一般的には低脂肪食や国が推奨する食事は健康的だと考えられ、体重増加はしないのではないかと思われています。アメリカでの研究の結果はそれとはまったく違いました。
今回の研究では49〜81歳(平均63.6歳)の閉経後の女性88,805人が対象です。最長8年間追跡しています。食事アンケートを使用しているのでデータの質は低いですが、見ていきましょう。
ベースラインと3年目に、112項目からなる食事アンケートを使用して食事データを確認しました。ベースライン食事アンケートからの食事摂取量データを使用して、回答者を4つの食事パターンに割り当てました。(1)低脂肪食(2)低炭水化物食(3)地中海食(4)米国農務省のアメリカ人のための食事ガイドライン(DGA)と一致する食事の4つです。(図は原文より、表は原文より改変)
上の図はそれぞれの食事パターンとそのPFCバランスです。低炭水化物食以外は比較的PFCバランスは近いですね。低炭水化物食では39%炭水化物なので、糖質制限ではなりませんが、他の食事よりもかなり高脂質です。
低脂肪食 | 低炭水化物食 | 地中海食 | DGA食 | |
---|---|---|---|---|
総エネルギー摂取量(kcal/d) | 1379 | 1733 | 1881 | 1437 |
炭水化物(g/d) | 211 | 163 | 258 | 205 |
添加した砂糖(小さじ相当) | 8 | 8 | 10 | 8 |
総脂質(g/d) | 32 | 79 | 59 | 42 |
飽和脂肪酸(g/d) | 10 | 27 | 18 | 13 |
一価不飽和脂肪酸(g/d) | 12 | 30 | 23 | 16 |
多価不飽和脂肪酸(g/d) | 7 | 16 | 13 | 10 |
トランス脂肪酸(g/d) | 2 | 6 | 4 | 3 |
タンパク質(g/d) | 60 | 74 | 79 | 64 |
総食物繊維(g/d) | 18 | 12 | 24 | 19 |
水溶性食物繊維(g/d) | 5 | 3 | 6 | 5 |
不溶性食物繊維(g/d) | 13 | 9 | 18 | 14 |
食事中のコレステロール(mg/d) | 132 | 299 | 200 | 153 |
果物のサービング | 3 | 1 | 3 | 3 |
野菜のサービング | 3 | 2 | 3 | 3 |
総穀物(オンス相当) | 5 | 4 | 6 | 4 |
全粒穀物 | 1 | 1 | 2 | 2 |
非全粒穀物 | 3 | 4 | 4 | 3 |
アルコール摂取量(サービング/週) | 3 | 6 | 4 | 2 |
上の表はそれぞれの食事の栄養素の割合、量です。低炭水化物食では低脂肪食の脂質量の約2.5倍もの脂質を摂取しています。
OR | |
---|---|
低脂肪食 | |
Q1(高いアドヒアランス) | 1·43 |
Q2 | 1·14 |
Q3 | 1·05 |
Q5 | 0·99 |
Q5(アドヒアランスが低い) | 1·00 |
低炭水化物食 | |
Q1(高いアドヒアランス) | 0·71 |
Q2 | 0·71 |
Q3 | 0·77 |
Q5 | 0·84 |
Q5(アドヒアランスが低い) | 1·00 |
地中海食 | |
Q1(アドヒアランスが低い) | 1·00 |
Q2 | 0·99 |
Q3 | 1·01 |
Q5 | 1·00 |
Q5(アドヒアランスが高い) | 0·95 |
DGA食 | |
Q1(アドヒアランスが低い) | 1·00 |
Q2 | 1·04 |
Q3 | 1·07 |
Q5 | 1·14 |
Q5(アドヒアランスが高い) | 1·24 |
上の表は体重増加を示す可能性です。アドヒアランスというのはその食事法をどれだけ遵守していたかというものです。低炭水化物食では体重増加と反比例していましたが、低脂肪食では遵守しているほど体重増加の可能性が1.43倍にもなっていました。
国の推奨するDGA食でも、1.24倍も体重増加の可能性が高くなっていました。
国や学会などが推奨する食事をちゃんとすればするほど太ってしまっていたのです。残念でした。
通常の体重 | 太りすぎ | 肥満クラスI | 肥満クラスII | 肥満クラスIII | |
---|---|---|---|---|---|
OR | OR | OR | OR | OR | |
低脂肪食 | |||||
Q1(高いアドヒアランス) | 1·28 | 1·60 | 1·73 | 1·44 | 1·09 |
Q2 | 1·02 | 1·22 | 1·34 | 1·35 | 0·93 |
Q3 | 0·94 | 1·19 | 1·23 | 1·07 | 0·81 |
Q5 | 0·89 | 1·09 | 1·10 | 1·06 | 0·76 |
Q5(アドヒアランスが低い) | 1·00 | 1·00 | 1·00 | 1·00 | 1·00 |
低炭水化物食 | |||||
Q1(高いアドヒアランス) | 0·72 | 0·67 | 0·63 | 0·79 | 0·97 |
Q2 | 0·72 | 0·73 | 0·59 | 0·83 | 0·65 |
Q3 | 0·75 | 0·74 | 0·78 | 1·05 | 0·99 |
Q5 | 0·82 | 0·81 | 0·86 | 1·05 | 0·98 |
Q5(アドヒアランスが低い) | 1·00 | 1·00 | 1·00 | 1·00 | 1·00 |
地中海食 | |||||
Q1(アドヒアランスが低い) | 1·00 | 1·00 | 1·00 | 1·00 | 1·00 |
Q2 | 0·91 | 1·02 | 1·06 | 1·16 | 0·79 |
Q3 | 0·99 | 0·98 | 1·05 | 1·11 | 1·19 |
Q4 | 0·93 | 1·05 | 1·09 | 0·92 | 1·12 |
Q5(アドヒアランスが高い) | 0·90 | 0·95 | 1·15 | 0·86 | 1·08 |
DGA食 | |||||
Q1(アドヒアランスが低い) | 1·00 | 1·00 | 1·00 | 1·00 | 1·00 |
Q2 | 0·99 | 1·06 | 1·01 | 1·09 | 1·04 |
Q3 | 1·00 | 1·13 | 1·04 | 1·09 | 1·65 |
Q4 | 1·10 | 1·15 | 1·28 | 1·12 | 1·09 |
Q5(アドヒアランスが高い) | 1·13 | 1·30 | 1·41 | 1·33 | 1·86 |
上の表はベースラインの体重状態によって分類していますが、低炭水化物食は、正常体重、過体重、肥満クラスIの女性の体重増加に反比例していました。
一方低脂肪食は、正常体重、過体重、肥満クラスI、肥満クラスIIで体重増加の可能性が高くなりました。DGA食も同様の傾向です。
つまり低脂肪食や国が推奨する食事が体重増加を促進する可能性があるのに対し、低炭水化物食は閉経後の体重増加のリスクを低下させる可能性があることを示唆しています。
低脂肪食は脂質摂取量を減らした分、糖質の摂取量を増加させています。肥満は糖質過剰症候群なので当たり前の結果ですが、いまだに脂質は太るという専門家もいっぱいいるので、注意が必要です。
感染症の専門家同様、栄養の専門家もあてになりません。
「Evaluation of diet pattern and weight gain in postmenopausal women enrolled in the Women’s Health Initiative Observational Study」
「女性の健康イニシアチブ観察研究に登録された閉経後の女性の食事パターンと体重増加の評価」(原文はここ)
医師や栄養士の方々の9割以上は、
健康のために食事はバランス良く(勿論炭水化物も適度に)摂る事推奨。
糖質制限や断食などは「極端な食事制限」や下手したら「摂食障害」の範疇です。
なかなかアップデートされませんね。日常業務はルーチン9割でしょうからしょうがない?