いまだに世の中では、低コレステロールや低脂肪が健康的と考えられているのと同様に、塩分制限も健康的と考えられています。本当に塩分制限が体に良いことであれば、様々なパラメータが良い方向に変化してもおかしくないでしょう。
今回の研究では、肥満ではない(平均BMI26.1)、未治療の高血圧の人41人(平均年齢53.5歳)に厳密に管理された食事を摂ってもらいました。最初の1週間はナトリウム160mmol/日、食塩として9.4gのコントロールの食事を摂ってもらい、続く3週間は低塩分食(ナトリウム60mmol/日、食塩として3.5g)を摂ってもらいました。一晩の絶食期間後および脂肪の豊富な試験食の後に採血しました。食事が順守できているかどうかは、尿中のナトリウム排泄で確認されています。(図は原文より)
上の図は1週間のコントロール食および3週間の塩分制限食を行った後のデータです。収縮期血圧は8mmHg、拡張期血圧は4mmHg、塩分制限食の方が低くはなっています。
しかし塩分制限の方はアルドステロン、レニン活性、空腹時インスリン、インスリン抵抗性を表すHOAM-IRがどれも有意に高くなっています。
上の図は脂肪の豊富な試験食を摂ったときの中性脂肪値の推移を示しています。■はコントロール食、□は塩分制限食です。塩分制限をした方が食後の中性脂肪の上昇が大きくなっています。
上の図は、空腹時と試験食を摂ったのときの曲線下面積を示しています。コントロール(CD)と比較して塩分制限食(LSI)で空腹時の中性脂肪、および食後の中性脂肪の曲線下面積が有意に高くなっています。
上の図は炎症や血栓に関わるパラメータです。空腹時のCRP、IL-6、TNF-αは塩分制限の方が有意に高くなっていました。
つまり、塩分制限をしてしまうと、ちょっとは血圧が下がるかもしれませんが、そのかわりに、中性脂肪が増加し、空腹時インスリンやインスリン抵抗性が増加し、炎症マーカーが高くなってしまいます。
塩分制限で高血圧の薬をやめられる人はまずいません。逆に様々な不利益な反応が起きてしまいます。良質な塩をたっぷりと摂るべきです。特に糖質制限をしている場合、おしっこで排泄されやすくなるので、塩分制限は全く不要であるばかりか、積極的に良質な塩を摂った方が良いでしょう。
「Dietary salt restriction increases plasma lipoprotein and inflammatory marker concentrations in hypertensive patients」
「食塩制限は高血圧患者の血漿リポタンパク質と炎症マーカー濃度を増加させる」(原文はここ)
意識高いと思われる方々も、
相変わらず
塩分と脂肪は敵視。
どうぞご自由に、
という感じですが。
清水先生、こんばんは。
塩分が高血圧の原因と言われているのは、塩分により体内、血管内の水分が多くなるからでしょうか?
でも、塩分制限で高血圧が良くなったという話を聞いたことがないですね。
これまでの常識はいろいろと疑う必要性がありますね。
じょんさん、コメントありがとうございます。
循環血液量は増減しますが、塩分を摂ったからといって、ずっと血液が増えるとは思えません。
ホメオスタシスがあるので、すぐに落ち着くでしょう。
そして、健康な動脈には弾力がありますし、血液の約70%は静脈に存在しているので、ちょっと血液が増えても、高血圧になるほど血圧が上がるとは思えません。
いつも勉強させていただいています、ありがとうございます。
このレビューにもあるように私も減塩食はインスリン抵抗性を増大させると考えています。
https://journalofmetabolichealth.org/index.php/jmh/article/view/78/242
だだ、人類は昔0.5gほどしか食塩を摂っていなっかったようです。
糖質制限食であり、その量で体は最適化されているはずですので、この点が解せません。数千年で、ナトリウム代謝が変化するとは考えにくいです。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10490134/
この疑問について、なにかアドバイスいただけたら幸いです。
T.Mさん、コメントありがとうございます。
人類の塩分摂取量がどれほどだったかはよくわかりません。
この件については私は答えを持っていません。
清水先生、質問に答えてくださり感謝申し上げます。