このシリーズもその13です。尽きませんね。今回は加齢黄斑変性症です。
加齢黄斑変性症(AMD)は、高齢者における不可逆的な視力低下、失明の主な原因です。滲出型と萎縮型がありますが、重度の視力喪失の90%は新生血管を伴う滲出型が原因です。
今回の研究では、66歳以上の糖尿病患者を特定し、GLP-1受容体作動薬の新生血管型加齢黄斑変性症の発症について追跡調査しました。GLP-1受容体作動薬曝露群は、6か月以上GLP-1 薬で治療された糖尿病患者と定義しました。比較群(非曝露)は、GLP-1薬を一度も受けたことのない糖尿病患者です。
GLP-1薬に曝露された46,334人の患者と曝露されていない92,668人のマッチングされた患者を含む139,002人の患者が対象です。139,002人のマッチング患者の平均年齢は66.2歳で、64,775人(46.6%)が女性でした。平均追跡期間は、曝露群で2.4年、非曝露群で2.5年でした。最も多く使用されたGLP-1受容体拮抗薬はセマグルチド(97.5%)であり、次いでリキシセナチド(2.5%)です。マッチした全患者139,002人における追跡開始までの糖尿病罹患期間の平均は6.22年でした。
GLP-1薬に曝露した46,334人のうち、2023年11月30日までに93人(0.2%)が新たに新生血管型加齢黄斑変性症診断されました。一方、非GLP-1薬群では88人(0.1%)が新たに新生血管型加齢黄斑変性症と診断されました。(図は原文より)
上の図はGLP-1薬に曝露した糖尿病患者と曝露しなかった患者との新生血管型加齢黄斑変性症の発生率の比較です。明らかにGLP-1薬曝露群の方が発生率は高く、そのリスクは2.11倍です。
上の図は、曝露期間の異なるグループにおける新生血管性加齢黄斑変性の累積発生率の比較です。Aは0.5~1.5年、Bは1.5~2.5年、Cは2.5年以上です。曝露期間が長くなるほど発生率が増加しています。
上の図は、曝露期間の違いと新生血管性加齢黄斑変性発生リスクです。6か月以上の曝露全体では2.11倍です。6~18か月ではリスクは有意に増加しません。18~30か月では2.26倍、30か月を超えると3.62倍です。恐ろしいですね。
以前の記事「糖尿病薬?やせ薬?GLP-1受容体作動薬の副作用 その9 糖尿病網膜症」「その10 失明」で書いたように、GLP-1薬では、プラセボ群と比較して糖尿病網膜症の合併症リスクの増加し、非動脈炎性前部虚血性視神経症のリスクが大幅に高くなります。
GLP-1受容体作動薬に眼毒性があるのは明らかでしょう。糖尿病患者に眼の合併症が起きても、この薬のせいではなく、糖尿病という疾患のせいにすれば、患者は何も言えないかもしれません。しかし、糖尿病治療薬であるGLP-1受容体作動薬を使った方が、様々な眼疾患リスクが増加してしまうのです。
現在、急速にGLP-1薬の使用は増加し、糖尿病だけでなく、肥満の治療にも安易に使われています。失明する前に、気が付いて、糖質制限を始めれば良いのですが。
糖尿病は糖質過剰症候群です。
「Glucagon-Like Peptide-1 Receptor Agonists and Risk of Neovascular Age-Related Macular Degeneration」
「GLP-1受容体作動薬と新生血管性加齢黄斑変性のリスク」(原文はここ)