アメリカ糖尿病学会(ADA)の2023年版診療ガイドラインが出てきました。
その第5章に食事療法について書かれているので、今回はそれを取り上げてみたいと思います。基本的にはコンセンサスレポートそのままです。つまり、糖質制限は当然のように推奨されています。
「Medical Nutrition Therapy」という項目の中に、「Eating Patterns and Meal Planning」(食事パターンと食事計画)という項目があります。その冒頭に次のように書かれています。
Evidence suggests that there is not an ideal percentage of calories from carbohydrate, protein, and fat for people with diabetes.
糖尿病患者にとって、炭水化物、タンパク質、および脂肪からのカロリーの理想的なパーセンテージがないことを示す証拠があります。
当然ですね。
日本糖尿病学会は「肥満・糖尿病の人はなぜ新型コロナに弱いのか 「糖質過剰」症候群II 」でも書いたように、2020年3月にコンセンサスステートメントを出していながら、その中身は2019年の糖尿病診療ガイドラインと同様で、栄養素の割合のエビデンスはないと言っておきながら、炭水化物50~65%、タンパク質13~20%、脂質20~30%です。やはりそこからの脱却はできません。(「糖尿病診療ガイドライン2019の残念な食事療法 その1」参照)
The Mediterranean, low-carbohydrate, and vegetarian or plant-based eating patterns are all examples of healthful eating patterns that have shown positive results in research for individuals with type 2 diabetes, but individualized meal planning should focus on personal preferences, needs, and goals.
地中海食、低炭水化物、ベジタリアンまたは植物ベースの食事パターンはすべて、2型糖尿病患者の研究で肯定的な結果を示した健康的な食事パターンの例ですが、個別化された食事計画は、個人の好み、ニーズ、および目標に焦点を当てる必要があります。
はっきりと、糖質制限(低炭水化物)は研究で肯定的な結果を示した健康的な食事であることが書かれています。
For individuals with type 2 diabetes not meeting glycemic targets or for whom reducing glucose-lowering drugs is a priority, reducing overall carbohydrate intake with a low- or very-low-carbohydrate eating pattern is a viable option. As research studies on low-carbohydrate eating plans generally indicate challenges with long-term sustainability, it is important to reassess and individualize meal plan guidance regularly for those interested in this approach. In response to questions regarding implementation of low-carbohydrate and very-low-carbohydrate eating patterns, the ADA has developed a guide for health care professionals that may assist in the practical implementation of these eating patterns. Most individuals with diabetes report a moderate intake of carbohydrates (44–46% of total calories). Efforts to modify habitual eating patterns are often unsuccessful in the long term; people generally go back to their usual macronutrient distribution. Thus, the recommended approach is to individualize meal plans with a macronutrient distribution that is more consistent with personal preference and usual intake to increase the likelihood for long-term maintenance.
2型糖尿病で血糖値の目標値を満たしていない場合、または血糖降下薬を減らすことが優先事項である場合、低炭水化物または超低炭水化物の食事パターンで全体的な炭水化物摂取量を減らすことが実行可能な選択肢です。低炭水化物食事プランに関する調査研究は、一般的に長期的な持続可能性に関する課題を示しているため、このアプローチに関心のある人のために、食事プランのガイダンスを定期的に再評価し、個別化することが重要です。低炭水化物および超低炭水化物の食事パターンの実施に関する質問に応えて、ADA は、これらの食事パターンの実際の実施に役立つ医療専門家向けのガイドを作成しました。糖尿病患者のほとんどは、適度な炭水化物の摂取を報告しています(総カロリーの44~46%)。習慣的な食事パターンを修正する努力は、長期的には失敗することがよくあります。人々は通常、通常の主要栄養素のエネルギー比率に戻ります。したがって、推奨されるアプローチは、長期的な維持の可能性を高めるために、個人の好みと通常の摂取量により一致する主要栄養素の比率で食事計画を個別化することです。
最後はちょっと腰砕けですが、あえて糖質制限だけについて言及しています。そして、実際に医療提供者用のガイド「Low Carbohydrate and Very Low Carbohydrate Eating Patterns in Adults with Diabetes: A Guide for Health Care Providers」も作成しています。糖尿病は糖質過剰摂取で起きる糖質過剰症候群なので、糖質制限が推奨されるのは当然です。
さらに、昨年までにはなかったインターミッテントファスティングについても書かれています。
There has been an increased interest in time-restricted eating and intermittent fasting as strategies for weight management. Intermittent fasting is an umbrella term which includes three main forms of restricted eating: alternate-day fasting (energy restriction of 500–600 calories on alternate days), the 5:2 diet (energy restriction of 500–600 calories on consecutive or nonconsecutive days) with usual intake the other five, and time-restricted eating (daily calorie restriction based on window of time of 8–15 h). Each produces mild to moderate weight loss (3–8% loss from baseline) over short durations (8–12 weeks) with no significant differences in weight loss when compared with continuous calorie restriction (148–151). A few studies have extended up to 52 weeks and show similar findings (152–155). Time-restricted eating (shortening the eating window) is generally easier to follow compared with alternative-day fasting or the 5:2 plan, largely due to ease, no need to count calories, sustainability, and feasibility. This may have implications as people with diabetes are looking for practical eating management tools.
体重管理の戦略として、時間制限のある食事とインターミッテントファスティング(断続的な断食)への関心が高まっています。インターミッテントファスティングは、食事制限の 3つの主な形式を含む包括的な用語です: 1日おきの断食 (1 日おきに500~600カロリーのエネルギー制限)、5:2ダイエット (連続または非連続の日に500~600カロリーのエネルギー制限)残りの5日は通常の食事摂取、および時間制限のある食事 (8~15時間の時間枠に基づく毎日のカロリー制限)。いずれも、短期間 (8~12週間)で軽度から中程度の減量 (ベースラインから3~8%の減量)をもたらし、継続的なカロリー制限と比較した場合、減量に有意差はありません。いくつかの研究では52週間まで延長され、同様の結果が示されています。時間制限のある食事 (食事時間帯の短縮)は、概して1日おきの絶食や5:2プランに比べて行うのが簡単です。これは主に、手軽さ、カロリー計算の必要がないこと、持続可能性、および実現可能性によるものです。糖尿病患者は実用的な食事管理ツールを探しているため、これは意味があるかもしれません。
時間制限のある食事はエネルギ(カロリー)制限の必要はないと思いますが、自然とエネルギー摂取量は減少することが多いでしょう。そして、糖質制限と組み合わせればさらに効果的でしょうね。
いずれにしても、日本糖尿病学会よりはずいぶんまともなガイドラインです。
この続きは次の記事で。
「5. Facilitating Positive Health Behaviors and Well-being to Improve Health Outcomes: Standards of Care in Diabetes-2023」
「5.健康転帰を改善するための前向きな健康行動と幸福の促進:糖尿病の標準治療-2023」(原文はここ)
日本の糖尿病治療の思考停止
状態(薬等で血糖値を下げる。
かと言って、低血糖起こすと
糖質を与えて数値の辻褄合せ)
何とかならないですかね。
(心ある医療関係者も増えてますが)。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
製薬会社がこれほど力を持っているので何ともならないです。