日本人にも肥満が増えていると思いますが、アメリカ人は本当に肥満が多いです。アメリカにおける心血管代謝の健康状態はどのようになっているでしょうか?
今回の研究では、1999年から2018年までの心血管代謝の最適な健康状態に関するアメリカの傾向を調査しています。
心臓代謝成分 | 最適 | 中間 | 不良 |
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肥満症 | BMI <25かつ腹囲 ≤88 cm (女性)/腹囲≤102 cm (男性) | BMI 25 ~ 30および 腹囲≤88 cm (女性)/腹囲≤102 cm (男性) | BMI >30 または腹囲>88 cm (女性)/腹囲>102 cm (男性) |
血糖値 | 空腹時血糖<100 mg/dL かつ HbA 1c <5.7% かつ糖尿病薬を服用していない | 空腹時血糖100 ~ 125 mg/dL または HbA 1c 5.7% ~ 6.4% または空腹時血糖 <100 mg/dL かつ HbA 1c <5.7% かつ糖尿病薬を服用している | 空腹時血糖≥126 mg/dL または HbA 1c ≥6.5% |
血中脂質 | 総コレステロール:HDL <3.5:1、かつ脂質低下薬を服用していない | 総コレステロール:HDL 3.5 ~ 5:1 または TC:HDL <3.5:1 かつ脂質低下薬を服用している | 総コレステロール:HDL >5:1 |
血圧 | 収縮期<120かつ拡張期 <80かつ血圧降下薬を服用していない | (収縮期 120 ~ 139 または拡張期 80 ~ 89) または (収縮期 <120 かつ拡張期 <80 かつ血圧降下薬を服用中) | 収縮期 ≥140 または 拡張期 ≥90 |
心血管疾患歴 | どれもなし | 狭心症のみ | 冠動脈疾患、心筋梗塞、心不全、脳卒中のうちの1つ以上 |
脂質についてはちょっと疑問ですが、まあ見ていきましょう。
上の図はアメリカの成人の心臓代謝が最適な状態にある人の割合です。Aは年代別です。20歳から34歳では何とか15%前後ですが、全体としては10%を下回っています。5つの心臓代謝成分すべての最適なレベルによって定義される心臓代謝の最適な健康状態にあったのは、米国成人のわずか6.8%でした。65歳以上では底辺を彷徨っているようで、たった0.4%です。人種(B)、学歴(C)、収入(D)である程度の違いはあるものの、やはり全体として非常に割合が低いです。
上の図は、人種別の5つの心臓代謝成分のうちの最適である数の平均数(A)および不良数の平均数(B)です。最適の平均数は1999年-2000年の2.5から2017年-2018年の2.2に減少し、不良の平均数は1.1から1.2でした。
上の図は、5つの心臓代謝成分の傾向です。青が最適、黒が中間、赤が不良です。肥満、血糖、血中脂質、血圧、心血管疾患の既往の順です。肥満や血糖値に関しては年々、不良がドンドン増加し、最適が減少するという傾向が認められます。最適レベルの肥満の割合は33.8%から24.0% に減少しました、最適な血糖値は59.4%から 36.9%に減少しました。肥満の不良レベルは47.7%から61.9%に増加し、不良の血糖値は8.6% から13.7%に増加しました。
一方、血中脂質は最適レベルの割合が29.9%から37.0%に増加し、不良レベルは28.3%から14.7%に低下しました。これは主に、総コレステロールおよびLDLコレステロールの着実な低下によるものでした。しかし、糖質を摂るとコレステロールが低下することを考えると、この傾向が本当に良い方向に向かっている傾向なのかは疑問です。その証拠にHDLコレステロールは変化していません。脂質を評価するのであれば本当は中性脂肪とHDLコレステロールでしょう。
血圧はそれほど大きな変動はありません。これも高齢になるにつれ最適な血圧は上昇するはずなので、ちょっと疑問ではあります。
心血管疾患歴は変化ありません。
1999年-2000年から2017年-2018年にかけて、アメリカの心臓代謝の健康状態は悪化しており、最適な心臓代謝の健康状態にある成人はわずか6.8%です。もちろん年齢、性別、学歴、人種による差もありますが、全体的に悪すぎます。
以前の記事「アメリカではメタボではない人の方が珍しい」で書いたように、アメリカの成人ではたった12%だけが代謝的に健康でした。今回は定義が違うので、一概に比較できませんが、代謝的に健康なのは10%前後でしょう。「アメリカの若者の5分の1から4分の1はすでに糖尿病予備軍となっている」で書いたように、若いときから悲惨な状態です。
これは恐らく、食事ガイドラインが間違っているというのが大きな要因です。「アメリカの食事ガイドライン2020の諮問委員会のメンバーの利益相反」で書いたように、医療の世界だけでなく、食事や栄養についても企業がコントロールしている状態でしょう。現代は、企業が人の健康の基準、治療の基準を決めるようになってしまっています。本当に良い方向に導いてくれるなら問題はないのですが、良い方向に行ってしまうと企業は儲かりません。企業の利益第一ですので、人間はどんどん不健康にされてしまっています。
自分を守るために、自分で情報を集めて、自分で判断しましょう。
「Trends and Disparities in Cardiometabolic Health Among U.S. Adults, 1999-2018」
「アメリカの成人における心臓代謝の健康状態の傾向と格差、1999年から2018年」(原文はここ)
ある本によると多くの生物(菌類から昆虫、人類に至るまで)の食欲はタンパク質を摂取することにより満たされると記されています。
そしてアメリカは超加工食品の消費大国であり、超加工食品はカロリー単価の安い炭水化物を中心に構成されており、低タンパクのため食欲が満たされない。したがって過食して肥満すると言う事のようです。
そもそも超加工食品自体が経営戦略的に過食して売れるように設計されているので、肥満するのも無理はないでしょう。食品メーカーの盛大なロビー活動の結果、食事ガイドラインにそれらの食品の流通を阻害する内容が盛り込まれることはないでしょう。
西村典彦さん、コメントありがとうございます。
糖質を多く含む食品自体、糖質をエネルギー源にするので、すぐにエネルギー切れを起こし、過食を招きます。
食事ガイドラインに大きな影響を与える食品産業と医療産業はつながっていて、お互いがWIN-WINなんでしょう。