夜勤者でも食事は夜中に摂らない方が良い

人間は昼間に活動して、夜は眠るように進化してきました。人体は約24時間の周期で変化する生理機能のサーカディアンリズムにより、体温、ホルモン分泌、睡眠覚醒など、様々な身体機能が変動します。それに逆らえば、体内時計が狂ってしまいます。

だから、夜勤などの夜に眠らずに活動することは、様々な健康への影響があるでしょう。例えば、夜勤は糖尿病のリスクを高めます。うつ病や不安のリスクも高くなります。心血管系への悪影響もあります。

体内時計は太陽と関連していると思いますが、もう一つは食事時間と関連している可能性もあります。そこで、夜勤労働者の食事を夜ではなく昼間に摂取すれば、体内時計の乱れも少なくなるかもしれません。同じグループの研究を3つ紹介します。

まず一つ目の研究では、健康な人(男性12人、女性7人、年齢26.5歳、BMI22.7、HbA1cの範囲4.9~5.4%)を対象に、14日間にわたり厳密に管理されたサーカディアンリズム実験を行いました。模擬的な夜勤の時間に合わせて、夜中も食事を摂る場合と、日中の通常の時間のみに食事を摂る場合で、耐糖能などを評価しました。(図は原文より)

上の図の左側のオレンジが夜中食事群、右側の青色が昼間食事群です。上の深部体温は食事の影響がありませんでした。しかし、CとDのように、血糖値の推移は夜中食事群で昼夜が真逆になりました。昼間食事群ではベースラインと違いがありません。

エネルギー消費量は違いはありませんでした。

上の図はインスリンの推移です。食事のタイミングの違いは、模擬夜勤が内因性のインスリンリズムに与える影響に有意な変化を及ぼしませんでした。

次は耐糖能の評価です。朝食と夕食について、「朝食」を各絶食/食事サイクル内で長時間絶食後の最初の食事と定義し、「夕食」を各絶食/食事サイクル内で最後の食事と定義します。その食事の後3時間の食後血糖値と食後インスリンの推移を調べました。

上の図は朝食後です。昼間食事群ではベースラインと違いがありませんでしたが、夜中食事群では、朝食後の血糖値スパイクが非常に大きくなりました。また、インスリン分泌のタイミングも大きくずれてしまいました。

上の図は夕食後です。どちらもベースラインと違いがありませんでした。

次の研究では、うつや不安についてです。参加者は同じです。

上の図はベースラインに対するうつ様気分と不安様気分の増減を示しています。昼間食事群ではベースラインと違いがありませんでしたが、夜間食事群では明らかにうつや不安が増加していました。夜間食事群ではうつ様気分が26.2%、不安様気分が16.1%上昇しました。

もう一つの研究では、心血管系の有害性についての研究です。これまた同じ参加者です。pNN50(50msを超える連続心拍間隔のパーセンテージ)、RMSSD(連続心拍差の二乗平均平方根)、およびLF/HF(低/高心拍数)を評価しました。これらは心拍変動を評価するためのパラメータです。

結果は、夜間食事群ではベースラインCRと比較してpNN50が25.7%減少しました。同様に、RMSSDも14.3%、LF/HF(心臓自律神経調節を推定する指標)が5.5%有意に上昇しました。一方、昼間食事群ではどれも有意な変化は認められなませんでした。

これらは、夜勤者が夜間にも食事をすると、心臓の迷走神経の調節が低下することを示しています。迷走神経(副交感神経)の活動は、心臓保護的であると考えられています。

GとHの図はPAI-1についてです。夜間食事群では、ベースラインと比較してPAI-1濃度が23.9%上昇しました。昼間食事群では有意な変化は認められませんでした。PAI-1(プロトロンビン因子プラスミノーゲン活性化因子インヒビター1)は、線維素溶解(血栓溶解)を抑制する役割を持ち、PAI-1の値が高くなると、血栓が形成されやすくなる可能性があります。

心拍数とコルチゾールはどちらの群も変化なしでした。一方血圧は夜間食事群では変化がありませんでしたが、昼間食事群の方がベースラインと比較して、血圧が6~8%有意に低下しました。

様々な面で夜勤者はリスクがあり、そのリスクの一部には食事時間が関係している可能性が高いと思われます。人間として適した時間に食事をすることが、健康には重要なのでしょう。逆に、夜勤者でなくても、あまり遅い時間、夜中に何か食べることは有害である可能性もあります。

健康は食事からですね。

「Daytime eating prevents internal circadian misalignment and glucose intolerance in night work」

「昼間の食事は、夜勤中の体内時計のずれと耐糖能障害を防ぐ」(原文はここ

「Daytime eating prevents mood vulnerability in night work」

「昼間の食事は夜勤時の気分の不安定さを防ぐ」(原文はここ

「Daytime eating during simulated night work mitigates changes in cardiovascular risk factors: secondary analyses of a randomized controlled trial」

「模擬夜勤中の昼間の食事は心血管リスク因子の変化を緩和する:ランダム化比較試験の二次分析」(原文はここ

2 thoughts on “夜勤者でも食事は夜中に摂らない方が良い

  1. 体内リズムを整えるために
    朝ごはんは必須との主張も
    多いですが、これはまた別の
    話なのでしょうね。

    私は夕一食のみですが、
    糖質制限併用で体調良好。

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      進化の過程では、朝ご飯を食べていた人類はほとんどいなかったと思います。
      体内リズムには朝ご飯が影響していないか、悪影響を及ぼしているかはよくわかりません。

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