心不全は塩分とは関係がないと私自身は考えています。心臓のエネルギーはほとんどが脂肪酸、そしてケトン体であり、ブドウ糖はわずかです。しかし、糖質過剰摂取ではブドウ糖をエネルギーにせざるを得ないので、不安定なエネルギー供給が心不全に影響を与えるのだと思います。
今回の研究は国際的に行われた非盲検ランダム化比較試験で、6か国(オーストラリア、カナダ、チリ、コロンビア、メキシコ、ニュージーランド)の806人の心不全患者がランダムに低ナトリウム食(397人)または通常のケア(409人)に割り当てられました。低ナトリウム食は1500mg/日未満を目標とされます。(ナトリウム(mg)×2.54÷1000=食塩相当量(g) です。つまり、1500mgナトリウムは食塩約3.8gです。)食事は15〜20%のタンパク質、50〜55%の炭水化物、25〜30%の脂肪、および7%の飽和脂肪酸という割合の正常カロリーの食事でした。
ただ、塩分の摂取量の評価は食事アンケートなのでデータの質は低いです。(図は原文より)
上の図はナトリウム摂取量、収縮期血圧、体重、エネルギー摂取量の12か月の推移です。ベースラインのナトリウム摂取量の中央値は、塩分制限食群で2286mg/日(約5.8g食塩)、通常ケア群で2119mg/日(約5.4g食塩)でした。通常ケア群では、ナトリウム摂取量の中央値はほとんど変わらずベースラインから約4%減少でした。
塩分制限食群では、12か月のナトリウム摂取量の中央値は1658mg/日(約4.2g食塩)で、ベースラインから約28%減少しました。
体重、収縮期血圧、エネルギー摂取量、水分摂取量、カリウム摂取量のグループ間に有意差は、12か月まで見られませんでした。
上の図のAは複合的な主要な結果(全原因死亡、心血管疾患入院、心血管疾患での救急受診)で、Bは全原因死亡、Cは心血管疾患入院、Dは心血管疾患での救急受診です。どれも、塩分制限食と通常ケア群の違いはありません。
どうしてもナトリウム摂取量での違いが欲しいので、上の図のようにKCCQスコア(心不全の健康関連QOL評価尺度)などを比較しています。AとBはKCCQスコアの差ですが違いは4以下です。確かに塩分制限食群の方が少しだけ改善しているように見えます。ただKCCQスコアは0~100までのスコアなのでわずかな違いです。
Cは6分間の歩行距離です。差は6.6mで塩分制限群の方が距離が伸びました。
DはNYHA分類です。塩分制限食群は通常ケア群よりもNYHAクラス1に改善する可能性が高くなっています。ただ、通常ケアでもNYHA1は増加し、NYHA3は減少しています。
以前の記事「心不全に塩分制限は必要か?」で書いたように、いくつもの研究では塩分制限してもNYHA改善に違いが無いというものが多いのです。また、明らかに塩分制限が心不全に有害だという研究もあります。
塩分が心血管疾患の有害だという仮説が定説化してしまっているので、塩分控え目で血圧や心血管疾患に効果が認められない場合、更なる塩分制限へと向かってしまいます。これはLDLコレステロールと同様の図式です。
同じ白いものでも、減らすべきは塩ではなく、砂糖、小麦、米などです。特に糖質制限では塩分制限は必要ありません。
「Reduction of dietary sodium to less than 100 mmol in heart failure (SODIUM-HF): an international, open-label, randomised, controlled trial」
「心不全における食事ナトリウムの100mmol未満への減少(SODIUM-HF):国際的な非盲検ランダム化比較試験」(原文はここ)
『なぜ《塩と水》だけであらゆる病気が癒え、若返るのか!?』
(ユージェル・アイデミール 著)
にも、塩(精製塩ではなく天然塩)は人体に必須と主張されており納得です。
一般的に塩は嫌われて、糖質は許容されているのもおかしいですね。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
塩と砂糖の力関係ですね。正しいかどうか、有益かどうかは別問題ですね。