睡眠薬による眠りは本当の睡眠ではないと思います。睡眠というよりは鎮静でしょう。だから、眠剤によって本来の睡眠中の人間の脳および体の働きや代謝が変化している可能性があるでしょう。
以前の記事「睡眠薬と死亡率およびがんとの関連」でも書いたように睡眠薬の使用は死亡率を高めます。今回は別の論文を見てみましょう。
今回の研究では、ノルウェーのホルダラン健康研究というもののデータを分析しています。21,826人が対象です。13~15年間の追跡期間中の死亡者総数は622人でした。(図は原文より、表は原文より改変)
完全に調整されたモデル | |
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睡眠薬 | |
睡眠薬の使用 | |
睡眠薬なし | 1 |
睡眠薬 | 1.97 (1.06–3.66) |
睡眠薬の使用頻度 | |
睡眠薬なし | 1 |
日常使用以外 | 1.08 (0.34–3.41) |
毎日の使用 | 2.87 (1.40–5.91) |
睡眠薬の種類 | |
睡眠薬なし | 1 |
Z薬(非ベンゾジアゼピン系睡眠薬) | 1.53 (0.67–3.48) |
ベンゾジアゼピン | 3.08 (1.25–7.58) |
上の表は睡眠薬の死亡リスクです。睡眠薬を使用していない人と比較して、睡眠薬を使用している人は1.97倍死亡リスクが高くなります。頻度としては、毎日使用すると2.89倍リスクが高くなります。睡眠薬の種類ではZ薬(非ベンゾジアゼピン系睡眠薬)は有意ではなく、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬では3.08倍リスクが高くなりました。
上の図は睡眠薬の種類と使用頻度別の生存率です。ベンゾジアゼピンの毎日の使用で生存率が最も大きく低下しています。
睡眠薬は前回の記事のように、がんのリスクを高めますし、眠気を催し、交通事故などのリスクも高くなるでしょう。睡眠時無呼吸症候群の場合は筋弛緩作用で症状が悪化する可能性があります。睡眠薬は下部食道括約筋を弛緩させて、胃食道逆流を起こし、上気道、気管支や鼻および副鼻腔の刺激を伴い、過剰な炎症および感染につながる可能性があります。
無理やり薬で眠ろうとすることはリスクを伴うことを忘れないようにしましょう。まずは糖質制限をして眠りの質を上げましょう。
「Use of Sleep Medications and Mortality: The Hordaland Health Study」
「睡眠薬の使用と死亡率:ホルダラン健康調査」(原文はここ)