アルツハイマー病は3型糖尿病とも言われています。つまり糖質過剰症候群です。恐らく、認知症では脳のインスリン抵抗性が増加して、脳のエネルギー不足が起きていると思われます。

認知症の人でも日中に寝てばかりいる人もいます。そのような慢性の傾眠状態の認知症の人にケトン食を与えるとどうなるでしょうか?

そんな症例報告があります。非常に興味深いです。

この認知症の女性は59歳(2003年)で軽度の認知障害を認めていました。2003年と2007年のMRI上でも、脳の皮質萎縮は軽度から中等度へ進行を示しました。2013年にかかりつけ医によって、ココナッツオイルによる6週間の治療後に注意力の大幅な増加が認められました。しかしその後、胆のう炎を起こして、2015年2月にこの治療は中止されました。

2016年10月には認知症の後期だと診断されました。彼女は慢性の日中の傾眠、重度の認知障害、無気力、失語、ドロップヘッド症候群、非歩行、全体的および微細な運動制御の喪失、結果として誤嚥の傾向を伴う咽頭反射の低下を示しました。

栄養は胃ろうから、1日4回経腸栄養が行われていました。2016年6月からN-METサプリメントというものが導入されました。N-METはカルニチンを含んだ栄養です。

2017年8月にケトン食療法としてKetocal 1:4(88%脂質)というものが導入されました。2018年5月にはケトンモノエステル(ケトン体のサプリ)が導入され、ケトーシスを得ました。

日中の傾眠は次のように評価されました。パラメーター1:覚醒後、昼寝なしで最大4時間覚醒している日数の割合。パラメーター2:日中の定義された12時間の範囲内で11時間以上の覚醒している日数の割合。パラメーター3:特定の時間に制限されることなく、覚醒時から睡眠時までで90%以上覚醒している日数の割合。(表は原文より改変)

下の表は11時間以上覚醒している日数の割合を示しています。

治療日(M / Y)治療期間(日数)血中ケトン体(μmoL/L)覚醒度:パラメータ2:11時間以上覚醒している日数
A.治療前2016年2月15日〜2016年5月19日83<1000% 一般的な慢性の日中の傾眠
B. N-MET2016年6月23日〜2017年8月8日378<1004.5% 慢性の日中の傾眠からの有意な軽減なし
C.低用量ケトーシス療法(KD)(血中ケトン体100μmoL/L)2017年8月9日〜18年5月5日25510037.5% 血中ケトン体100μmoL/Lで慢性の日中の傾眠からのゆっくりとした部分的軽減。
D. 4日間の高用量ケトーシス(血中ケトン体2900~3800μmoL/L)2018年5月5日〜2018年6月26日503800および290078.0% 治療用量のケトーシス(2900~3800μmoL/L)による慢性の日中の傾眠からの迅速かつ完全な軽減
E.ケトンモノエステル誘発性胃炎。高用量ケトーシスの終了。KDは続く2018年7月〜2018年8月11330033.3% 胃炎による日中の傾眠
F.内因性ケトーシス+ KD(血中ケトン体600μmoL/L)2018年9月10日〜2018年9月25日1660084.6% 中用量の内因性ケトーシス(600μmoL/L)による日中の傾眠からの完全な軽減
G.低用量KD2018年9月26日– 2018年11月21日5520043.6% 慢性の日中の傾眠からの部分的な低用量の軽減
H.低用量KD(i)1/1/19 – 1/31/19311006.9% 病気によって誘発された慢性の日中の傾眠
(ii)2/1/19 – 10/31/1924710044.2% 慢性の日中の傾眠からの回復
(iii)7/1/20 – 7/1/213650~10034.5% 低用量維持ケトーシス療法

上の図は4日間のケトンモノエステル導入からの5日ごとの覚醒している日数の割合を示しています。青い四角(□)はパラメーター2を表し、11時間以上起きている日数のパーセンテージです。オレンジ色の白丸(○)はパラメーター1を表し、目覚めた後、昼寝をせずに4時間以上(240分以上)起きた日数の割合。塗りつぶされた緑色の三角形(Δ)これら2つのパラメータの合わせたものを表します。

ケトン体のサプリによって非常に血中のケトン体が増加し、それに伴い、どんどん覚醒している日数が増加していっているのがわかります。最終的には80%近くの日数で11時間以上覚醒しているようになりました。

その後胃炎を起こしてケトン体サプリは終了しますが、ケトン食で600μmoL/L程度にケトン体が低下しても、覚醒している日数が84.6%に増加していました。さらに、その後血中のケトン体は低下し、200から100μmoL/L程度、つまりケトン体が治療前の状態に近づいても30~40%と比較的覚醒度は維持されていたのです。

一度大きくケトン体値が増加した日が続いたことにより、もしかしたら覚醒しているための脳の回路が回復し、100μmoL/L程度でも覚醒できるようになったのかもしれません。

もしかしたら、脳のインスリン抵抗性が高く、脳のエネルギー不足が深刻となり、活動したり、覚醒したりする回路のスイッチを切ることにより、できる限りエネルギー消費を抑えて、脳は生きることを選んだのかもしれません。

そうすると、糖質過剰摂取は本当に深刻な影響を与えます。本来はエネルギーとして使えるグルコースが脳で使えない状態となり、その代わりにケトン体を使用しようと思っても、糖質過剰なので、ケトン体を作ることができず、認知症が進行してしまうのです。

日本ではまだケトン体サプリが利用できませんが、ケトンモノエステルの治療用量がこの患者のような認知症の症状緩和作用を示す可能性は十分にありそうです。日本でも早く何らかのケトン体の利用ができるようになると良いですね。

 

「A Non-Invasive Determination of Ketosis-Induced Elimination of Chronic Daytime Somnolence in a Patient with Late-Stage Dementia (Assessed with Type 3 Diabetes): A Potential Role of Neurogenesis」

「後期認知症(3型糖尿病と評価された)の慢性日中傾眠の患者におけるケトーシス誘発性の非侵襲的決定:神経新生の潜在的役割」(原文はここ

2 thoughts on “日中に寝てばかりの認知症の高齢者はケトン食で覚醒する?”
  1. 先生もおっしゃるように、非常に興味深い症例ですね。

    隔靴掻痒の感がある従来の認知症薬に比べても(素人目ではありますが)
    希望の持てるご報告です。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      認知症に限らず、最近の薬はどれもずっと使わせて、治さない治療薬ばかりです。
      それよりは何倍もケトン体は有効だと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。