現在、非常に多くの人が血糖値の異常があります。しかし、ほとんどの人はそれに気づいていません。血糖値の異常と言っても、もちろん空腹時血糖が上昇するだけでなく、食後の高血糖を含みます。空腹時血糖が上昇しなくても、血糖値スパイクをきたしている人はかなりの割合になると思います。

健康診断では基本的に空腹時血糖を測定するので、健康診断で引っかかった時には、恐らく耐糖能の障害は進んでいるでしょう。

今回の研究では、健康だと思っている57人を対象にしています。女性32人と男性25人で、年齢範囲は25〜76歳(中央値51)でした。

最初のスクリーニング検査では、5人が2型糖尿病の基準(HbA1c≥6.5%、空腹時血糖値≥126mg/dL、または75gOGTT2時間値≥200mg/dL)を満たし、14人は前糖尿病の基準(HbA1c>5.7%および<6.5%、空腹時血糖100〜125mg/dL、またはOGTT2時間値140〜199mg/dL)を満たしていました。残り38人は正常でした。そして、フリースタイルリブレのような機器を使って、グルコース値(CGM)の変動(血糖値スパイク)を調べています。(この後はグルコース値を血糖値として書きます。)(図は原文より)

上の図は3人の人の血糖値の変動を示しています。変動を3つのパターン、低、中、および重度の変動に分けて、青が低変動、緑が中変動、赤が重度の変動です。非常に個人差が大きいことがわかります。

上の図は低、中、重度の血糖値変動と様々な血糖に関係する測定値との相関を見ています。低変動がある時間と空腹時血糖値、HbA1c、OGTT、定常血漿ブドウ糖 steady-state plasma glucose(SSPG)、BMIが低いこと、および年齢の若さとの間に有意な正の相関がありました。同様に、重度の血糖変動がある時間の頻度は、空腹時血糖値、HbA1c、OGTT、定常血漿ブドウ糖 steady-state plasma glucose(SSPG)、BMIの高さ、および年齢のより高いことと関連していました。

次に個人間のブドウ糖のばらつきをよりよく評価するために、30人にタンパク質、脂肪、食物繊維の量が異なる3つの食事を朝食時に与えました。

食事は、コーンフレークとミルクとレーズン(低食物繊維と高糖質)、ピーナッツバターサンドイッチ(高脂質と高タンパク質)、およびプロテインバー(中程度の脂質とタンパク質)です。

上の上側の図は血糖値変動が3つの食事により、それぞれの個人でどのように起きていたかを示しています。ミルクとシリアルに対する反応の大部分(60%)は重度の変動として分類されましたが、プロテインバーおよびピーナッツバターサンドに対する反応は個人によって異なりました。

下側の図は総炭水化物量から食物繊維を引いたもの、つまり糖質量による血糖値変動の分類です。最も糖質量の多いシリアルミルク(50.7g)では、最も多く重度の変動を示しました。80%の人で前糖尿病の範囲(>140mg/dl)の血糖値の上昇を引き起こしました。

 

上の図はそれぞれの血糖値変動を示しています。重要なことに、糖尿病を診断するための現在の検査に基づいて「正常」と分類された16人の人でも、3つのうち1つ以上の摂取後に糖尿病前症(>140mg/dL)または糖尿病(>200mg/dL)の範囲の血糖値を示しました。さらに、25人は、同様の炭水化物負荷があっても、OGTTのときの反応よりもこれらの3つの食事においてCGMによって測定された血糖値の方が高くなっていました。

上の図は左から非糖尿病、前糖尿病、糖尿病の人で、重度の変動の割合(上側の図)と前糖尿病と糖尿病の範囲の変動を示す割合を表しています。

正常血糖の非糖尿病であっても、重度の血糖変動は24%にもなり、CGM記録の期間の最大15%の前糖尿病の血糖値に達し、2%は糖尿病の血糖値に達する可能性があります。

上の図は血糖変動タイプパターンに関してインスリン分泌速度、空腹時インスリン濃度などを比較したものです。一般に、糖尿病と診断された患者は、OGTTで持続的なインスリン分泌を示しました。

図のBは、インスリン分泌が正常で、食後2時間の血糖値が低いインスリン感受性高い人を示しています。それとは対照的に図のCは、高いインスリン分泌にもかかわらず高い血糖値を示す糖尿病と診断された人を表しています。インスリン抵抗性が高いことがわかります。図のDEFは標準的な検査では糖尿病と診断されていない3人の人のインスリン代謝と血糖値の反応です。Dは正常な空腹時血糖ですが、インスリン抵抗性およびインスリン分泌の相対的欠乏でOGTTの高い2時間値を有する非糖尿病の人です。EはOGTT後の早期の血糖値を特徴とする、インスリン抵抗性および低インスリン分泌を伴う非糖尿病の人です。Fはインスリン抵抗性と代償性インスリン分泌が高く、OGTT後の食後血糖値が比較的正常な非糖尿病の人です。

つまり、それぞれの人は、それぞれ別個のメカニズムにより血糖の調節不全をきたしています。しかし根本は一緒で糖質過剰摂取でしょう。

一般的な検査だけでは、耐糖能障害があるかどうかは正確には判断できません。正常に見える人であっても、食事の違いにより、大きく血糖値の変動が異なる可能性が高いのです。

空腹時血糖やOGTTによる正常血糖の一部の人では、インスリン抵抗性と相対的なインスリン分泌障害が原因で、すでに血糖値の調節不全を起こしていると考えられます。

それが一般的な検査で顕在化したときには、すい臓のβ細胞の異常は進んでいるでしょう。そうならない前に糖質制限を始めるべきです。

糖尿病は糖質過剰症候群なのですから。

 

1秒でも早く戦争が終わりますように。

 

「Glucotypes reveal new patterns of glucose dysregulation」

「グルコタイプは、血糖の調節不全の新しいパターンを明らかにする」(原文はここ

 

11 thoughts on “健康な人に見られる糖尿病レベルの血糖値スパイク”
  1. 食後30分血糖値、通常は2桁なんですが、
    油断してロカボ食品や、低糖質表示食品を
    食べるとてきめんに3桁に上がります。

    現代は糖質過剰が日常なのですね。
    それに適応できない身体が悲鳴を
    あげるのも無理無いですね。

    ウクライナ大統領、男前でしかも勇敢です。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      ロカボは糖質制限に向かない商品も多いですからね。

      ウクライナ大統領、以前は全裸でパフォーマンスしていた人なんですがね?
      マスコミなどを通じて伝わってくることと、裏は別でしょうから、何を信じたらいいのかわかりません。
      確かに勇敢には見えますね。実際のところはどうなんでしょうか?
      今回のことはロシアとウクライナの問題だけではなく、様々な国の思惑がうごめいていそうですね。
      でも、戦争はやめてほしいです。

  2. 江部先生によると、何をどれだけ食べても、血糖値が140を超えないのは、健康かつ20代の若い人だけだそうです。
    たぶん、このブログを見てる年齢層の人であれば、自称健康体の人であっても、食べるものや食べる量によっては、普通に170~200くらい上がると思います。
    普段は糖質制限していますが、たまに実験を兼ねて、糖質を摂取します。
    先日は空腹状態で、ごま団子3個+たいやき2個(合計120gの糖質)をぶち込んでみました。
    血糖値は、95(空腹時)→126(30分)→171(60分)とスパイクしました。
    採血による測定なので、MAXは捉えられていませんから、180以上もあったと思われます。
    慌てて、スロースクワット30回×4セットしたら、121(90分)まで急降下です。
    こういう恐ろしさを、自分の身で知っておくことが大切です。
    大半の人は、知らないと思いますが。

    1. 高橋さん、コメントありがとうございます。

      血糖値スパイクが起きていることを知らない人はかなり多いでしょうね。
      糖質制限をしている人は、いきなり糖質を摂ったら、生理的なインスリン抵抗性が起きているので
      通常よりもスパイクが大きくなると思います。

  3. ウクライナ問題、
    確かに、高度な政治の世界では単純に悪者と正義の味方というふうな
    区分けはできない、のかもしれませんね。

    いずれにしても巻込まれる一般市民は悲惨な状況です。

  4. いつも勉強させていただいております
    私は68才の女性です
    20年前に会社の検診で早期発見、胃の3分の2を切除しました
    でも切除前から機能性低血糖に度々落ち入っており、もちろん当時は知る由もありませんでしたが何故私だけ?と不思議でした おにぎりだけ、若しくはカップ麺だけでも平気な人を見て私だったら汗と動悸と手の震えでとても辛くなるのに、、、
    それで本題ですがリブレで血糖値を測って4日目、しょっ中グルコース低下の表示が出ます
    夜間は1時から5時まで殆どで日中も食間に出ます
    それで低血糖関連のサイトを検索した結果もしかして私はインスリン過剰分泌な体質なのかもと、、、祖父が腎症で50代で死亡、母は92で健在ですが30代の時腎臓系で入院していました

    1. 前田由紀子さん、コメントありがとうございます。

      フリースタイルリブレはちょっと大げさに反応するように思います。
      つまり穿刺による血糖値よりも血糖値が上がるときは大きく上がり、
      下がるときは大きく下がってしまう傾向があると思います。
      推移の目安には十分機能しますが、もし疑問に思う値であれば普通に血糖値を測定する方が良いでしょう。
      糖質制限をしていれば、夜間にグルコース低下の表示が出るのも珍しくないと思います。

  5. お忙しい中返信いただきありがとうございます
    安心しました

    それにしてもおにぎり一個の上昇にはびっくりしました
    豚まんとミルクティー、揚げたかき餅が現在のベスト3です
    怖いけど明日カップ麺に挑戦してみる予定です笑

    前にスイーツ食べて吐いて以来コンビニへは行かなくなりました

  6. いつも勉強させていただいております。
    10年前には糖質制限をしっておりましたが、反対派の意見を読んでは怖くなり、したりしなかったりの多発性嚢胞腎の40後半女性です。腎機能がいよいよ落ちてきてステージ4。
    お医者様の言うことを聞いていても結局腎機能落ちたので、糖質制限しましたら、長年飲んでいた降圧剤2種類必要無くなりました。ケトン体が嚢胞腎改善にいいという記事も読みました。
    以前インシュリンが嚢胞腎によくないよう論文も見ましたが、あまり理解できませんでしたが、糖質制限が効くのかもしれません。
    なにより、疲れやすいのがなくなり、日々かなり元気になりました。
    糖質制限により、全てがよくなっていきそうな、そんな気がしています。
    本当にありがとうございます。

    1. ちばさん、コメントありがとうございます。

      降圧薬やめられて、元気になり良かったですね。
      恐らく多発性嚢胞腎にはIGF-1などの成長因子が関与していると思います。そうだとしたら、インスリンも有害です。
      ということは糖質も有害ですし、原因だと思います。

  7. 清水先生

    お忙しいところ、返信ありがとうございます。
    そうです、確か、IGF-1がどうこう、インシュリンがどうこうとありました。当時、難しくて挫折しました。読み返してみたい気もしますが、今は歳をとったのでさらに難しいかなと思います(笑)。多発性嚢胞腎は70歳までに半数が透析になりますが、糖質に弱い強い?なども関係するのかなと思います。ちなみに、スーパー糖質制限してから、いつも皮膚になにかとできていた湿疹が消えました。今のところいいとこだらけです。

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