「その1」「その2」の続きです。今回はコーヒーについてです。以前の記事「適度な量のコーヒーでは脱水にはならない」では、4~5mg/kg程度のカフェインを含むコーヒーは進行性の脱水をもたらさないことを書きました。
ある研究では、カフェインを300mg以上摂取すると、「数日または数週間カフェインを摂取できなかった」人の尿量が短期的には刺激される可能性があると言っています。(ここ参照)しかし、摂取量を超える水分の喪失につながることはないでしょう。
別の研究では、59人の平均年齢21.6歳の健康な男性を対象にした実験があります。(ここ参照)最初の6日間は全員3mg/kgのカフェインをカプセルで摂取しました、7~11日目では、カフェインの量がゼロ、3mg/kg、6mg/kgの3つのグループに分かれました。異なるカフェイン量にもかかわらず、体重、尿浸透圧、尿比重、尿色、24時間尿量、24時間ナトリウムおよびカリウム排泄量、24時間クレアチニン、血中尿素窒素など全てにおいて、違いは認められませんでした。もちろん、脱水になるグループはありませんでした。
他の研究を見てみましょう。(ここ参照、下の図もここより)20~39 歳の低カフェイン摂取者 (<100 mg/日) の男性30名を対象に、カフェイン5 mg/kg/日とプラセボの2つの条件でそれぞれ4日間行いました。
上の図はTBW(全身水分量)、ECW(細胞外水分量)、ICW(細胞内水分量)の変化を見たものです。●は最初にプラセボ、2回目の期間にカフェインを摂取したグループ、○は最初にカフェイン、2回目にプラセボを摂取したグループです。どちらのグループもベースラインと、プラセボの時期、カフェインの時期で変化を認めません。カフェインは脱水を引き起こしていません。
じゃあ、運動しているときや運動後のカフェインは脱水を助長するでしょうか?(ここ参照)16人のサイクリストが、プラセボ、炭水化物と電解質の入ったスポーツドリンク、カフェイン入り(195 mg/L)スポーツドリンクの3つの試験を行ったところ、発汗量、尿量、血漿量損失、血中の電解質などに違いはありませんでした。
ただ、カフェインでオシッコが増加したという研究もあります。(ここ参照、図もここより)カフェインをとる場合は6mg/kgを運動45分前にカプセルで摂取しました。
上の図は7人のサイクリストが36度の気温で運動したときの120分間の水分量や尿量などのパラメータです。水分補給なし (NF)、水で汗による損失の97%を水分補給 (WAT)、炭水化物電解質溶液 (CES、いわゆるスポーツドリンク) で水分補給、またはこれらの治療とカフェイン摂取の組み合わせ (CAFF + NF、CAFF + WAT、および CAFF + CES)です。パラメータは上から、水分摂取量、水分損失量、発汗量、尿量、代謝による炭素と呼吸による水分損失、体重減少、脱水率です。
当然水分補給なしでは、水分摂取ゼロなので、尿量や体重が大きく減少しています。しかし、発汗量は水分補給群と比較して少し少ないものの2.3L出ています。そしてその発汗量や体重減少量はカフェインの影響はありません。
一方、水分損失の97%もの水分を水で摂取した群では、カフェインの影響がありました。尿量はカフェインで200ml程度増加し、体重減少も300gくらい多くなりました。スポーツドリンク群ではカフェインの影響はありませんでした。
つまり、水分補給なしで脱水状態の場合では、カフェインが脱水を悪化させることはなく、かなり十分な水分補給ではカフェインで尿量が増加する可能性があるけれど、脱水が悪化するほどではないということです。
いずれにしても、利尿作用は気にせず、猛暑でもコーヒーは飲んでも良いですね。
人間の(生物の)身体はちょっとやそっとでは影響を受けない強さ
を持っているのでしょうね。
良くも悪くも変化を起こすのは「習慣の力」なのでしょうね。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
暑さになれる、太陽になれる、汗をかくことになれる、は重要だと思います。