糖質制限の研究はどんどん増加しています。もちろん、糖質制限の「制限」の量、割合の定義が確定していないため、低炭水化物と言いながら実際には40%の炭水化物だということも珍しくありません。
そのことも踏まえて、今回の研究では様々な糖質制限の研究の体重減少に対する効果をメタ分析しました。
選ばれた研究はなんと110件の研究です。さすが現在最もエビデンスが豊富な食事法だと言われるわけです。ただ実際には我々が糖質制限と考えているようなものはそのうちの一部です。
18件(16%)の研究は超低炭水化物(ケトジェニック)食(総カロリーの10%以下または1日あたり20~50 g)を実施、19件(17%) の研究は低炭水化物食 (総カロリーの26%未満または50~ 130g/日) を実施しました。糖質制限として許されるのはここくらいまでです。
73件 (67%) の研究は中程度の炭水化物食 (総カロリーの26~45%) を実施しました。または130〜230 g/日)ですので、これらは糖質制限とは言えません。でも糖質摂取量との関連を分析するためには必要なので、このまま見ていきましょう。すべての研究は、BMIが25~44.6の過体重または肥満の参加者のみを対象に実施されました。(図は原文より)
上の図は、6か月の追跡調査での炭水化物の割合と体重減少の関係です。全部で101件の研究で、4,135人の分析です。炭水化物摂取量が10%減少するごとに体重が0.64kg 減少することが示されました。異常に少ないですね。肥満の人が糖質制限をしたら、1~2か月で10kgすぐに体重が減少するのに、そうなっていません。やはり食事はほとんどが自己申告ですし、自分で積極的に糖質制限を行うというよりも、やらされている感じがあるので、ちゃんと実施できていなかったのでしょうかね?
上の図の青い線は運動を併用し、緑の線はエネルギー制限(カロリー制限)を併用しています。全体と比較して少しはマシですが、それでも大した減少量になっていません。
上の図が6か月の体重減少量です。
下の図は12カ月の体重減少量です。
12か月で見ると、一番右の運動併用群が最も体重減少が少なくなっています。運動してお腹が空いて、申告しない食事を摂ってしまっているのでしょうかね?
ただし、よくある、糖質制限は6か月では効果が認められるけど、12か月では効果がほとんどなくなるみたいな研究がありますが、今回の結果はそれを否定するためにはちょっと役に立ちます。恐らくこれまでの最大のメタアナリシスですから。
上の図は12カ月の体重減少と炭水化物摂取割合の関係ですが、上から順に全体、カロリー制限併用、運動併用です。我々の糖質制限での糖質摂取割合10%前後だと12か月でも体重減少があることが示されています。
上の図は1年以上の場合を示しています。下の図はそれをグラフにしたものです。
せっかく12か月でも糖質制限は体重減少に効果があると言っていたのに、1年以上の結果は、1年までよりも体重減少が少なく、しかも炭水化物の割合が10%~25%では有意ではなくなっています。30%~40%では有意に体重減少(少ないですが)しています。そうすると、炭水化物の割合は30%が最も効果があるなんて言う結論になっちゃっています。アホか!
ちゃんと食事を制御できない研究を集めてしまうとこうなってしまいます。先ほども書きましたが、ほとんどの研究の参加者は、自らすすんで糖質制限を行ってはいないでしょう。研究でやらされているだけです。当然短い期間であればそれなりに頑張って食事制限を行うかもしれませんが1年とかそれ以上になれば、糖質依存の肥満の人が糖質摂取を我慢できるとは思えません。申告しないだけで食べているのでしょう。
この研究はこれまでで最大のメタアナリシスですが、メタアナリシスが最高のエビデンスレベルだと思わされているだけです。元のデータ、元の研究の質が悪ければ、どんなに数を集めても正確な分析はできません。このような研究はどうしてもリアルワールドとは異なります。どうしても長期的には糖質制限が効果が無いと言いたいのでしょう。
やはり、自分で試して、自分で感じることが最も信用できます。私は糖質制限で10年間も痩せたままですけどね。
炭水化物30%というと「ロカボ」に近いので、ロカボ推奨派が少しこの研究を引用してくるかもしれませんね。注意が必要です。
肥満は糖質過剰症候群です。
「Effect of carbohydrate restriction on body weight in overweight and obese adults: a systematic review and dose–response meta-analysis of 110 randomized controlled trials」
「過体重および肥満の成人の体重に対する炭水化物制限の影響:110件のランダム化対照試験の系統的レビューと用量反応メタ分析」(原文はここ)
肥満もそうですが、
糖質制限には図り知れない
健康効果があるので、
実践しない選択肢はありません。