炭水化物による血糖値スパイクは個人差が大きい

よく専門家たちが食後の血糖値スパイクについて、わかったかのように、GI(グリセミックインデックス)がどうとか、食べる順番がどうとか、食物繊維がどうとか言っています。でも食後の血糖値の推移なんて個人差があり、確定したことなんて言えるわけがありません。

今回の研究では2型糖尿病のない55人(平均年齢55.2歳、BMI25.6、HbA1c5.57)を対象として、7つの炭水化物食後の血糖値スパイクについて調べています。27人は正常血糖、26人は糖尿病前症、来院時に測定したHbA1c値に基づくと2型糖尿病は1人(6.5%)で、1人は不明でした。

血糖値の推移はグルコース値で代用され、Dexcom G4とG6 Proというフリータイムリブレのような持続グルコースモニタリング(CGM)デバイスを使用して測定しています。7種類の標準化炭水化物食(各炭水化物50g)と3種類の緩和食品が使用されました。2種類の単純炭水化物食は、ブドウ(赤ブドウ)およびミックスベリー(ラズベリー 170 g とブラックベリー、イチゴ、ブルーベリーのミックス、各約85g)で、5つのでんぷん質食は米(ジャスミンライス)、パン(バターミルクパン)、ジャガイモ(細切り)、パスタ(マカロニ、指示に従って調理し、冷却して冷凍したもの)、豆(缶詰の黒豆、高繊維)、3つの緩和食品は、食物繊維(エンドウ豆繊維粉末、14gで食物繊維10g)、タンパク質(ゆで卵白、100gでタンパク質10g)、脂質(ベルウェザーファームズ クレームフレッシュ、38gで総脂質15g)でした。

10~12時間の絶食後、朝一番の食事としてこれらの食事を摂取し、他の飲食物を摂取せず、提供された食事を摂取してから3時間は座ったままでいることが求められました。緩和食品テストでは、最初に緩和食品を摂取し、その10分後に炭水化物食(米)を摂取するように指示されました。848本のCGM曲線(参加者55人)、緩和食品を含む267本のCGM曲線が得られました。

まずは全体像から。下の図は各食事の信頼区間を含む平均曲線です。(図は原文より)

上の図のように典型的な食後CGM曲線は、食事摂取後最初はわずかに減少し、その後最大値まで増加し、3時間以内にベースラインに戻りました。5 種類のでんぷん質炭水化物食のうち、米、パン、ジャガイモは摂取後約 1 時間で高いピークを示しました。ブドウは、より早い時点で最高血糖値に達する高い血糖ピークを示しました。豆とパスタは他のでんぷん質食と同様の時間に最高血糖値に達しましたが、有意に低いピークを示し、豆は最も低い値でした。

脂質、タンパク質は血糖値スパイクのピークを少しだけ低下させたように見えます。最も低下させたのが脂質でしたが、ピークの時間が延長しました。食物繊維はほとんど変化していないように見えます。

異なる炭水化物食に対する食後の血糖反応に基づいて個人をタイプ分けしました。どのタイプで血糖値スパイクを起こすかで〇〇スパイカーと呼びます。上の図のbに示すように、どの炭水化物でもスパイクが大きくなるわけではなく、例えばライススパイカーは赤い線のライスで最もスパイクが大きくなっていますが、パスタではあまり多くなスパイクではありません。逆にパスタスパイカーはパスタで大きなスパイクになっていますが、ライスではそれほどではありません。

cに示すように血糖値の増加で見ると、ライススパイカーが最大のグループ(35%)であり、パンスパイカー(24%)、ブドウスパイカー(22%)が続きます。豆またはミックスベリーに対する反応で最大のスパイクを示した人はいませんでした。曲線化面積で見ると、さらにライススパイカーが増加し、ブドウスパイカーに分類される人は少なくなりました。

dに示すように、アジア系の人の参加者は13人ですが、半分はライススパイカーですね。

上の図のaはインスリン抵抗性(IR)とインスリン感受性(IS)とで分けたとき、すい臓のβ細胞の機能障害と機能が正常の場合の血糖値の推移です。ポテトとパスタについてインスリン感受性の人と比較してインスリン抵抗性の人で有意に高くなりました。ポテトには他のデンプン質食品(パンと米)と比較して、難消化性デンプンが有意に多いはずですが。

また、β細胞の機能障害がある人でも機能正常の人よりもポテトとパスタでスパイクが大きくなっています。

b~eに示すように、正常血糖のインスリン抵抗性の人もポテトに対して高いスパイクを示し、インスリン抵抗性の影響が大きいことが示唆されます。インスリン感受性または正常なβ細胞機能を持つ人の中で、ブドウスパイカーやライススパイカーの人が最も多く見られました。

 

上の図は緩和食品による影響を示しています。aは、米および米+3つの異なる緩和因子(食物繊維、タンパク質、脂肪)に対する平均CGM曲線です。bに示すように、血糖値の変動幅で見ると、一応3つともちょっと低下しています。脂質はピークが遅れます。

cとdに示すように、インスリン抵抗性とインスリン感受性の人では、3つの緩和因子の反応が大きく違います。インスリン感受性ではピークが低下していますが、インスリン抵抗性では緩和食品による影響はありません。同様に、β細胞機能障害のある人でも、緩和食品の効果はありません。β細胞正常の人ではタンパク質の緩和効果が認められました。

上の図のeは個人間の緩和効果にも大きく異なるパターンを示しています。数字は参加者の番号です。18番と48番の人のように、多くの人は軽度の緩和効果を示し、14番の人のように1人は強い緩和効果を示し、中には33番のように、より高い血糖反応を示した人もいました。gに示すように、タンパク質の緩和効果は、ライススパイカーの方がライススパイカーではないスパイカーの人よりも有意に大きくなりました。

糖質、炭水化物、でんぷん質の食品はどれも同じではなく、どの食品が最も高い血糖値スパイクを引き起こすかは個人差が非常に大きいのです。特にインスリン抵抗性があるとスパイクも大きく、緩和食品の脂質、タンパク質、食物繊維の効果はほとんどないか、限定的です。中には緩和すると思われている食品でスパイクが大きくなってしまう人もいます。

難消化性デンプンが多いポテトでさえ、ポテトスパイカーがいます。難消化性デンプンは役に立ちません。

自分が何スパイカーかは、ほとんどの人は知らないでしょう。インスリン感受性についても自分の状態を知っている人は少ないでしょう。そして、ほとんどの人は糖質過剰摂取状態です。肥満の人も多いでしょう。何が血糖値を下げるかはわかりません。スパイクしやすい食品もそれぞれ違います。誰にも共通することが言えないのに、専門家たちは無責任なアドバイスをします。

一番わかりやすいアドバイスは、糖質が血糖値を上げるから、糖質を減らせば血糖値スパイクも低下します、ということだけでしょう。糖質、炭水化物の種類なんて考えても仕方がありません。

もちろん、毎日自分でCGMなどで研究されても良いでしょう。しかし、それはその人だけに当てはまる結果でしかありません。他の人がやれば他の結果が出るでしょう。

「Individual variations in glycemic responses to carbohydrates and underlying metabolic physiology」

「炭水化物に対する血糖反応とその基礎となる代謝生理学の個人差」(原文はここ

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