連日暑い日が続いています。40℃を超えるなんて、ビックリですね。
夏の暑い中スポーツをすることは大変ですね。非常に激しいスポーツである、サッカーの試合を暑い気候の中行うと、選手たちの水分状態はどうなるのでしょうか?
今回の研究では、22人の男性選手(平均年齢20歳、身長176cm、体重68kg)が90分の試合を行いました。2週間後にももう一回2試合目を行いました。
マッチ1 | マッチ2 | |
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温度(℃) | 34.3 ± 0.6 | 34.4 ± 0.6 |
相対湿度 (%) | 64±2 | 65±3 |
どちらの試合も34℃以上、湿度も64~65%です。最初の試合中、すべての選手は水を飲むことができました。2試合目では、一方のチーム(チーム W)は水のみを、もう一方のチーム(チーム SD)は水と市販のスポーツドリンクの両方を飲むことができました。
試合前後の状態は下の表のようです。
マッチ1 | マッチ2 | |||
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チームW | チームSD | チームW | チームSD | |
試合前体重(kg) | 70.66 ± 7.41 [50.16–78.70] | 65.91 ± 4.79 [59.70–73.50] | 71.36 ± 8.40 [49.72–80.26] | 66.52 ± 4.94 [60.10–73.78] |
試合後の体重(kg) | 69.29 ± 7.01 [50.28–77.60] | 64.26 ± 4.59 [57.62–70.58] | 69.76 ± 7.94 [49.52–79.08] | 64.80 ± 4.71 [58.62–71.70] |
体重減少(kg) | 1.37 ± 0.62 [0.12の増加~1.96の減少] | 1.65 ± 0.67 [0.20–2.92] | 1.60 ± 0.66 [0.20–2.22] | 1.71 ± 0.66 [0.04–2.52] |
体重減少(%) | 1.88 ± 0.89 [0.24の増加~2.89減少] | 2.49 ± 0.94 [0.30–3.97] | 2.19 ± 0.86 [0.40–3.04] | 2.56 ± 0.93 [0.06–3.47] |
飲んだ飲み物の量(mL) | 1832 ± 499 [741–2387] | 1474 ± 423 [929–2203] | 1521 ± 354 [1144–2282] | 1347 ± 411 [738–2160] |
尿量(mL) | 69 ± 60 [0–159] | 46 ± 50 [0–155] | 43 ± 58 [0–162] | 46 ± 54 [0–176] |
尿比重 | 1.012 ± 0.006 [1.004 ~ 1.025] | 1.010 ± 0.006 [1.003 ~ 1.022] | 1.012 ± 0.008 [1.003 ~ 1.030] | 1.006 ± 0.003 [1.003–1.014] |
尿比重が1.020を超える数値 | 2 | 1 | 2 | 0 |
発汗量(L) | 3132 ± 603 [2159–3843] | 3077 ± 545 [2403–3867] | 3081 ± 833 [1477–4402] | 3013 ± 551 [2200–3982] |
汗中ナトリウム濃度(mmol/L) | 43±11 [27–59] | 46 ± 8 [25–53] | ||
汗中カリウム濃度(mmol/L) | 3.5 ± 0.5 [2.9–4.0] | 3.5 ± 0.3 [3.2–3.9] | ||
発汗によるナトリウム損失量(mmol) | 137±50 [87–219] | 140±26 [97–189] | ||
計算された発汗塩分損失量(g) | 8.0 ± 2.9 [5.1–12.8] | 8.2 ± 1.5 [5.6–11.0] |
([ ]内は最小値と最大値です。)
推定発汗量はおよそ3Lです。1時間当たりでは2Lになるので、涼しい環境での発汗の2倍くらいでしょう。
90分の試合で、2%前後、1.6kg前後の体重減少です。22人の選手のうち16人が試合中に体重の2%以上を失い、平均して発汗で損失した量の55 ± 19%が試合中の飲料水によって補充された計算になります。極端な例では、ある選手は発汗量よりも多くの水を飲んでおり、推定発汗量よりも約200mL多く摂取していました。(体重が増加した選手もいるのですから)また、ある選手は発汗量よりも約3Lも少ない量しか飲んでいませんでした。両試合の水分摂取量は738~2387mLで、平均摂取量は1544mLでした。
2試合目では、1 つのチームの 11 人の選手がスポーツドリンクと水の両方を摂取したところ、水しか摂取できなかった 1 回目の試合で摂取した量 (1474 ± 423 mL) と同じ量 (1347 ± 411 mL) を摂取しました。平均すると、この試合中に彼らは水 (0.8 ± 0.5 L) とスポーツドリンク (0.5 ± 0.3 L) を摂取しました。
ただ、2試合目でスポーツドリンクを飲んだ場合の汗への影響は測定されていませんのでわかりません。しかし、スポーツドリンクを飲んでも、選手の全体的な水分補給結果に変化はなく、彼らは同じ量の飲料を消費し、同じ量の汗をかき、したがって同じ程度の体重減少で試合を終えました。
発汗により、損失した推定の塩分量はおよそ8gです。
試合後の選手の状態は書かれていませんが、恐らく何も問題が無かったのでしょう。暑い気候の中でのサッカーの試合で、90分間動き回り、3Lの汗をかき、その発汗量の半分くらいの水分補給しかせず、塩分は8gも失ってしまっている状態でも、人間は問題ありません。
日常生活でこれほど汗はかきません。これほど塩分は失いません。こまめな水分補給、こまめな塩分補給が本当に必要でしょうか?もちろん水分補給は摂りたければ摂れば良いでしょう。しかし、塩分補給は全く必要ありません。90分という短い時間で8g塩分を失っても、人間の体は機能します。
汗で塩分を失ったら、塩分補給が必要だというのであれば、毎日オシッコをしたときに大量の塩分を失っているのですから、オシッコをするたびに塩分補給が必要になってしまうということになってしまいます。オシッコの回数にもよりますが、1回のオシッコで2gくらいの塩分が失われています。我々の体は、万が一、汗で塩分を出し過ぎたら、オシッコの塩分を調整するでしょう。それに体の塩分はそんなに簡単に枯渇しませんよ。必要であれば出す前に再吸収します。汗の塩分が活性の無い塩分である可能性もありますし。(それについてはいつか記事にしようと思います。)
運動もしない状態で夏にスポーツドリンクを飲んでいる人がいます。もちろん、マスコミやいわゆる専門家がスポーツドリンクを勧めるからでしょう。実際にはスポーツドリンクに含まれる塩分はごくわずかですし、糖質たっぷりドリンクです。通常の日常でスポーツドリンクが必要な場面は皆無です。外の散歩でも、軽作業でもスポーツドリンクは全く必要ありません。飲むとしたら水やお茶で十分です。
そして、運動中もスポーツドリンクは必要ありません。ある小学生を対象としたスポーツのコーチが、必ず大量のスポーツドリンクを持ってこさせて飲ませるそうです。しかし、子供たちの中にはスポーツドリンクを飲めば飲むほど喉が渇くと訴えている子がいるそうです。すごい糖質量ですからね。無知なコーチに当たってしまうと、子供たちも病気になってしまうかもしれませんね。
「Hydration and sweating responses to hot-weather football competition」
「暑い天候でのサッカー競技における水分補給と発汗反応」(原文はここ)