運動の質とHDLコレステロール

運動は健康的と考えられています。しかし、一概に運動と言っても様々な種類、競技が存在します。運動でHDLコレステロールが増加することがありますが、運動の質はHDLに影響はあるのでしょうか?

今回の研究では、48人の活動性のない健康な女性(平均年齢20.4歳)を対象に、16週間の運動と、その後運動を止めて6週間後でどうなるかを調べています。運動しないコントロール群と有酸素運動群、筋トレ群、有酸素と筋トレ両方をするクロストレーニング群に分けました。食事は変えていません。(図は原文より)

上の図は体組成などのパラメータです。有酸素運動群だけ16週間後に体脂肪率が低下し、26.4%から22.9%になりました。しかし、運動を止めて6週経つと24.8%にまで戻りました。運動能としてのVO2max(最大酸素摂取量)は有酸素群だけ33.5から42.2まで増加しましたが、これも運動中止6週後で、33.6まで低下してしまいました。

一方筋トレ群で16週間後、上半身29%と下半身38%筋力を増加させました。運動中止して6週間後でもベースラインよりも上半身19%と下半身24%の筋力増加が維持されました。クロストレーニング群でも上半身19% 下半身25%の筋力増加があり、中止後6週間でもベースラインよりも上半身13%、下半身18%の筋力増加が維持されました。

有酸素運動の効果は運動中止で短期間で戻ってしまうので、継続が必要なようです。一方筋力はある程度休んでも維持されるようです。

上の図は脂質のパラメータ変化率です。左からコントロール、有酸素、筋トレ、クロストレーニング群です。棒グラフの中身は左から総コレステロール、中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロールです。16週間で有意な差があったのは、有酸素運動群の中性脂肪低下(14%)とHDLコレステロール(28%)増加だけでした。

上の図はこれも脂質パラメータの変化ですが、運動中止後を注目です。有酸素運動群(ATG)でせっかく16週後に改善したHDLコレステロールと中性脂肪値は運動中止で元に戻ってしまっています。

全体として体脂肪率とHDLコレステロールは相関関係があり、 HDLコレステロールの変動の40%が説明され、最大酸素摂取量 (VO2max)はHDLコレステロールの変動の23%を説明しました。

体脂肪率が最も減少し、VO2maxが最も増加する有酸素運動がHDLコレステロール増加には最も適しているようです。ただ、有酸素運動が有効と言っても、この研究のように体脂肪率が低下するほどの運動が必要でしょう。逆に言えば運動しなくても体脂肪率が低下すればHDLコレステロールも増加するかもしれません。糖質制限では運動しなくてもHDLの大きな増加が認められます。運動は健康のためですので、食事の改善と共に行う方が良いでしょう。

もちろんご存じのように、HDLコレステロールも増加すれば良いってもんじゃありません。LDLと同様にHDLも質が問題です。運動の質によってHDLの質は変わるのでしょうか?それについては次回以降で。

「Lipid and lipoprotein profiles, cardiovascular fitness, body composition, and diet during and after resistance, aerobic and combination training in young women」

「若い女性の脂質およびリポタンパク質のプロファイル、心血管フィットネス、体組成、レジスタンストレーニング中および後の食事、有酸素トレーニングおよびコンビネーショントレーニング」(原文はここ

One thought on “運動の質とHDLコレステロール

  1. 清水先生、いつも記事で勉強しています。

    先日の記事の汗もそうですが、運動は健康のためにいいですね。私は週に2-3回程度のジョギングをしていますが、気持ちがいいです。普段もできるだけ歩くようにしたり、階段の上り下りを意識しています。iPhoneのアプリで、1日で30-60階を上がっています。もしかしたら階段は膝に悪いかもしれないですが。

    やはり、食事と運動が大切ですね。

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