うつ病は世界的な問題です。また、貧血も様々な問題を引き起こす可能性があります。多くの貧血の原因は鉄欠乏性のものと考えられます。もしも鉄欠乏がうつ病と関連するならば、貧血の割合とうつ病の有病率が何らかの関連がありそうです。
そこで、様々な国のうつ病の有病率と女性の貧血の割合を調べてみました。統計はうつ病に関しては、WHOの2017年に出ました「Depression and Other Common Mental Disorders Global Health Estimates」より、データは2015年のものです。貧血の割合はFAOの「Food and Nutrition in Numbers 2014」からのデータです。
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貧血の定義は妊娠女性でヘモグロビンが11未満、非妊娠女性(15~49歳)で12未満です。日本の貧血の割合は妊娠女性で30.9%、非妊娠女性で20.5%でした。このグラフの国は本当に適当に世界中から選びました。選び方に問題があるかもしれませんがご了承ください。また、貧しい国では鉄だけではなく、その他の栄養素もかなり不足しているので、そのことが原因で貧血となっている可能性は十分あります。
問題のあることは承知の上で、その中での貧血の割合の平均値は妊娠女性で約31%、非妊娠女性で約25%でした。つまり、国際比較で見ると日本は妊娠女性はほぼ平均的、非妊娠女性は平均よりも少ない割合でした。G20の国(中国は貧血のデータがないので省いています)の中ではやや妊娠女性は高めの割合ですが(G20の平均は妊娠女性で約28%、非妊娠女性で約22%)、決して日本だけが突出して貧血が多いわけではありません。
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そして、日本のうつ病の有病率は総人口の4.2%です。これは国際比較では平均で4.8%なので、決して高くはありません。グラフではうつ病の有病率の順に並べていますが、どちらかというと低い方に位置しています。G20の平均も約4.8%です。
一方アメリカはどうでしょうか?貧血の割合は妊娠女性で13.1%、非妊娠女性で8.7%という驚異的な貧血の少なさです。しかし、うつ病の有病率は5.9%と選んだ国の中では2番目の多さです。もちろん国によってうつ病の診断が異なる可能性は大いにあります。
鉄欠乏がもしもうつ病と関連するならばアメリカはかなりうつ病が少なくなくてはならないのですが、実際は違っています。アメリカは過剰にうつ病を診断してしまっているのでしょうか?それは私にはわかりません。日本人はまだまだうつ病を隠して、なかなか病院へ行かない可能性はあります。一方メンタルのケアが発達しているアメリカではもっと気楽に病院を訪れ、うつ病の診断が多くなるという考えもあるでしょう。実際はわかりません。
さて、先ほどのデータから相関関係を見てみると次のグラフになります。
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G20では、
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横軸がうつ病の有病率で縦軸が非妊娠女性の貧血の割合です。どう見ても右肩下がりです。つまり、貧血の割合が高い国ほどうつ病の有病率が低いということを意味します。
国際比較では相関係数=-0.60036 です。やや負の相関です。
G20では相関係数=-0.29454 で弱い負の相関です。
私は統計に弱いので、間違っていたらご指摘ください。しかし、少なくとも、うつ病と女性の貧血は関連していないように思えます。ただ、これは全体を見ているので、個人個人を見ないとわかりません。つまり、貧血がある女性の中で、うつ病を発症している人の割合がどうかを調査しなければなりません。また今回のデータはうつ病に関しては男女全体、貧血に関しては15~49歳のデータなので、データの選び方には問題があります。しかし、うつ病に関しては女性の方が多いことや貧血は閉経前の女性の方が多いので、それなりには使えるデータだと思っています。
でも、本当に鉄欠乏とうつ病は関連しているのでしょうか?私は疑問を持っています。もし、うつ病が鉄やビタミンと関連しているならば、最貧国はうつ病だらけになっているはずです。例えば、今回選んだ国ではコンゴという国は非常に貧しい方の国です。貧血が50%を超えているので、かなりの人が栄養不足であり、鉄だけではなく他の栄養も非常に少ないでしょう。しかし、うつ病の有病率は3.9%です。
重度の鉄欠乏性貧血の人でもピンピンしていて、非常に明るい性格の方はいっぱいいます。うつ病は生まれ持った性格や遺伝、環境なども関連していそうですし、鉄よりも、別のことが関連しているような気がしています。そのことはまたの機会に記事にします。