コメントをいただきました。

私は糖尿病と乳製品、鶏卵アレルギーです。現在糖質制限にて、空腹時血糖は正常です。アレルギーがあるため、肉、魚以外ののタンパク源として大豆製品を多く摂っています。
以前、国立がん研究センターから、大豆食品(特に非発酵)の取り過ぎで膵がんの発生率が有意に高くなるという報告がありました。この報告につき、先生のお考えがあればお聞かせください。

恐らく、国立がん研究センターのこのページにある研究についてのことだと思います。まずは、何も考えず、その結果を見てみましょう。(図もこのページより)

大豆食品が最も多いグループは最も少ないグループと比較して有意にすい臓がんのリスクが1.48倍高くなっていました。これは大変だ!さらに非発酵大豆食品が多いほどリスクが1.41倍増加しています。これも大変だ!発酵大豆食品では有意差はありませんでした。

上の図は大豆食品の種類別です。発酵食品の納豆とみそはリスクは高くなりませんが、豆腐類は1.39倍リスクが高くなっていました。

さて、この結果だけを見れば不安に思うのもわかります。大豆食品は日本の食文化に根付いています。そして、同時にお米も日本の食文化に強く結びついています。つまり、糖質過剰摂取が前提での研究となります。

では、研究の中身を覗いてみましょう。

日本の様々な都道府県の45~74歳の方々のうち、食事調査票に回答し、がんになっていなかった90,185人が対象です。追跡期間は平均で16.9年で、577人がすい臓がんになりました。

しかし、およそ17年間のうち、食事アンケートを行ったのは最初の1回だけです。ただでさえ食事アンケートのデータの質は低いのに、1回だけのデータで本当にちゃんとした分析ができるのかどうかは非常に疑問です。

大豆食品の摂取量により4つのグループに分けたときの様々なデータは下のようです。

第1分位第2分位第3分位第4分位
年齢55565758
BMI23.123.223.323.6
糖尿病歴(%)4.64.85.17.0
現在の喫煙(%)26.524.022.220.5
アルコール摂取300g/週以上(%)17.115.414.112.3
身体活動 1日/週以上(%)18.920.220.422.8
摂取エネルギー(kcal/日)1896193319361865
総大豆食品摂取量(g/日)325784138
発酵大豆食品12273843
非発酵大豆食品16294696
魚(g/日)70788077
肉(g/日)54514945
野菜(g/日)150180193209
果物(g/日)148172178174

最もすい臓がんのリスクの高いという結果だった総大豆食品摂取量が最も多い第4分位のグループは最も大豆食品の少ない第1分位よりもちょっと年齢が高齢で、ちょっとBMIが高い集団です。そして最も私が注目するのは、当然糖尿病歴です。第4分位では7%もいます。第1分位の4.6%のおよそ1.5倍です。

さらに背景として垣間見えるのは、もっともリスクの高い第4分位では、喫煙率が低く、アルコール摂取量も少なく、身体活動もそれなりで、大豆食品だけでなく、魚や野菜や果物を多く摂り、肉は少なめ、つまり、どちらかというと(正しいかどうかは別として)一般的な健康に気を付けた生活を送っている集団なんです。もちろん、リスクの分析では多変量解析で様々な因子について調整が行われますが、本当にどれだけその意味があるかはわかりません。本当であれば、全く条件の同じ集団で大豆食品の摂取量だけを変えて研究しなくては、本当に危険性があるかどうかの評価は難しいでしょう。

想像の域を出ませんが、白米と野菜の質素な食事と果物がヘルシーだと思い込み、肉はあまり摂らないことが逆に糖尿病のリスクを上げて、すい臓がんのリスクまで上げているのではないかと思います。

さらに、男女別で見てみると、有意差があったのは女性だけで、男性は有意差はありませんでした。最も大豆製品を多く摂った女性のすい臓がんのリスクは1.73倍でした。

さらにさらに、BMIによって分類すると、BMI25未満では有意差はなく、25以上だと最も大豆摂取量の多いグループのすい臓がんリスクは2倍でした。ここからもすい臓がんが糖質過剰症候群であることを示唆しています。

正直な話、食事アンケートデータから様々な疾患のリスクを評価することは、非常に難しいことが多いと思います。だからといって、何年、何十年もの間、ある特定の食事を摂るか摂らないかという介入研究も無理です。

国立がん研究センターは「いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っている」と自分たちでは思い込んでいます。しかし、その研究の質が低ければ、研究の中身を知らない人たちにとっては、数値や結果だけが独り歩きし、役に立たないばかりか不安や戸惑い、間違った誘導をもたらす可能性も高くなります。

私は、大豆食品とすい臓がんの関連はないと考えています。

あとは、それぞれ自分の判断でしょう。

 

「Soy Food Intake and Pancreatic Cancer Risk: The Japan Public Health Center-based Prospective Study」

「大豆食品の摂取とすい臓がんのリスク:日本公衆衛生センターに基づく前向き研究」(原文はここ

5 thoughts on “大豆食品の摂取とすい臓がんのリスク”
  1. 麻婆豆腐が好きでよく食べるのですが、豆腐は納豆や味噌に比べると危険な食べ物ってことでしょうか。麻婆豆腐を食べるのは止めるべきでしょうか?清水先生は麻婆豆腐は召し上がりますか?

    納豆はそこまで好きじゃないんです。市販の納豆に添付されているタレには砂糖が入っているし・・・。

    1. クリードンさん、コメントありがとうございます。

      記事で書いたように、大豆食品とすい臓がんの関連はないと考えています。

  2. 清水先生、おはようございます。
    大豆関連食品は好きなので、よく食べています。その中でも納豆をよく食べています。納豆でいつも少し気になるのは、パックの表面が滑らかでないので、マイクロプラスティックが混入しやすいのではというところです。

    1. じょんさん、コメントありがとうございます。

      私も納豆をよく食べます。マイクロプラスティックに関しては全く考えていなかったですね。

  3. あまりにも糖質過剰摂取がスタンダードなため、
    食品と健康の研究は見極めが必要なんですね。

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