うつ、パニックが鉄不足が原因だと断定するような本が出ていますが、私は違うのでは?と思っています。もちろんいつも言っていますが鉄不足は問題です。しかし、フェリチンだけで鉄不足が、その人にとって深刻なものかどうかはわかりません。他の記事でも書いたように、フェリチンが高くなってしまうと、がんのリスクが高くなるという報告がたくさん存在します。そのことを解決せずに、むやみに鉄やフェリチンを増やせというのは非常に無責任と違和感を感じます。
著者にとってみれば、様々な研究や論文は意味がないと言っていますし、製薬会社からのお金で研究しているのでサプリメントの悪いことばかりを示すので、ダメだということになります。しかし、それはサプリメントを推奨する研究や論文も同じ事で、サプリメント業界からお金が流れているので、同じことです。サプリメント業界はサプリメントを売る人にキックバックをすることは通常のことですし。
フェリチンが低いと本当にミトコンドリアで作り出すATPが少なくなるのでしょうか?ミトコンドリアの電子伝達系は鉄を必要するのは事実で間違いがありませんが、フェリチンが低いことだけでミトコンドリアの中の鉄が不足するのでしょうか?ATPを作り出すということは生物にとって最も重要なことです。その最も重要なことができないのに、フェリチンがまだゼロになっていないのはおかしなことです。貯金が200万ある状態で、今月の収入が無くて、そのまま飢え死にしますか?貯金おろしますよね?フェリチンは鉄を貯蔵するもの、と考えるなら、フェリチンが低いぐらいでは、ミトコンドリアの鉄は不足していないと考える方が妥当でしょう。
貧血を認めないで、フェリチンが低値となる、いわゆる「隠れ貧血」ではなく、すでにヘモグロビンが低下している本物の鉄欠乏性貧血であっても、普通に生活している方は非常にたくさんいます。女子の陸上選手の25%が貧血をすでに認めているそうです。それでも、陸上ができるのです。フェリチンが低値ぐらいで、ATP不足であれば、スポーツなんてできないでしょう。もちろん、貧血があれば酸素をうまく運べず、記録面では悪くなる可能性があります。しかし、フェリチンが低値ぐらいで嫌気性代謝になっているなら、ほとんど練習もままならない状態です。
閉経を迎え、50代になると、女性は元気になるというのもかなり私の感覚とは違います。もちろん、若い女性が多く訪れるクリニックであるかもしれないので、そう思ってしまうのは無理もないのかもしれません。
ネットで調べてみると、次のようなデータがありました。
(グラフはこのサイトより)
確かに40代は最も患者が多いのですが、50代以降と大差はありません。鉄が増えてくる閉経後の女性にうつが少ないというのはどうやら勘違いです。
また、フェリチン値30以下は重篤な鉄不足と言っていますが、その30というのはどこから来たのでしょうか?
鉄は症状を出やすくしたり、促進したりする一つの因子ではあるかもしれませんが、少なくとも「原因」というのは言い過ぎでしょう。
薬一辺倒の医療に私も疑問を持っているので、食事の大切さを訴えていること、鉄の重要さを一般の人にもわかりやすく説明していることは非常に良いと思うのですが、何かもやもやした違和感を感じざるを得ません。
みなさんはどう思われますか?