心血管疾患リスクが高いほど塩分制限をしてはいけない

高血圧や心血管疾患には塩分制限が当たり前になり過ぎています。もちろん、食塩に感受性が高い人は塩分制限で血圧が少し低下することもあるでしょう。しかし、根本的に高血圧が解消するわけではありません。塩分制限の推奨はどんどん過激になっています。WHOの掲げるのは1日5g未満。しかし、今年の3月に行われた米国心臓病学会で発表された研究では、ナトリウム摂取量を1日2.5g(食塩換算で約6.4g)未満を目標とする食事療法を行っていた人は、摂取量の上限がそれ以上の食事療法を行っていた人よりも、死亡率が80%高くなってしまっていました。(ここ参照)一般的には、ナトリウムの摂取を減らすことで体液貯留状態を改善するという介入が行われています。ナトリウム摂取制限は血圧の低下にもつながり、心臓の負担を軽くすることも期待できると考えられています。でも実際には死亡率を上げる可能性が高いのです。人体にとってナトリウムは重要ですし、その調整は体が行ってくれます。

世の中も夏になると、水分補給だけでなく塩分補給が大切、なんてことを言い始めるのに、普段は塩分の摂り過ぎは不健康だと矛盾したことを言っています。非常に低塩分の食事をすると人間はどうなるのでしょう。

今回の研究では40歳前後の29人のボランティアに等カロリーの低塩分(ナトリウム460mg/日、食塩として1.17g)または標準塩分食(ナトリウム4600mg/日、食塩として11.68g)を1週間摂ってもらいました。(図は原文より)

上の図は心血管疾患の危険因子によって低リスク、中リスク、高リスクに分けたときのそれぞれの特徴です。高リスクでは腹部肥満で高インスリン血症で、中性脂肪も高く、HDLが低い状態でした。

上の図は左側が低塩分食、右が標準塩分食を摂った時の血漿レニン活性と血漿アルドステロン濃度です。白いバーが低リスク、黒いバーが高リスク群です。レニンアンギオテンシンアルドステロン系は血圧上昇を起こします。明らかに低塩分食の方がレニンもアルドステロンも非常に高いことがわかります。さらに高リスクの方がその程度が非常に大きいのがわかります。

上の図はそれぞれのリスクの、2つの食事での様々なパラメータを示しています。

高リスクでは、平均血圧は減塩食と標準塩分食の方が有意に高く、空腹時インスリンは標準塩分食では 15.9μU/mLでしたが、低塩食では26.3μU/mLと非常に高くなりました。同様にインスリンの曲線下面積も減塩分食の方が有意に高くなりました。中性脂肪は標準塩分食で164 mg/dLが減塩分食では197 mg/dLと高くなりました。

上の図は低リスクと高リスクの群において、減塩食と標準塩分食を摂った時のそれぞれのパラメータの差を示しています。低リスクでは低塩分食を摂る方がレニン、アルドステロン、インスリン曲線下面積が有意に増加し、空腹時インスリンも増加の傾向を認めました。

高リスクは先ほども書いたように、平均血圧、レニン、アルドステロン、空腹時インスリン、インスリン曲線下面積、中性脂肪が大きく増加します。

つまり、腹部肥満や高インスリン血症に関連する心血管系のリスクの高い人に、強く塩分制限をすると血圧が上がったり、中性脂肪が上がったり、インスリン抵抗性が増加したりとさらに危険が増加する可能性があるのです。塩分制限は逆効果です。

インスリンはナトリウムを保持します。インスリンの低下はナトリウムの排泄を増やします。人体にとって重要なナトリウムの摂取量が少ないとインスリン分泌を増やしてナトリウムが排泄されないようにしているのかもしれません。

ここでも食事に対する推奨と病気のマッチポンプが存在しています。塩分制限が健康的という洗脳は広く行き渡っており、多くの人が信じています。しかしそれは必要がないばかりか、逆にインスリン抵抗性を増加させてしまいます。糖質過剰摂取により起こることを塩分のせいにしたいのでしょう。

天然の良質な塩をしっかり摂取しましょう。

 

「Renin and aldosterone are higher and the hyperinsulinemic effect of salt restriction greater in subjects with risk factors clustering」

「危険因子が集中している被験者ではレニンとアルドステロンが高く、塩分制限による高インスリン血症の影響がより大きい」(原文はここ

4 thoughts on “心血管疾患リスクが高いほど塩分制限をしてはいけない

  1. シンプルな結論:人体にとってナトリウムは重要ですし、その調整は体が行ってくれます。
    これ以上でも以下でもないと、思うのですが塩分制限推進派は何がしたいのでしょう?

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      糖質過剰摂取で人間の本来のメカニズムが崩れ、様々な弊害が起きていると思います。

  2. 清水先生、いつもありがとうございます。

    糖質制限を始めてから丸10年になります。

    10年前、心筋梗塞(当時62才)で3週間入院しましたが、もうその期間内で江部先生のブログを読んで糖質過剰摂取が原因だと納得していました。と云うのも通勤電車の中でもあめ玉を舐めていたぐらいの糖質依存症でしたので。

    入院時、循環器の先生が上手に心臓を描かれて、ステントの位置(3ヵ所)を示されました。そして「1/3は言い過ぎでしょうか1/4は壊死ています。もう1ヶ所は血管の分岐近くにありますので、ここはバイパスしかありません。」と脅されて(?)いますが、退院してからずうっと減塩などありません。

    退院してから直ぐに糖質制限を始め、現在も毎日2食 、自分で作ります。
    糖質は基本0gです。実際は10gはあるとは思います。カロリー計算もありません。
    血圧は若い頃から今でも低血圧ぎみですので減塩もありません。
    n=1ですが、血圧と塩分がリンクしているとはとても思えません。

    とにかく、たった糖質制限をするだけで、まさかこんなに元気で快適に10年間過ごせるなど予想だにしていませんでしたので、これからも継続して行くたけです。

    1. 太田さん、コメントありがとうございます。

      貴重な情報ありがとうございます。
      人間の初期設定を無視して塩分制限を続けると、恐らく様々な症状が出ると思います。

      「たった糖質制限をするだけで、まさかこんなに元気で快適に10年間過ごせるなど予想だにしていませんでした」素晴らしい経験だと思います。
      しかし、多くの人は依存から抜け出られなく、また巷の専門家を信じてしまい糖質過剰摂取を続けているのが現状です。
      糖質制限をするだけで、様々なことが得られるのに・・・

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