薬を使わずに糖尿病の寛解をもたらす糖質制限

現在の糖尿病の治療は薬物療法が中心です。もちろん、食事療法という名の糖質過剰摂取を伴うエネルギー(カロリー)制限食と運動療法も行われますが、エネルギー制限を一生続けることはできません。そして、根本的には糖質過剰摂取なので体の状態は進行していきます。

今回の研究では薬を使わないで、糖質制限で糖尿病の寛解を達成する予測する因子を分析しました。糖質制限と言っても今回の1日130g以下の糖質です。低炭水化物食と言った方が良いですが、この記事では糖質制限としています。HbA1cが2回以上48mmol/mol(6.6%)を超えた人を2型糖尿病としています。

2013年から2021年にかけての8年間で473人の2型糖尿病の患者がおり、その中で糖質制限のアプローチを選択したのは186人(39%))でした。114人(61%)が男性で、ベースライン時の年齢の中央値は63歳でした。追跡期間の平均は33か月でした。37.6%は、糖尿病の診断から1年以内の人でした。(図は原文より、表は原文より改変)

上の図はベースラインとフォローアップ時の様々なパラメーターの変化です。体重、HbA1c、中性脂肪、収縮期血圧、総コレステロール、総コレステロール/HDL比です。どれも有意に低下しています。平均して、体重は10kg減、HbA1cは8.0から6.4へ1.6減、中性脂肪は186mg/dLから124へと62減、収縮期血圧も12mHg減でした。

上の図は体重減少と寛解したかどうかの患者数です。緑が寛解した人、赤が寛解できなかった人です。体重減少は非寛解群で-8.6kg、寛解群では-12kgでした。

上の図はHbA1cの変化です。左の2つが寛解群、右の2つが非寛解群です。非寛解群の方が減少幅は大きいのですが、ベースラインでのHbA1cが低いほど寛解しやすいとも言えます。

ベースライン指標寛解群
中央値 (IQR)
非寛解群
中央値 (IQR)
診断からの期間 (月)2.0 (0.0–68)72 (28–127)
HbA1c (mmol/mol)54 (50–62)75 (65–91)
年齢(歳)63 (54–72)62 (55–73)
重量 (kg)96 (84–111)97 (86–108)
総コレステロール (mmol/L)5.0 (4.0–5.4)4.8 (4.2–5.8)
HDL コレステロール (mmol/L)1.1 (1.0–1.3)1.2 (1.0–1.3)
計算された LDL コレステロール (mmol/L)3.6 (2.8–4.1)3.5 (2.9–4.7)
中性脂肪 (mmol/L)1.9 (1.3–3.0)2.2 (1.6–3.2)
収縮期血圧 (mm Hg)140 (136–155)140 (132–149)
拡張期血圧 (mm Hg)80 (78–90)80 (76–85)

上の表は糖質制限で寛解した人と非寛解の人のベースラインでの様々な指標の中央値です。有意差を示したのは診断からの期間とHbA1cです。

上の図は糖質制限を行っている2型糖尿病患者186人の診断からの年数に従って層別化し、寛解群と非寛解群の間で比較しました。糖尿病の診断から1年未満は、寛解の重要な予測因子でした。診断後の最初の1年で、糖質制限のアドバイスを受けた人の77%が、糖尿病薬を服用していないにもかかわらず、48mmol/mol(6.6%)未満の HbA1cを達成しました。1~5年では35%、5~10年では31%、10~15年では44%、そして15年以上では20%でした。逆に言えば、糖尿病の診断から15年以上経過しても食事を正しく変えれば20%は寛解するのです。

そして、さらにこの研究の糖質量ではなくスーパー糖質制限の1日50~60gにすれば、もっと寛解率は増加するでしょう。

そして重要なことに、この研究を行った施設の患者1人あたりの糖尿病治療費は年間4.94ポンドで、他の地元の施設では11.30ポンドでした。医療費が半分以下です。寛解を続けられればもっと少なくなるでしょう。

ジョスリン糖尿病学によると、糖尿病と診断された時点でβ細胞機能はすでに正常の50%前後であり、年間約4%の割合で機能が低下し、β細胞機能が15%前後となった時点で経口薬の効果は期待できず、インスリン治療が必要となる、と言われています。(ここ参照)

通常の治療では糖質過剰摂取が続きますので、β細胞はどんどん疲弊、破壊していきます。診断から1年以内であればまだ50%程度のβ細胞が生き残っているわけです。そのβ細胞を大切に使っていかなくてはなりません。そのためには糖質制限が必須だと考えます。

いくら薬で見た目の血糖値を下げても、糖質過剰摂取では血糖値スパイクが起きており、インスリン過剰分泌が起こります。できる限り血糖値の上昇を抑える必要があります。糖尿病は糖質過剰症候群です。

糖質制限は薬を使わずに糖尿病の寛解をもたらします。薬を使わないからこそ寛解できるとも言えます。

HbA1cができる限り低いうちに、そして糖尿病とわかったらすぐに、また糖尿病と診断されなくても食後高血糖が起きていたらすぐに、また何かが起きる前に普段から糖質制限をすることをお勧めします。糖尿病は医療だけに頼って標準治療をしていても寛解することは難しいでしょう。

家族が気付いて、必死に本人に糖質制限を勧めたりすることはあるでしょう。しかし、こればかりは本人がやろうとしなければ続きませんし、ストレスばかりが募ります。糖質依存はなかなか抜け出せません。

 

「What predicts drug-free type 2 diabetes remission? Insights from an 8-year general practice service evaluation of a lower carbohydrate diet with weight loss」

「薬物を使用しない2型糖尿病の寛解を予測するものは何? 減量を伴う低炭水化物ダイエットの8年間の一般診療サービス評価からの洞察」(原文はここ

3 thoughts on “薬を使わずに糖尿病の寛解をもたらす糖質制限

  1. いわゆる糖尿病の標準治療というものは、少なくとも患者を健康に
    導く治療ではないのですね。

  2. 糖質制限はストレスに感じるどころか糖尿病と言う治る事のない慢性病から解放してくれ、合併症の恐怖と戦うストレスから100%解放してくれる素晴らしいメソッドです。しかも糖質を摂取しないだけと言う非常に簡単でわかりやすい方法を実践するだけなので継続する事にストレスを感じません。しかも実践してすぐに結果が出るので続けるモチベーションになります。
    不治の病が薬も服用せず、こんな簡単な方法で健常人と同等かそれ以上の健康を手に入れられる、そんなものが他にあるでしょうか。
    私は以上のように思います。

    すでに私は糖質摂取量に気をつけると言う点を除いては、自分が糖尿病である事を意識する事はありません。糖質制限は私の日常であり特別な事ではなくなりました。

    1. 西村 典彦さん、コメントありがとうございます。

      糖質依存が強くなかったり、抜け出せれば、ストレスも亡くなるのでしょうけど、
      最初に誰かに言われて嫌々始めた糖質制限であれば、やはりストレスも多いでしょう。
      本当は治りもしないのに、何も考えず医師の言うとおりにクスリを飲んでいる方が楽だと思う人も多いでしょうね。

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