | 94.86(7.65) |
30日後 | 91.92(8.22) | 92.02(8.63) | 91.08(3.98) | 92.07(7.27) | |
変化量 | −0.78(−2.92、1.36) | −2.79(−3.85、−1.73) | −2.32(−3.37、−1.27) | −2.77(−3.83、−1.70) | |
ウエストヒップ比(WHR) | ベースライン | 0.91(0.05) | 0.92(0.05) | 0.91(0.05) | 0.92(0.05) |
30日後 | 0.90(0.05) | 0.91(0.07) | 0.90(0.05) | 0.90(0.05) | |
変化量 | −0.01(−0.02、0.01) | −0.01(−0.02、0.01) | −0.01(−0.02、0.01) | -0.02(-0.03、-0.01) | |
体脂肪率 | ベースライン | 32.46(5.49) | 31.58(6.11) | 31.54(5.87) | 33.31(5.12) |
30日後 | 32.21(5.88) | 31.05(6.23) | 31.37(5.75) | 32.78(5.34) | |
変化量 | −0.25(−1.09、0.59) | −0.59(−1.20、0.02) | −0.52(−1.12、0.08) | −0.52(−1.13、0.08) | |
内臓脂肪指数 | ベースライン | 12.37(3.64) | 12.38(3.86) | 12.53(4.14) | 12.33(3.59) |
30日後 | 12.13(3.77) | 12.13(3.53) | 12.06(4.42) | 11.87(3.47) | |
変化量 | −0.25(−0.55、0.05) | −0.27(−0.62、0.07) | −0.48(−0.69、−0.27) | −0.44(−0.78、−0.10) | |
空腹時血糖値 | ベースライン | 9.38(2.81) | 9.52(2.87) | 9.87(2.83) | 9.70(3.30) |
30日後 | 9.40(0.75) | 8.16(2.53) | 8.67(2.49) | 8.03(2.56) | |
変化量 | −0.20(−0.91、0.52) | -1.27(-1.88、-0.67) | −1.23(−1.84、−0.62) | -1.70(-2.31、-1.10) | |
1年後 | 9.52(1.44) | 7.94(2.14) | 8.19(2.01) | 7.74(2.43) | |
変化量 | 0.08(-0.63、0.46) | -1.65(-2.21、-1.10) | -1.62(-2.17、-1.07) | -1.87(-2.44、-1.31) | |
食後2時間血糖値 | ベースライン | 19.10(3.22) | 17.58(4.87) | 18.23(4.84) | 17.89(5.45) |
30日後 | 18.66(3.07) | 15.42(4.31) | 14.97(4.10) | 14.08(4.62) | |
変化量 | −0.53(−1.45、0.39) | −2.14(−2.92、−1.36) | −3.18(−3.95、−2.41) | −3.62(−4.39。、− 2.84) | |
1年後 | 19.69(3.27) | 15.01(3.63) | 14.98(3.02) | 14.22(3.78) | |
変化量 | 0.63(-0.36、1.63) | −2.41(−3.40、−1.42) | −3.16(−4.16、−2.16) | −3.58(−4.63、−2.53) | |
HbA1c | ベースライン | 8.05(1.52) | 8.10(1.77) | 8.37(1.44) | 8.28(1.35) |
30日後 | 8.07(1.52) | 7.88(1.82) | 7.71(1.94) | 7.65(1.93) | |
変化量 | 0.10(-0.34、0.54) | −0.61(−0.98、−0.24) | −0.76(−1.13、−0.39) | −0.71(−1.09、−0.34) | |
1年後 | 8.47(1.86) | 7.63(1.89) | 7.41(1.18) | 7.27(1.72) | |
変化量 | 0.35(-0.01、0.71) | −0.42(−0.79、−0.06) | −0.90(−1.27、−0.54) | −1.06(−1.44、−0.69) | |
HOMA-IR | ベースライン | 5.49(4.99) | 5.48(5.40) | 4.68(3.78) | 6.20(5.78) |
30日後 | 5.31(3.16) | 4.50(4.89) | 3.41(3.23) | 3.76(4.75) | |
変化量 | −0.25(−2.66、2.16) | −0.89(−3.52、1.74) | -1.80(-3.48、-0.12) | −2.65(−4.72、−0.58) | |
総コレステロール | ベースライン | 5.84(1.83) | 4.98(0.86) | 5.04(0.98) | 5.24(1.03) |
30日後 | 5.82(1.88) | 4.81(0.87) | 4.66(0.87) | 4.72(0.85) | |
変化量 | -0.07(-0.26、0.12) | −0.18(−0.34、−0.02) | −0.42(−0.59、−0.26) | −0.51(−0.67、−0.35) | |
1年後 | 6.01(1.87) | 4.8(1.04) | 4.69(0.95) | 4.76(0.97) | |
変化量 | 0.12(0.07、0.31) | −0.19(−0.38、−0.01) | −0.37(−0.56、−0.18) | −0.49(−0.68、−0.29) | |
中性脂肪 | ベースライン | 1.92(0.94) | 1.83(0.88) | 2.06(1.06) | 1.98(1.00) |
30日後 | 1.95(1.02) | 1.57(0.84) | 1.98(1.65) | 1.56(0.77) | |
変化量 | 0.01(-0.25、0.27) | −0.25(−0.47、−0.03) | -0.09(-0.31、0.13) | −0.43(−0.65、−0.21) | |
1年後 | 2.13(1.41) | 2.00(1.91) | 1.83(1.19) | 1.55(0.97) | |
変化量 | 0.21(-0.08、0.50) | 0.17(-0.12、0.46) | −0.27(−0.56、0.02) | −0.45(−0.75、−0.16) | |
LDLコレステロール | ベースライン | 3.20(1.05) | 2.96(0.71) | 2.90(0.77) | 3.15(0.85) |
30日後 | 3.18(1.05) | 2.85(0.74) | 2.70(0.70) | 2.79(0.63) | |
変化量 | -0.06(-0.21、0.10) | -0.12(-0.25、0.01) | −0.23(−0.36、−0.10) | −0.34(−0.47、−0.21) | |
1年後 | 3.35(0.99) | 2.84(0.88) | 2.50(0.79) | 2.64(0.75) | |
変化量 | 0.16(-0.01、0.33) | −0.14(−0.30、0.01) | −0.41(−0.56、−0.26) | −0.51(−0.67、−0.35) | |
HDLコレステロール | ベースライン | 1.41(0.45) | 1.30(0.24) | 1.25(0.21) | 1.36(0.36) |
30日後 | 1.39(0.42) | 1.22(0.24) | 1.20(0.22) | 1.28(0.26) | |
変化量 | -0.02(-0.07、0.04) | -0.08(-0.19、0.03) | -0.07(-0.11、-0.02) | -0.08(-0.13、-0.03) | |
1年後 | 1.39(0.34) | 1.34(0.57) | 1.29(0.40) | 1.39(0.41) | |
変化量 | -0.02(-0.11、0.07) | 0.06(-0.15、0.03) | 0.06(-0.03、0.15) | 0.01(-0.09、0.10) | |
血糖値は日本の単位に直す場合は18をかけてください。 | |||||
コレステロールは日本の単位に直す場合38.7をかけてください。 | |||||
中性脂肪は日本の単位に直す場合は88.57をかけてください。 |
上の表は30日後と1年後の様々なパラメーターの変化です。毎日100gのオーツ麦を摂ったグループのみを見てみましょう。ベースラインと比較して、30日で体重が1.74kg減少し、1年で1.97kg減少しました。つまり、最初の1か月で体重減少した後はそれほど減っていません。たった0.23kg減です。
もちろんBMIも同様の傾向で30日で0.63減ですが、1年後でも0.73減にとどまっています。1年後でもBMIは26.64なので、過体重の範囲から抜け出れていません。
腹囲などは1年後のデータがありませんのでわかりませんが、1年後でも大きな減少は起きていないでしょう。
空腹時血糖は30日後1.70減(日本の単位で30.6減)、1年後1.87減(日本の単位で33.7減)と大きく減少しているように見えます。しかし、ベースラインが9.7(日本の単位で174.6mg/dL)から1年後で7.74(日本の単位で139.3mg/dL)なので、まだまだというところでしょう。
食後2時間血糖値は30日後で3.62減(日本の単位で65.2減)と大きく減少していますが、1年後では完全に頭打ちで3.58減(日本の単位で64.4減)です。1年後の食後2時間血糖値は14.22(日本の単位で256mg/dL)もあるので話になりません。300mg/dL超えは回避できていますが、とてもこのままにしておけるレベルではありません。
HbA1cも1年で約1低下した程度です。
ただインスリン抵抗性のHOMA-IRは30日で2.65減で3.76まで低下しているので、少しはましです。(まだまだですが)
中性脂肪の低下も30日後と1年後ではほとんど変化はありません。ベースラインでは1.98(日本の単位で175mg/dL)だったのが、1年後でも1.55(日本の単位で137mg/dL)程度に下がっただけで頭打ちです。
HDLコレステロールほとんど変化が認められていません。1年後で1.39(日本の単位で53.8mg/dL)です。
オートミール(オーツ麦)を摂取することは、全く効果が無いとまでは言えませんが、これで健康になれるというほど威力はありません。所詮糖質の塊なので、食後の血糖値は上がってしまいます。その上がり方は個人差も大きいので、必ず自分で確かめてみる必要があるでしょう。
少しはマシな炭水化物という程度であり、糖質制限の効果とは比べ物になりません。そして、摂取した最初の頃の効果はどんどん得られるわけではなく、すぐに頭打ちであり、体重減少や血糖値の低下もどんどん改善するわけではないのです。過度な期待はできませんね。
肥満も糖尿病も糖質過剰症候群です。糖質制限をする方が段違いの効果を得ると思います。
「Short- and Long-Term Effects of Wholegrain Oat Intake on Weight Management and Glucolipid Metabolism in Overweight Type-2 Diabetics: A Randomized Control Trial」
「太りすぎの2型糖尿病患者における体重管理と糖脂質代謝に対する全粒オーツ麦摂取の短期的および長期的影響:無作為化比較試験」(原文はここ)
餅麦というのも出ていて、糖質制限している者からすると「なんだかなー」です。
自由ですが「健康的」と信じている人も多くて、、、
「所詮糖質の塊/少しはマシな炭水化物という程度」なんだと思います。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
テレビなどのマスコミの言っていることをそのまま信じる人は非常に多いでしょう。
マスコミもスポンサーがいるので仕方がないでしょうけど。
実は私も、オートミール60g+ホエイプロテイン30g+イヌリン5g+塩+水を混ぜてレンジでチンしたものを、トレーニングの前か後によく食べています。一番の理由は、とにかく腹持ちが良いからです。
それはともかく、SNSでオートミールを流行らせている人たち(特に女性)の大半は、1食30gが基本だと思います。どこのスーパーにも売っている、おそらく日本で一番売れていると思われるオートミールの袋にも1食分30gと書かれています。食物繊維のおかげなのか、オートミール30gと白ごはん1膳(約160gとして糖質約60g・食物繊維はほぼゼロ)は、同じくらいの腹持ちに感じます。なので、白ごはん1膳を毎回食べていた人がオートミール30g(糖質約18g)に置き換えて、他に余計な糖質を摂らないとすれば、糖質摂取量が約3分の1になります。「オートミールで痩せた」と主張する人たちが嘘を言っていなければ、それは糖質摂取量が大幅に減ったからだと思いますね。
大阪高橋さん、コメントありがとうございます。
確かに白米1膳をオートミール30gに置き換えれば、その分糖質が減りますね。
もちろんちょっと痩せるでしょうけど、1~2kgがせいぜいではないでしょうか?
すぐに頭打ちでしょうけど。