ペインクリニックや整形外科では抗うつ薬を鎮痛薬として使うことがあります。抗うつ薬は下行抑制系というものを活性化させて痛みを抑制すると言われています。でも、私はあまり信じていません。多少眠れるようになったり、ちょっと効果があったという人はいますが、劇的な効果は望めません。
私は痛みが半減するかどうかで効果を判定します。1~2割程度の痛みの減少はほとんどプラセボでしょう。抗うつ薬で痛みが半減するなんてことはまずありません。
今回の研究では、22種の疼痛状態に対する8クラスの抗うつ薬の有効性をプラセボと比較したシステマチックレビュー26件を分析しています。156件の試験と25,000人を超える参加者の分析です。痛みの評価は、0(痛みなし)から100(最悪の痛み)のスケールで表します。そしてプラセボとの平均差で示されました。
三環系抗うつ薬が12件、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が11件、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)が8件、四環系/非定型抗うつ薬が4件などでした。
分析した結果は、なんと42件中31件が有効性がないか、どちらとも言えないというものでした。逆に有効性があるというものは11件でした。SNRIで慢性腰痛が平均差-5.3、術後疼痛で-7.3、神経障害性疼痛で-6.8、変形性膝関節症で-9.6、線維筋痛症の痛みの軽減 ≥50%が1.4倍などでした。ここで注意してほしいのが、痛みのスケールは100段階です。SNRIが効果があるとしても100分の10未満なのです。ほとんど差はありません。
さらに、問題なのはやはりスポンサーです。製薬業界とのつながりは69件(45%)のレビューで存在し、40件(26%)では不明確でした。不明確は恐らくクロでしょう。そうするとおよそ70%が利益相反がありそうです。業界と結びついた試験のうち、47(68%)が SNRI を調査し、13(18%)が SSRI を調査しています。つまり最近の研究のほとんどは企業のための研究だと思った方が良いでしょう。
SNRIなどはダラダラと使うには良い薬なのかもしれません。ずっと飲ませて、ずっと大きな改善がない状態が一番医療側にとって良い状態なのかもしれませんので。
もちろん、必要な場合もあるかもしれませんし、抗うつ薬の使用で痛みが非常に楽になることもあるでしょう。しかし、大して有効ではないのに、ずっと飲まされている人が多いのも事実でしょう。そして最初の段階で副作用で具合が悪くなりあまり続けられない人も結構います。
基本的には痛みに抗うつ薬はほとんど効果がないと思っていた方が良いと思います。
「Efficacy, safety, and tolerability of antidepressants for pain in adults: overview of systematic reviews」
「成人の疼痛に対する抗うつ薬の有効性、安全性、忍容性:系統的レビューの概要」(原文はここ)
朝起きるのは、毎日憂鬱ですが、
1時間程の運動で前向きになります。
自分には、薬より運動が効きます。