タンパク質摂取が増加すると腎機能が低下するという「神話」は根強く残っています。特に2型糖尿病では腎機能が低下するリスクが高いので、糖質制限でタンパク質摂取量の増加を心配する人もいるでしょう。
今回の研究は原文を手にしておらず、要旨しかわからないので、詳細は不明ですが、非常に興味深いので取り上げました。
2型糖尿病患者における食事のタンパク質摂取量と腎機能低下との予想される関連性を分析したものです。
オランダの糖尿病とライフスタイルコホートトゥエンテ(DIALECT)研究の382人の患者のデータで前向き分析しました。食事中のタンパク質摂取量は、24時間の尿中尿素排泄から決定されました。腎機能の低下は、腎代替療法の必要性または血清クレアチニンの50%以上の持続的な増加として定義されました。
その結果、追跡期間の中央値は6年で腎機能の低下は53人(14%)で発生しました。平均食事タンパク質摂取量は91±27g/日(1.22±0.33g/kg理想体重/日)でした。食事のタンパク質摂取は腎機能の低下と逆相関していました(HR 0.62 [95%CI 0.44–0.90])。つまりタンパク質摂取量を減らすと腎機能が低下すると言っています。
タンパク質の摂取量が92g/日未満の患者では腎機能低下の危険性が高くなり(HR 1.44 [95%CI 1.00–2.06])、摂取量が163g/日を超える患者では腎機能低下の危険性が低くなりました(HR 0.42 [95%CI 0.18–1.00])。タンパク質91gで体重当たり1.22gなので、この集団の平均体重は74.6kgだと思われますので、163gのタンパク質は体重1kg当たり2.18gです。ワオ!
体重1kgあたりの食事のタンパク質摂取量が1.08g/kg/日未満の患者では、腎機能低下の危険性が高くなりました(HR 1.63 [95%CI 1.00–2.65])。ワオ!
結論にはこう書かれています。「2型糖尿病の患者では、制限のない食事中のタンパク質摂取は腎機能低下の危険性の増加とは関連していませんでした。したがって、炭水化物をタンパク質に置き換えることは、2型糖尿病の管理の一部として禁忌ではなく、筋肉量の減少を最小限に抑えながら体重にプラスの効果をもたらす可能性があります。」
糖質制限を意識した論文なのでしょうか?炭水化物をタンパク質に置き換える、という言葉が出てきています。ということは高タンパク質が腎臓に良いのか、それとも高タンパク質によって糖質が減ったことが良いのか?いずれにしても高タンパク質は全く気にしなくて良いのでしょうね。
詳細がわかればまた記事にしようと思いますが、とりあえず1日に体重1kgあたり2.18gのタンパク質が腎機能低下から守ってくれる可能性があります。これまでと真逆ですね。食事に関する多くの神話はどんどん崩壊しますね。
糖尿病は糖質過剰症候群ですし、腎機能低下も糖質過剰症候群です。
今日もいっぱいタンパク質を摂りましょう。
「High-Normal Protein Intake Is Not Associated With Faster Renal Function Deterioration in Patients With Type 2 Diabetes: A Prospective Analysis in the DIALECT Cohort」
「高めの正常タンパク質摂取は2型糖尿病患者のより早い腎機能低下と関連していない:DIALECTコホートでの前向き分析」(原文はここ)
栄養士さんに言ったらブッ飛ばされそうな研究ですね。
「でも真実はいつもひとつ」ですね。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
大丈夫です。糖質制限の研究でもなんとも思わない方がほとんどですから。