パリオリンピック連日選手が頑張っていますね。あまり興味はないのですが。あまりに商業化され、ドブのようなセーヌ川を泳がされる選手にように、選手のための大会になっていなかったり、変な開会式があったり、毎回毎回誤審が騒がれたりで、面白みを感じなくなってしまいました。
そんな中今回のパリオリンピックでは、選手村の食事も批判を浴びています。なんとスポーツ選手にビーガン食を提供しているようです。(この記事参照)別にビーガンの人はビーガン食を食べることはどうぞ、と思いますが、多くの人は肉を食べます。女子のボクシングに元男性が出ているなど、性別の多様性を認めているのに、食の多様性は認めていないなんてアホですね。
ところで、コエンザイムQ 10(CoQ 10)は、ミトコンドリアでのエネルギー産生や細胞内の脂溶性物質の抗酸化に必須のものです。体内で合成されるため、CoQ 10 は必須栄養素ではありませんが、体内のCoQ 10レベルの維持するのには食事から摂取することも重要です。CoQ10 が多く含まれている食材としては,イワシなどの青魚や牛肉や豚肉、鶏肉などの肉類、野菜ではブロッコリー、大豆、ピーナッツ、ゴマ、ホウレンソウなどがあるようです。どれも100g当たりの含有量は非常に少ないです。
日本人の食生活では、1日のCoQ10摂取量の約40%は肉類からだそうです。(ここ参照)デンマーク人の食事からのCoQ10摂取量は約3~5 mg/日で、その3分の2は肉と鶏肉に由来しているそうです。CoQ10 摂取には肉の依存度が高いと考えられます。
実際に肉の摂取制限をするとどうなるでしょうか?
今回の研究では、22名の20~21歳の健康なボランティア女性(平均BMI20.7)が対象です。参加者のうち3人は低体重 (BMI< 18.5 )、2人は過体重/肥満 (BMI ≥ 25 )でした。
2週間肉と鶏肉を制限した食事をしてもらいます。ただし、食事内容は自己申告です。栄養学を専攻する女性が対象だったので、それなりにまじめに申告したと思いたいです。(図は原文より、表は原文より改変)
ベースライン | 肉制限 | |
---|---|---|
エネルギー (kcal) | 1633 ± 464 | 1522 ± 359 |
炭水化物(g) | 228±65 | 212±55 |
タンパク質(g) | 64.5±23.0 | 53.4 ± 13.1 |
動物性タンパク質(g) | 37.7 ± 17.3 | 29.6 ± 10.7 |
植物性タンパク質(g) | 26.8 ± 7.7 | 23.8 ± 5.8 |
脂質(g) | 47.3 ± 17.9 | 45.4±13.7 |
動物性脂質(g) | 22.7 ± 9.5 | 20.3 ± 6.8 |
植物性脂質(g) | 24.6 ± 9.9 | 25.1 ± 9.0 |
肉(g) | 39.9±25.9 | 16.4±18.1 |
鶏肉(g) | 35.1±31.1 | 8.2 ± 7.3 |
魚(g) | 51.2±30.2 | 117.6 ± 73.2 |
コエンザイムQ10(mg) | 2.1±0.6 | 1.1±0.5 |
上の表はベースラインと肉制限をしたときの栄養素等を示しています。エネルギー摂取量は少なめですが、痩せた若い女性はもしかしたらこれくらいでしょうか?肉制限と言っても完全にゼロではないようです。肉類はベースラインの40%くらいで、鶏肉は4分の1くらいになっています。そのかわりに魚の摂取量が倍以上になっています。
推定CoQ10摂取量は2.1mgから1.1mgまで減少しました。
上の図は、血中の ( A ) 還元型CoQ10、( B ) 酸化型CoQ10、( C ) 総 CoQ10、( D ) 還元型/総CoQ10比、( E ) 総CoQ10 /総コレステロール比です。肉と鶏肉の摂取を2週間制限すると、還元型、酸化型、総 CoQ10、総 CoQ 10 /TC比がそれぞれ14%、31%、16%、15%減少しました。CoQ10の活性型は還元型です。
減少率は還元型よりも酸化型の方が高くなりました。その結果、還元型/総 CoQ10比が1.5%増加しました。
いずれにしても、肉の摂取量を減少させると、CoQ10の摂取量は減少し、実際に血中のCoQ10も減少します。
ベジタリアンやビーガンの食事はやはりCoQ10の摂取量の減少を招く可能性が高くなります。さらに、野菜はヘルシーだという洗脳により、痩せるためや健康のためとの思いで、野菜を多く摂り、肉類を減らす人もいるでしょう。また、高齢者も野菜メインの食事を摂りがちで、肉の摂取量が減少している人が多いです。
さらにさらに、年齢と共にLDLコレステロールが高いというだけの理由でスタチンを飲んでいる人も多いでしょう。スタチンはCoQ10の合成を阻害するので、血中のCoQ10は低下してしまいます。それによって心不全などの疾患を起こしている人も少なくないと思います。
毎日、肉をたっぷり食べましょう。スタチンは止めましょう。
「Effect of a Two-Week Diet without Meat and Poultry on Serum Coenzyme Q10 Levels」
「2週間の肉と鶏肉抜きの食事が血清コエンザイムQ10濃度に与える影響」(原文はここ)
「体内で合成されるため、CoQ 10 は必須栄養素ではありませんが、体内のCoQ 10レベルの維持するのには食事から摂取することも重要です。」
ということでCoQ10と称するサプリメントも様々ありますが、
それらも有効なのでしょうか?
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
CoQ10がちゃんと吸収されるのであれば、有効だと思います。