メタボリックシンドロームにおける体内鉄貯蔵量の減少の影響

鉄およびフェリチンと高血圧や糖尿病、メタボリックシンドロームの構成成分との関連性が示されています。それを否定する人は炎症でフェリチンが高くなっているだけだというかもしれません。もしそうだとしたら、意図的に血液を減らす献血や瀉血を行っても、メタボの構成成分のデータは変化しないでしょう。

今回の研究では、メタボの人64人を瀉血による鉄減少群と対照群に分けて、様々なパラメータを比較しました。開始時に鉄減少群では300mlの血液が除去され、4週間後にはフェリチンレベルに応じて、フェリチン<90ng/mlでは250ml、90~200ng/mlでは350ml、>200ng/mlでは500mlの血液が除去されました。

それによってどうなったでしょう?(表は原文より改変)

鉄減少群 (n = 33) 対照群 (n = 31)
ベースライン 第6週 ベースライン 第6週
  収縮期血圧 mmHg 148.5±12.3 130.5±11.9 144.7±14.4 143.8±11.9
  HOMAインデックス 4.8±7.2 3.6±2.7 4.5±3.8 4.1±3.6
  血糖値 mg/dl 110.7±29.4 98.5±24.0 109.1±34.4 107.3±33.6
  HbA1c % 5.56±0.61 5.36±0.58 5.84±1.24 5.72±1.24
  インスリン μU/ml 15.4±17.7 14.2±8.9 16.7±12.7 15.2±11.6
  アディポネクチン μg/ml 9.15±3.40 9.83±5.00 8.75±4.00 9.40±4.40
  hs-CRP mg/dl 0.32±0.44 0.33±0.39 0.30±0.37 0.31±0.38
  拡張期血圧 mmHg 93.2±6.8 83.7±5.7 90.8±6.6 90.0±8.6
  心拍数 拍数/分 72.1±8.2 70.0±5.8 74.2±9.5 76.2±8.4
  フェリチン ng/ml 188.3±212.4 104.6±132.5 173.2±132.9 149.4±124.9
  鉄 ng/ml 100.6±34.2 75.8±28.5 100.8±26.2 102.8±36.9
  中性脂肪 mg/dl 154.0±66.7 158.0±64.7 204.6±120.0 178.±70.7
  コレステロールmg/dl 208.4±36.5 212.2±38.6 211.0±37.7 206.4±36.4
  HDL-C mg/dl 55.9±15.0 58.9±17.9 54.2±16.5 55.0±16.1
  LDL-C mg/dl 131.2±35.8 123.5±35.9 130.7±32.8 125.1±29.1

上の図のように鉄減少群では、血圧の大きな低下が得られ、心拍数も有意に低下しました。血糖値も有意に低下、HbA1cもわずかですが有意に低下、インスリン抵抗性を示すHOMAインデックスは有意ではありませんでしたが、低下傾向を示しました。

また、収縮期血圧とフェリチン濃度の変化は互いに有意な相関があり、HOMAインデックスの改善はフェリチン濃度の低下と相関していました。

つまり、鉄およびフェリチンを低下させるだけで、様々なパラメータが改善する可能性があります。逆に考えるとフェリチンそのものが作用を持っており、人体に不利益な影響をもたらしている可能性があります。

非常に低いフェリチンは鉄欠乏の指標とはなりますが、高いフェリチンは鉄の十分な貯蔵を示してるとは限りません。細胞の障害、特に肝細胞の障害でフェリチンは高くなります。

現在フェリチンは鉄貯蔵のマーカーという古典的な考えではなく、炎症のマーカーであり、鉄は老化物質とも考えられています。フェリチンが100以上ないとダメだといまだに信じている人もいるかもしれません。しかし、国民のほとんどが代謝の異常を抱えているアメリカ人の研究であっても、女性で100を超えるのは非常に少ない割合です。

瀉血をお勧めしているわけではありません。しかし鉄欠乏でないないのであれば、むやみに鉄を増やす必要はありません。

「Effects of phlebotomy-induced reduction of body iron stores on metabolic syndrome: results from a randomized clinical trial」

「瀉血による体内鉄貯蔵量の減少がメタボリックシンドロームに及ぼす影響:ランダム化臨床試験の結果」(原文はここ

2 thoughts on “メタボリックシンドロームにおける体内鉄貯蔵量の減少の影響

  1. 瀉血まではしなくても、薬やサプリ、そして糖質摂取を可能な限り減らす・ゼロにする「引き算の医学」は
    薬てんこ盛り、糖質過剰摂取推奨の「足し算医学」より体には良さそうですね。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      今の医療は足し算ばかりですからね。掛け算になるような薬もあるのでは?

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