PPI(プロトンポンプ阻害薬)は副作用のオンパレードです。(オンパレードという表現が古臭いかな?)
以前の記事「PPI(プロトンポンプ阻害薬)は難聴を増加させる」では、PPIでは難聴が制酸薬のH2ブロッカーと比較すると何らかの聴覚障害が起こる可能性が11.64倍であることを書きました。
今回は末梢前庭障害である良性発作性頭位めまい症 (BPPV)とPPIの関連です。対象は34,441人のBPPVの患者で、マッチングした対照と比較しています。平均年齢は61.9歳です。(図は原文より、表は原文より改変)
特徴 | オッズ比 (95% 信頼区間) |
---|---|
PPI使用者 | |
過去のPPI | 1.76 (1.64–1.89) |
現在のPPI | 3.57 (3.33–3.83) |
PPIの期間 | |
1日以上30日未満 | 1.95 (1.81–2.10) |
30日以上365日未満 | 2.88 (2.68–3.10) |
365日以上 | 3.45 (3.19–3.73) |
過去にPPIを使用していた人でも良性発作性頭位めまい症 (BPPV)の可能性は1.76倍で、現在のPPI使用者は3.57倍でした。
PPIの使用期間が長いほどめまいを起こす可能性が高いようです。
上の図は現在のPPI使用者の様々な条件による違いですが、どれもめまいを起こす可能性が高くなっています。
上の図は365日以上PPIを使用している人のめまいの可能性です。その前の図と同様に様々な条件でめまいの可能性が高くなっています。
PPIで難聴やめまいのリスクが高くなるということは、PPIが何らかの内耳への障害をもたらしている可能性があります。PPIによる腸内細菌の変化が関連しているのかもしれませんし、PPIによる血流障害が関連しているのかもしれません。また胃酸分泌が強く抑制されるために、必要な様々な栄養素の吸収低下が関係している可能性もあるでしょう。
もちろん、めまいとPPIを必要とする疾患(例えば逆流性食道炎)の原因が一緒である可能性も十分に考えられます。つまり糖質過剰摂取が原因でどちらも起きているので、関連が認められる可能性もあります。(「めまいも糖質過剰症候群である その1」「その2」参照)ただ今回の研究が示すように、PPI使用期間が長くなるほど良性発作性頭位めまい症 (BPPV)を起こしやすくなることや、2型糖尿病患者を対象にした研究(ここ参照)でも難聴や耳鳴りがPPIによって起こりやすくなるという結果より、やはりPPIそのものの有害性が強いでしょう。
いずれにしても、不必要なPPIはすぐにやめるべきです。しかし、なかなかやめられないカラクリがあるのが様々な薬の罠です。(「PPI(プロトンポンプ阻害薬)の暗黒面 その1 薬を止められなくする仕組み」参照)
薬に頼る前にまずは糖質制限です。
「Association between Benign Paroxysmal Positional Vertigo and Previous Proton Pump Inhibitor Use: A Nested Case-Control Study Using a National Health Screening Cohort」
「良性発作性頭位めまい症とプロトンポンプ阻害剤の過去の使用との関連性:国民健康診断コホートを使用したネステッドケースコントロール研究」(原文はここ)
薬で様々症状をコントロールし、治ったと思えば別の症状、それが治ればまた次の、、、、
医療は現代の錬金術でしょうか。