糖尿病薬?やせ薬?GLP-1受容体作動薬の副作用 その9 糖尿病網膜症

糖尿病網膜症は世界的に視力障害、失明の主な原因であり、失明の原因としては第2位とか3位とか言われています。10年前の研究(ここ参照)になりますが、日本では50~60代の人の失明原因の第1位です。

糖尿病網膜症は高血糖への長期曝露に反応して発症します。しかしインスリンまたはスルホニルウレア治療による血糖コントロールが強化されると、既存の網膜症が一時的に悪化することが起きます。

血糖値が改善して、糖尿病の合併症が悪化するなんて、何か変ですよね。治療法が良くないと、このような矛盾が起きるのでしょう。つまり、見た目の数値だけが問題ではないということだと思います。

さて、流行りのGLP-1受容体作動薬にも、この糖尿病網膜症の悪化の副作用があると言われています。

今回は糖尿病網膜症に対するGLP-1受容体作動薬の関連性の6件のランダム化試験のメタアナリシスを見てみましょう。(図は原文より)

上の図で見ると、1つの研究(上から2つ目)が大きくリスク増加に関連しているよう見えますが、全体の分析では有意差がありませんでした。つまり、GLP-1薬の治療と網膜症の間に関連性は見られないということでした。

もう少し分析すると、次のようになりました。

上の図は横軸がHbA1cの平均低下、縦軸が網膜症の可能性を示しています。HbA1cの低下が大きいほど網膜症の可能性が高くなることが示されました。大きく改善するほど網膜症にとっては悪影響というのは、インスリンなどと同様ですね。

今回のメタアナリシス中で、最もそのリスクが示された研究を見てみましょう。GLP-1受容体作動薬のセマグルチドの研究です。もちろん、製薬会社がスポンサーであるバリバリの利益相反研究です。それにもかかわらず、全原因死亡、心血管死のリスクはセマグルチド群とプラセボ群の両群で同様でした。それだけではなく、糖尿病網膜症の悪化が認められました。(図は原文より)

上の図は糖尿病網膜症の合併症(硝子体出血、失明、または硝子体内薬剤や光凝固による治療を必要とする状態) の発生率です。セマグルチド群の方が1.76倍も糖尿病網膜症の合併症リスクが高くなりました。個別に見ると、網膜光凝固術を必要とした患者数は、セマグルチド群で38人(2.3%)であったのに対し、プラセボ群では20人(1.2%)、硝子体内薬剤の使用を必要としたのはセマグルチド群16人(1.0%)、プラセボ群13人(0.8%)、硝子体出血を起こしたのはセマグルチド群16人(1.0%)に対してプラセボ群7人(0.4%)でした。そして、糖尿病関連失明を発症したは数は少ないですが、セマグルチド群5人(0.3%)プラセボ群1人(0.1%)で、数にしてセマグルチド群では5倍でした。

利益相反たっぷりの研究結果でこの結果なので、十分に意味のあるリスクでしょう。

もしかしたら、他の5件の研究では、網膜症などの目の異常が出た場合に、上手く除外しているかもしれません。

いずれにしても、薬に頼るということは、リスクを負うということです。次回以降ではもう少し、まれですが、眼の副作用について書きたいと思います。

「HbA1c Change and Diabetic Retinopathy During GLP-1 Receptor Agonist Cardiovascular Outcome Trials: A Meta-analysis and Meta-regression」

「GLP-1受容体作動薬心血管アウトカム試験中のHbA 1c変化と糖尿病網膜症:メタアナリシスとメタ回帰」(原文はここ

「Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes」

「2 型糖尿病患者におけるセマグルチドと心血管疾患の結果」(原文はここ

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