抗がん剤の末梢神経障害の予防にはまず糖質制限

女優の秋野暢子さんは食道がんとなり、抗がん剤の影響でしびれがまだ残っているそうです。(記事はここ

秋野暢子、ステージ3の食道がん寛解を報告も「完治にはだいたい5年かかる」 現在も「しびれ」残る

秋野は「ステージ3の食道がんの重複がんでした。最終的には7つ見つかり、一番大きいので4センチでした。手術した方が良いのですが、しゃべるのが仕事ですから、声帯がないのは困るので、外科手術はしませんでした」と説明。「抗がん剤の副作用も少なく、苦しい方から比べると楽だった。恵まれていました。今も3ヶ月に1回検査しています。抗がん剤も放射線も治療を終えて、がんが消えた状態を寛解という。完治にはだいたい5年かかるそうです。今も指先と足首から下はしびれています」と現状を明かした。

抗がん剤の影響で手足のしびれ、末梢神経障害が起こることがあります。乳がんの治療でも頻繁に認められます。

この末梢神経障害と糖質過剰摂取は関係しているのでしょうか?

例えば、乳がんで糖尿病の有無により、末梢神経障害について比較した研究では、糖尿病のある人の方が発症率も重症度も高いというのがあります。(この論文参照、図はこの論文より)

上の図のように全体では59.7%の人が末梢神経障害を発症しましたが、糖尿病有りでは74.4%、糖尿病なしでは58.4%と大きな差があり、より重症なグレード2~3の末梢神経障害は糖尿病で51.2%、糖尿病なしで27.7%と、糖尿病の人ではほぼ2倍に近い割合でした。グレード2~3の末梢神経障害を発症する可能性は糖尿病があると3.34倍でした。

上の図は抗がん剤のパクリタキセル誘発性末梢神経障害が回復するまでの期間を示しています。中央値23.5カ月の追跡調査後、糖尿病有りでは81.8%が末梢神経障害が持続していたのに対し、糖尿病のない群では40.9%で、1年間の追跡調査の後でも、糖尿病群では29.4%が依然としてグレード2~3の末梢神経障害を経験していましたが、糖尿病のない群ではグレード2~3はいませんでした。2年後でも糖尿病の人の18.2%ではグレード2~3の末梢神経障害が認められました。

また抗がん剤のタキサン誘発末梢感覚神経障害と糖尿病との関連を調べた研究を見てみましょう。(この論文参照)タキサンを受けている患者における軽度のグレード1の末梢神経障害の発生率は非糖尿病で33.4%、糖尿病で25.9% であり、重度のグレード2を超える末梢神経障害の発生率は非糖尿病で15%、糖尿病で34.6%でした。非糖尿病患者の神経障害の割合は48.8%でしたが、糖尿病患者の割合は、糖尿病の期間が5年未満の群では52.8%、5年以上の群では75%でした。

25件の研究から8,923人のがん患者のメタアナリシスでも、糖尿病があると化学療法誘発性末梢神経障害の発症の可能性は1.6倍でした。(この論文参照)

さらに、乳がんに対してタキサンの投与を受けている人での研究では糖尿病ではなく高血糖での末梢神経障害の発症を分析しています。(この論文参照)

非肥満患者と比較して肥満患者では有意ではありませんが、末梢神経障害の発症の可能性は1.14倍で神経障害のリスクが高い傾向がありました。血糖不安定性の代用として、神経障害と治療に関連したグレード2から4の高血糖の発生との関係を調べたところ、高血糖があると末梢神経障害の発症の可能性は1.47倍でした。

糖尿病そのものでも末梢神経障害が発症することを考えると、抗がん剤による末梢神経障害の発症リスクが高くなることは納得できます。

糖質過剰摂取ではブドウ糖がメインのエネルギー源となり、様々な側副経路が促進されます。特に最終的にフルクトースまで代謝されるポリオール経路、終末糖化産物(AGEs)やその中間体のメチルグリオキサール、そしてされらによる酸化ストレスの増加は糖尿病の末梢神経障害の成因と考えられています。

動物実験上ではケトン食でメチルグリオキサールによる神経への悪影響を除去できるというものがあります。(ここ参照)痛みにもメチルグリオキサールが関連しています。(「椎間板ヘルニアの痛みにはまず糖質制限」参照)

このようにただでさえ糖質過剰摂取では末梢神経障害のリスクがあるのに、抗がん剤の強力な炎症、酸化ストレスが加わると脆弱な状態の末梢神経は大きなダメージとなるでしょう。

抗がん剤治療では食欲も非常に低下することがあり、その際に医師や看護師は「何でも良いから食べられるものを食べて」とアドバイスするでしょう。しかし、そこで多くの人が口にするのは糖質の塊や、糖質たっぷりのドリンクです。それがその後の末梢神経障害を助長してしまうかもしれないのです。

抗がん剤で食べられないのであれば無理に食べず、回復を待ち、そうすればその間はたっぷりとケトン体が出てくれるでしょう。そうするとそのケトン体が神経を守ってくれるはずです。具合の悪いときに無理にでも努力して食事を摂る動物は人間くらいなものです。何も食べないことで自己治癒力が高まるんだと思います。そこで無理に糖質を摂取して、それが新たな医療の必要性を生むのでしょう。

多くの施設では、抗がん剤治療で手足を氷で冷やして血流を低下させ、末梢の神経のダメージを低下させることをしていると思いますが、それもしていない病院もあります。

手足のしびれはQOLを低下させます。まずは予防です。末梢神経障害の可能性のある抗がん剤治療では糖質制限と手足の冷却をするのが良いと思います。

もちろんそれでもすべてが予防できるわけではないでしょう。すでにダメージが残って困っている場合、改善できる可能性のある方法はあります。あきらめず、札幌やその周辺の方で困っている方はご相談ください。

糖質はがんのエサなので、末梢神経障害とは関係なく、がんになってしまったら糖質制限です。その前にがんにならないためにも糖質制限です。がんは糖質過剰症候群です。

 

「Chemotherapy-Induced Neuropathy and Diabetes: A Scoping Review」

「化学療法誘発性神経障害と糖尿病:スコープレビュー」(原文はここ

2 thoughts on “抗がん剤の末梢神経障害の予防にはまず糖質制限

  1. 秋野暢子さんは健康意識の高い方で、関連の情報発信もされていたこともあり、驚いています。

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