糖質制限は人間とネズミで逆の効果をもたらす

ネズミさんの実験結果をそのまま人間に当てはめる人がいまだに多くいます。それが専門家と名乗る人だと一般の人は騙されてしまいます。(「まだネズミと人間の違いがわからないのでしょうか?」参照)

糖質制限は低炭水化物高脂質食になります。ご存じのように糖質制限は高脂質であるのに体重が減少します。一般的な認識とは真逆です。恐らく高脂質食が太る原因だとするのはマウスの実験の結果がそのまま人間に当てはめられているからだと思います。

今回の研究では、低炭水化物高脂肪食が人間とマウスの代謝に及ぼす効果を比べています。

人間の研究は、22人の太りすぎまたは肥満の人を対象に3週間糖質制限を行いました。カロリー(エネルギー)、脂質、タンパク質の摂取量に制限を課さずに、炭水化物摂取量は1日あたり50g未満とすることが推奨されました。

摂取エネルギーの10%より多い場合を中程度の低炭水化物食(MLCD)とし、10%以下の場合を超低炭水化物食(VLCD)としました。そして、参加者は10の質問からなる食べ物の好みに関するアンケートに回答しました。(図は原文より、表は原文より改変)

上の図は体重の変化、平均センサー血糖値 (MSG)、センサー血糖値の標準偏差 (SDSG)、変動係数 (CV)、および血糖変動の最大振幅(最高血糖値と最低血糖値の差) (LAGE) です。3週間で平均して、MLCDで2.41kg、VLCDで4.35kg体重が減少しました。当然平均血糖値や血糖変動の最大振幅などはVLCDの方が減少が大きくなりました。

上の図のAに示すように、糖質制限前ではMLCDグループでは脂質、タンパク質、炭水化物の割合は30.50%、19.68%、49.82%、VLCDグループでは31.27%、20.67%、48.05% でしたが、糖質制限中はMLCDグループでは55.15%、31.28%、13.57%になり、VLCDグループでは59.79%、32.89%、7.32 %になりました。

図のBのように、カロリー制限を課していないにもかかわらず、両グループで摂取エネルギー量は低下しました。

図のCのように、 13人は高炭水化物食品を好み、3 人は高脂質食品を好み、4 人は好みを示しませんでした。やはり人間は糖質を好む人が圧倒的に多いようです。

ではマウスではどうでしょうか?

chow diet(CD:穀物原料飼料)、カカオバターの脂肪を60%、70%、75%含んだ高脂質食 (HFD-C)、60%のラードを含んだ高脂質食 (HFD-L)をマウスに24週間与えました。8匹のマウスを食物選択テストを行いました。下の表が栄養素の含有量です。

 

Table S2. Formulations of diets
ProductCD60%HFD-C70%HFD-C75%HFD-C60%HFD-L
gmKcalgmKcalgmKcalgmKcalgmKcal
Protein2008002601040300120031012402601040
Carbohydrate67026802601040150600803202601040
Fat403603503150460414052046803503150
Ingredient
Casein200.00800.00262.001048.00301.301205.20310.471241.88258.001032.00
L-Cystine3.007.203.9315.723.9315.723.9315.723.8715.48
Corn Starch427.001708.00
Maltodextrin 10116.00464.00127.07508.2855.02220.0817.0368.12161.25645.00
Sucrose116.00464.00127.07508.2855.02220.0817.0368.1288.75355.01
Cellulose, BW20050.000.0065.500.0065.500.0065.500.0064.500.00
Soybean Oil40.00360.0052.40471.6052.40471.6052.40471.6032.25290.25
Lard316.052844.45
Cocoa Butter301.302711.70406.103654.90471.604244.40
Mineral Mix35.000.0045.850.0045.850.0045.850.0058.050.00
Vitamin Mix10.0040.0013.1052.4013.1052.4013.1052.4012.9051.60
Choline Bitartrate2.500.003.280.003.280.003.280.002.580.00
FD&C Blue Dye #10.050
Total1000.003850.001000.005240.001000.005940.001000.006240.001000.005240.00

上の表のようなエサを食べてマウスはどうなったかが、下の図です。

単純に、日毎に体重が増加しますが、最も体重増加が少ないのはCDです。脂質が約10%炭水化物は約70%のエサです。最も体重増加が大きいのが60%HFD-L、つまりラード60%のエサです。カカオバターの高脂質食だけを見ると、脂質が多くなり、炭水化物が少なくなる方が体重増加が多くなります。つまり、マウスは人間と逆で低炭水化物高脂質食で太るのです。

しかも興味深いことに、カカオバターのエサで見ると、脂質が多くなり、炭水化物が少なくなる方が空腹時血糖値、空腹時インスリン、HOMA-IRが高くなる傾向にあります。

 

HFD-C グループのマウスは、食事の脂質含有量が増加するにつれて、より多くのエネルギーを摂取しました。ラードを与えられたマウスは、カカオバターを与えられたマウスよりも多くのエネルギーを摂取しました。図のCのようにCDとHFD-Lを同時に与えた場合、マウスはほぼHFD-Lを消費しました(0.15g 対2.46g/日)。つまりマウスは明らかに糖質が多いエサ(CD)よりも 脂質の多いHFD(高脂質食)を好みました。

もちろん、種の違いがあっても、共通の代謝メカニズムもあるでしょう。しかし、このように人間とネズミさんでは全く食性が異なり、代謝も異なることも多いと思います。

専門家が何かエビデンスを持ち出してきたときには、それが人間の研究なのか、ネズミさんの研究なのかをまずは調べてみてください。ネズミさんの研究をあたかも人間のことのように説明する専門家は無視して構いません。最初から騙そうという意図がありますから。

 

「Opposite effects of low-carbohydrate high-fat diet on metabolism in humans and mice」

「低炭水化物高脂質食がヒトとマウスの代謝に及ぼす逆の効果」(原文はここ

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