女性は生理(月経)中に血糖値の変動が変化しています。糖尿病の方では自分で測定して知っている人もでしょう。また、生理周期によって食欲や体重さえも変化することもあるでしょう。
それはインスリンの感受性、特に脳のインスリン感受性の変化が起きているのかもしれません。
今回の研究では脳のインスリン抵抗性と生理の周期との関連を調べています。
黄体期中のインスリン感受性の低下を示します。黄体期というのは、排卵後にプロゲステロンが多く分泌されて、受精卵が着床しやすいように調整をする時期です。 この黄体期は生理の後の排卵後、次の生理前の時期にあたります。
生殖は非常に複雑で、エネルギー的にも多くのエネルギーを必要とするでしょう。したがって、生殖が行われるためには、排卵、妊娠、授乳に十分なエネルギー貯蔵が必要です。生殖に利用可能なエネルギーを得るために、生理の周期とそれに対応する代謝変化は、当然備わっているであろう適応メカニズムです。
今回の研究では鼻のインスリンスプレーを使用して実験しています。経鼻インスリン投与は、人間の脳におけるインスリン作用を研究するために使用されているようです。対象は正常体重の健康な女性11人です。高インスリン血症 – 正常血糖クランプ法でインスリン感受性を調べています。そして鼻インスリンスプレーとプラセボでインスリン感受性を卵胞期と黄体期での違いを分析しました。(図は原文より)
上の図のAが卵胞期でBが黄体期です。鼻インスリン(黒丸)または鼻プラセボ(白丸)の投与後のグルコース注入速度の変化を示しています。そうすると卵胞期のみ鼻のインスリンスプレーでインスリン感受性が増加し、グルコース注入量が増加しました。しかし黄体期ではそれが認められませんでした。
上の図bは卵胞期(左)および黄体期(右)における、投与前から鼻インスリン投与後30分までの視床下部における視床下部脳血流の変化を示しています。卵胞期では、鼻インスリンは視床下部の血流の有意な減少を誘導しましたが、この効果は黄体期では存在しませんでした。視床下部のインスリンによる血流低下は末梢のインスリン感受性を増加させるようです。(「肥満の人の脳のインスリン抵抗性」参照)
黄体期には視床下部の反応性の低下、つまりインスリン抵抗性が増加しています。それが末梢のインスリン抵抗性の増加にもつながっている可能性があります。
つまり、脳のインスリン感受性は月経周期の卵胞期でより高く、脳のインスリン抵抗性が黄体期における全身のインスリン抵抗性に寄与する可能性があると示唆しているのです。
視床下部は全身の代謝、そして食欲も調整します。糖質過剰摂取ですでに脳のインスリン抵抗性が起きている場合、以前の記事「脳のインスリン抵抗性は体重減少が起きにくいかもしれない」で書いたように、体重減少が起きにくいだけでなく、生殖にも不利になる可能性があります。
生理周期による食欲や体重の変化などは人間の女性に備わった当然のメカニズムです。人間のインスリン抵抗性は一定ではありません。黄体期では末梢のインスリン抵抗性が増加しますが、それは脳のインスリン抵抗性からきているのかもしれません。黄体期では特に血糖値の上昇に気を付けてください。
「Brain insulin action on peripheral insulin sensitivity in women depends on menstrual cycle phase」
「女性の末梢インスリン感受性に対する脳インスリンの作用は月経周期の段階に依存する」(原文はここ)
代謝や食欲、それらに伴う体重変動
も糖質(過剰)摂取で
乱されるのですね。
特に女性は甘いが欠かせない
人が多いのも何か関係
あるのでしょうか?
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
生殖の観点から見れば、恐らく甘いものが欠かせないのは関連があると思います。
エネルギーを溜め込んだ方が有利ですから。
しかし、現代ほど溜め込む必要はないでしょう。