症状が無くても血糖値が高いと冠動脈のプラークが増加する

心臓の専門家はLDLコレステロールに固執しています。一部の人はコレステロールは関係ないと気づいているでしょうが、学会やガイドラインには逆らえないのでしょう。

今回の研究では、耐糖能の状態、つまり正常血糖または前糖尿病または糖尿病という血糖のカテゴリーの違いと冠動脈のプラークや狭窄との関連を分析しています。その結果は見事なまでに耐糖能の状態と冠動脈疾患の関係を示しています。

今回の研究では、アテローム性動脈硬化性心血管疾患のない無症候性の成人2,352人(平均年齢53歳、女性49.5%)が対象で、このうち、正常血糖、前糖尿病、糖尿病はそれぞれ63%、30%、7%でした。冠動脈CT血管造影と冠動脈の石灰化スコア(CAC)を評価しました。⾎糖カテゴリーの定義は正常⾎糖<100mg/dL、前糖尿病100〜125 mg/dL、糖尿病≥126mg/dLです。(図は原文より、表は原文より改変)

上の図は左側が10年間の冠動脈アテローム性動脈硬化性心血管疾患のリスク(<5%、≥5%〜<7.5%、 ≥7.5%〜<20%、≥20%)、右側が CAC スコアカテゴリ (0、>0 〜 99、≥100)の分布です。それぞれの図の左から正常血糖、前糖尿病、糖尿病です。予想通り、正常血糖よりも耐糖能が悪いほどリスクやCACスコアが高い割合が多くなっています。ただ、糖尿病でもCACスコアが0は42.9%もいます。

有病率 Model 2
OR (95% CI) P value
あらゆる冠動脈プラーク
 正常血糖 631 (42.5%) 1.00
 前糖尿病 408 (58.0%) 1.30 (1.05–1.60) 0.02
 糖尿病 112 (68.7%) 1.75 (1.17–2.61) 0.006
 1-SDあたりのHbA1cの増加 1.16 (1.05–1.30) 0.006
⽯灰化していない冠動脈プラーク
 正常血糖 443 (29.8%) 1.00
 前糖尿病 315 (44.7%) 1.47 (1.19–1.81) <0.001
 糖尿病 91 (55.8%) 1.99 (1.38–2.87) <0.001
 1-SDあたりのHbA1cの増加 1.24 (1.12–1.37) <0.001
1つ以上の高リスクプラーク
 正常血糖 73 (4.9%) 1.00
 前糖尿病 67 (9.5%) 1.65 (1.14–2.39) 0.008
 糖尿病 24 (14.7%) 2.53 (1.48–4.33) 0.001
 1-SDあたりのHbA1cの増加 1.22 (1.08–1.37) 0.001
最⼤狭窄≥50%
 正常血糖 62 (4.2%) 1.00
 前糖尿病 49 (7.0%) 1.20 (0.80–1.82) 0.38
 糖尿病 29 (17.8%) 3.01 (1.79–5.08) <0.001
 1-SDあたりのHbA1cの増加 1.31 (1.17–1.48) <0.001
最⼤狭窄≥70%
 正常血糖 16 (1.1%) 1.00
 前糖尿病 20 (2.8%) 1.77 (0.88–3.59) 0.11
 糖尿病 7 (4.4%) 2.84 (1.07–7.51) 0.04
 1-SDあたりのHbA1cの増加 1.41 (1.20–1.65) <0.001

上の表のようにあらゆる冠動脈プラークは正常血糖でも42.5%で認められましたが、プラークがある可能性は正常血糖と比較して、前糖尿病で1.30倍、糖尿病で1.75倍でした。高リスクのプラークも前糖尿病で1.65倍、糖尿病で2.53倍。最大50%以上狭窄が存在する可能性は糖尿病で3.01倍、70%以上だと2.84倍でした。上の表のモデルはコレステロールやスタチンの使用についても調整されています。

上の図は、⾎糖カテゴリーごとの冠動脈セグメントにおけるアテローム性動脈硬化性プラークの有病率です。8番の近位左前下⾏枝(LAD)が一番プラーク発生率が高く、正常血糖でも31.4%ですが、糖尿病になると49.7%にもなります。見事なまでに耐糖能の悪化に伴い、様々な部位のプラーク発生率が増加しています。6番の左冠動脈主幹部(LMT)も糖尿病では22.7%です。この部位の狭窄は広範囲の心筋虚血を引き起こすため、特に危険であり、突然死の原因となり得る部位なのです。糖尿病ではプラークの30%の有病率の部位が4か所にもなります。

上の図は、⾎糖カテゴリーごとのアテローム性動脈硬化性プラークのある冠状動脈セグメントの数の分布です。薄い色は正常血糖、青が前糖尿病、濃い紺色が糖尿病です。正常血糖では54.7%がプラーク数0ですが、糖尿病ではプラーク数0は26.1%しかいません。逆に糖尿病ではプラーク数6個以上が19.9%にもなります。

CAC スコアによる⾎糖カテゴリーごとの様々な冠動脈プラークの有病率
正常血糖 前糖尿病 糖尿病
CACスコア=0
 あらゆるプラーク 124 (13.1%) 78 (21.7%) 21 (30.0%)
 あらゆる非石灰化プラーク 117 (12.4%) 73 (20.3%) 20 (28.6%)
 あらゆる1つ以上の高リスクプラーク 18 (1.9%) 10 (2.8%) 3 (4.3%)
 狭窄≥50% 6 (0.6%) 3 (0.8%) 2 (2.9%)
 狭窄 ≥70% 3 (0.3%) 0 (0%) 0 (0%)
CACスコア>0–99
 あらゆるプラーク 344 (91.0%) 218 (93.6%) 55 (98.2%)
 あらゆる非石灰化プラーク 204 (54.0%) 152 (65.2%) 39 (69.6%)
 あらゆる1つ以上の高リスクプラーク 30 (7.9%) 32 (13.7%) 11 (19.6%)
 狭窄≥50% 13 (3.4%) 14 (6.0%) 5 (8.9%)
 狭窄 ≥70% 1 (0.2%) 4 (1.7%) 1 (1.8%)
CACスコア≥100
 あらゆるプラーク 163 (99.4%) 112 (100%) 36 (97.3%)
 あらゆる非石灰化プラーク 122 (74.4%) 90 (80.4%) 32 (86.5%)
 あらゆる1つ以上の高リスクプラーク 25 (15.2%) 25 (22.3%) 10 (27.0%)
 狭窄 ≥50% 43 (26.2%) 32 (28.6%) 22 (59.5%)
 狭窄 ≥70% 12 (7.1%) 16 (14.3%) 6 (16.2%)

上の表はCACスコアのカテゴリーごとのプラークや狭窄の状態です。CACスコア0であっても糖尿病だとあらゆるプラークは30%です。50%以上の狭窄も2.9%ですね。しかし、CACスコアが0を超えてしまう、特に100を超えてしまうと正常血糖でも様々なプラークが増加します。そして耐糖能が悪くなるにつれて有病率も上がっています。

もちろん、ベースラインで糖尿病の人の方が正常血糖よりもLDLコレステロールが高い人が多くなっていました。正常血糖では55.6%、前糖尿病で71.9%、糖尿病で71.2%です。しかし、LDLコレステロールの平均値は糖尿病の方が低く、正常血糖で123、前糖尿病で125、糖尿病で114です。スタチン使用も差があり正常血糖で16.1%、前糖尿病で30.5%、糖尿病で41.7%です。

LDLコレステロール信者はLDLコレステロールが高い人の割合が糖尿病で多いから、このような結果になっているというかもしれません。しかし、糖尿病では断然多くのスタチン使用割合なのに、冠動脈の病変は防げていません。

前糖尿病であっても正常血糖よりも非常にリスクの高い状態です。糖尿病か糖尿病でないかという単に病名による違いではなく、血糖値の変動、耐糖能はグラデーションで、空腹時血糖や食後高血糖や高インスリン血症が増加するにつれてプラークは増加するでしょう。

心血管疾患は糖質過剰症候群です。症状が無くても糖質制限で冠動脈病変が起こらないようにしましょう。

 

「Coronary Atherosclerosis Across the Glycemic Spectrum Among Asymptomatic Adults: The Miami Heart Study at Baptist Health South Florida」

「無症候性成人における血糖スペクトル全体にわたる冠動脈アテローム性動脈硬化症:南フロリダ州バプティスト・ヘルスにおけるマイアミ心臓研究」(原文はここ

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