一般的にはスタチンは心血管疾患を予防してくれる薬だと信じられています。そうであるのであれば、心血管疾患の発生率が大幅に減ってもおかしくないですが、現実はどうでしょうか?
今回の研究では、1999年から2013年までの二次予防におけるスタチンの使用と心血管疾患再発の発生率を分析しています。二次予防なので、以前の心血管疾患を発症している患者が対象です。その再発予防にスタチンが有効だったでしょうか?(図は原文より)
上の図は、二次予防患者に対するスタチン処方の年齢標準化普及率(年齢層別)です。1999年から2005年までに急激に処方が増加しました。年間変化率(APC)は25.4%と急増です。2005年から2013年にかけては緩やかではあるものの有意な増加でAPC3.7%です。 2013年には、70~79 歳の人がスタチンを最も多く服用し、51%でした。69歳以下の患者は2005年以降横ばい状態になりましたが、70歳以上の患者のスタチン使用はさらに増加しましたが、以前ほどではありませんでした。
上の図は二次予防における患者の再発イベントの年齢標準化発生率(年齢層別)です。心血管疾患再発の発症率は1999年では52/1000患者年でしたが、2001 年まで有意な傾向は見られず、その後有意な減少が見られ、APCは -2.2%でした。スタチン処方が急増したのに、心血管疾患の再発の減少は非常に緩やかです。じゃあ、このような原因はスタチンを飲んでいない人が多いからじゃないのか?と思う人もいるかもしれません。
上の図は、スタチンを服用している患者と服用していない患者の再発性心血管疾患の年齢標準化発症率を示しています。●がスタチン使用者でメジャーな心血管イベント発症で、▲がスタチンの非使用者のメジャーな心血管イベント発症です。
1999年の発症率は、スタチンを処方されていない患者の方が高く、57/1000患者年対27/1000 患者年でした。しかし、その後スタチンを処方されていない患者では、心血管疾患の再発が有意に減少し、メジャーな初回イベントは年間変化率は-3.9%も減少しました。しかし、スタチンを投与されている患者では、有意な傾向は認められず、年間変化率はメジャーな初回イベントで0.9%でした。心血管疾患の再発の減少は、主にスタチンを処方されていない高齢患者(60歳以上)で認められました。なんと、スタチン使用者の間では心血管イベント発生が変化がないのに、スタチンを使用していない人の方がイベント発症がどんどん減少して、全体の緩やかな減少トレンドになっていたのです。
スタチンが二次予防をしてくれているわけではないのです。もちろん、他の二次予防薬がないことは、スタチンの使用が少ないことと強く関連していました。性別、年齢、併存疾患は、スタチンの使用とそれほど関連していませんでした。つまり、もしかしたら心血管疾患を最初に起こした後に、気だ付いて、薬に頼らず、自分で生活習慣や食事を改善した人は、スタチンも飲まず、他の薬も飲まないで、心血管疾患を予防できているのかもしれません。しかし医療に頼る人は、自分自身を変えられず、スタチンも飲み、他の薬も飲んでも心血管疾患を再発してしまうのでしょう。
多くの臨床試験におけるスタチンのメリットは現実世界では当てはまらず、そこには医療の闇があると思われます。
心血管疾患は糖質過剰症候群です。
スタチンビジネスに騙されないようにしましょう。
「Time trends in statin use and incidence of recurrent cardiovascular events in secondary prevention between 1999 and 2013: a registry-based study」
「1999年から2013年までの二次予防におけるスタチン使用と再発性心血管イベントの発生率の時系列傾向:レジストリベースの研究」(原文はここ)