高血圧の薬で血圧が上昇することがある

高血圧で血圧を下げる薬を飲んだ時、まさかその薬で血圧が上昇することがあるとは思っていないでしょう。しかし、現実には血圧を下げると思って飲んだ薬で血圧が上がることもあります。

今回の研究では、高血圧の薬として一般的な利尿薬、カルシウムチャネル遮断薬、β遮断薬またはアンジオテンシン変換酵素阻害薬のいずれかを投与された、その前に治療を受けていない945人が対象です。(図は原文より)

上の図は左からアンジオテンシン変換酵素阻害薬、β遮断薬、利尿薬、カルシウムチャネル遮断薬です。SBPは収縮期血圧、DBPは拡張期血圧です。平均するとどの高血圧の薬も収縮期血圧を10mmHg以上下げ、拡張期血圧6~9mmHg下げてくれます。

しかし、変化の割合を見ると、アンジオテンシン変換酵素阻害薬では10%、β遮断薬で12%、利尿薬5%、カルシウムチャネル遮断薬7%は収縮期血圧が10mmHg上昇するのです。血圧が10mmHg以上低下するのは60%前後でしかありません。

同様に拡張期血圧もアンジオテンシン変換酵素阻害薬では12%、β遮断薬で20%、利尿薬6%、カルシウムチャネル遮断薬7%は5mmHg上昇してしまいます。

上の図は血漿レニン活性が低、中、高というレベル別のそれぞれの薬による、血圧が10mmHg以上上昇する人の割合です。図のaの利尿薬とカルシウムチャネル遮断薬では、利尿薬はレニン活性に関わらず血圧の上昇する割合は少なく、カルシウムチャネル遮断薬ではレニン活性が高い方が血圧が上昇する割合が少し高くなっています。

図のbのβ遮断薬とアンジオテンシン変換酵素阻害薬ではレニン活性が低いほど血圧が高くなる割合が高くなっていました。全体的に見れば図のbのレニンを抑制するβ遮断薬とアンジオテンシン変換酵素阻害薬の方が血圧が上がる割合が高くなります。

上の図は、血漿レニン活性が低、中、高で収縮期血圧が10mmHg以上増加する、または10mmHg未満しか低下しない可能性を示しています。レニン活性が低い場合血圧が上昇する可能性は4.0倍で、中程度のレニン活性でも3.9倍でした。同様に10未満しか低下しない可能性も低レニン活性で3.5倍、中レニン活性で1.7倍、高レニン活性で0.5倍でした。

上の図のaは薬での治療で血圧が160mmHg以上になる割合と、そのbは血圧が130mmHg未満になる割合です。それぞれの図の左から順に、低レニン活性、中レニン活性、高レニン活性で黄色いバーは利尿薬とカルシウムチャネル遮断薬、青いバーはβ遮断薬とアンジオテンシン変換酵素阻害薬です。低レニン活性でβ遮断薬とアンジオテンシン変換酵素阻害薬を使うとなんと35%以上が血圧160mmHg以上になってしまいます。利尿薬とカルシウムチャネル遮断薬ではレニン活性に関わらず、10数%が160以上です。逆にβ遮断薬とアンジオテンシン変換酵素阻害薬はレニン活性が高い方が130未満の血圧になる割合が高くなります。

高血圧の患者で血圧の薬が処方されたにも関わらず、血圧が下がらない場合「ちゃんと薬飲まなかったのでは?」と患者のせいにされたりするでしょう。またはまだまだ薬が足りないと考えられて、さらに薬が増えてしまうかもしれません。

今回の研究のように、レニン活性の違いが薬の反応に大きく影響しているのです。またはレニン活性に関わらず一定割合で血圧が上昇します。例えば利尿薬は塩分制限と同様にナトリウムが低下するために、腎臓でのレニン分泌の反応性増加が起こって血圧が上昇する可能性があります。

恐らく、血圧制御は単純なものではなく、血圧制御に対するナトリウム量とレニン – アンジオテンシン-アルドステロン系の血管収縮の寄与など様々な要因を考える必要があるのでしょう。そして驚くべきことに血圧が10mmHg以上低下するのは60%前後しかいないのです。

そして、さらに高血圧には塩分制限が必要という間違ったアドバイスも血圧が下がりにくいことに寄与する可能性もあります。

高血圧も糖質過剰症候群です。糖質制限で血圧が正常化し、血圧の薬を止めることができた人は大勢います。

血圧が自分自身の体の中で自動制御できなくなるのは、多くは食事が間違っているからでしょう。数値を正常化することが治療ではありません。自動制御のはずの血圧を薬でコントロールしようとすると他の悪影響もあります。それは次回以降で。

まずは糖質制限をしましょう。

「Pressor Responses to Antihypertensive Drug Types」

「降圧薬の種類に対する昇圧反応」(原文はここ

2 thoughts on “高血圧の薬で血圧が上昇することがある

  1. 「まずは糖質制限をしましょう。」
    が最適解。

    しかし、降圧剤は今や「国民薬」
    的になってしまってます。

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      血圧が正常化すれば、健康になった気になりますからね。

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