京都の某大学からまた変な研究が出ました。著者の結論から言うと、長期の低炭水化物食は2型糖尿病患者の脂質異常症の治療における有効性を示唆していますが、患者の血糖コントロールのためには有効ではなく推奨するものではありません、とのことです。
今回の研究では、 2型糖尿病の成人を対象に12か月を超える長期の低炭水化物食介入について実施されたランダム化比較試験のメタアナリシスです。選択基準を満たしたのは6件の研究でした。比較の対照群の食事はエネルギー制限食であったり、低脂肪食であったりとまちまちです。まあまず見ていきましょう。(図は原文より)
上の図は(a) HbA1cと低炭水化物食の関連性、 (b) 減量と低炭水化物食の関連性を示したものです。低炭水化物食は対照群と比較してHbA1cも体重減少も違いがありませんでした。あらら。
上の図は、(a) 収縮期血圧と低炭水化物食との関連性、 (b) 拡張期血圧と低炭水化物食との関連性を示しています。長期の低炭水化物食は対照群と比較しても、収縮期血圧も拡張期血圧も大きな影響はありませんでした。あらら。
上の図は、(a) LDLコレステロール値と低炭水化物食の関連性、 (b) 中性脂肪と低炭水化物食の関連性、 (c) HDLコレステロール値と低炭水化物食の関連性を示しています。対照群と比較してLDLコレステロールに影響はありませんでしたが、中性脂肪は低下し、HDLコレステロールは増加しました。これが結論にある、脂質異常症には有効であるというものです。
脂質異常症には有効ですが、本当に血糖コントロールには有効ではないのでしょうか?
そもそもこの研究の選択基準の1つが変です。介入群が研究者によって低炭水化物群と定義されたものです。つまり、低炭水化物の「低」というのは基準がないのです。だから選ばれた研究の中では炭水化物が1日40gのものもあれば、1日のエネルギー摂取量の40%のものもあります。1日のエネルギー摂取量の40%は低炭水化物食と言えるのでしょうか?
さらに、選択された6つの研究のいくつかを見てみると、面白いことがわかります。
一つの研究では、修正アトキンス⾷または標準のカロリー制限⾷のいずれかに分けました。(ここ参照)アトキンス食は低炭水化物ですが、最初の6週間は1⽇あたり最⼤25gの炭⽔化物を含む超低炭⽔化物⾷、その後1⽇あたり上限40gまで増加しました。エネルギー、タンパク質、脂肪の摂取に制限はありませんでした。
しかし、実際にはアトキンス食を3、6、12か月の炭水化物の平均摂取量は目標の2倍以上でした。おいおい。さらに尿中ケトン体を測定すると、アトキンス食群の6 週間で参加者の61%しかケトン体が認められず、3 か月、6 か月、12 か月ではそれぞれ 18%、20%、7% にしか認められませんでした。炭水化物制限目標の遵守率がどんどん低下し、最終的にはかなり低いことを示しています。つまり、全くデザイン通りの研究ができていません。
次の研究を持て見ましょう。(ここ参照)この研究もアトキンス食で、低炭水化物食群はベースライン体重に応じて1日20~25gの炭水化物制限の2週間フェーズから開始し、体重が減るにつれて、毎週5 gずつ炭水化物摂取量を増やすことができました。食事摂取量は自己申告で、食事記録に基づくと、3か月の時点で低炭水化物群は、エネルギー摂取量の24%を炭水化物(1日あたり77gの炭水化物に相当)から摂取していました。しかし、6か月と12か月では炭水化物摂取量はエネルギー摂取量の33%以上まで増加していました。つまり、この研究もデザイン通りではなく、炭水化物制限の遵守率がどんどん低下していたと考えられます。
もう一つの研究を見てみましょう。(ここ参照) この研究では2年間続き、炭水化物摂取量はエネルギー摂取量の14%です。低炭水化物群は、高炭水化物群と比較して、血中のケトン体のβ-ヒドロキシ酪酸レベルが当初3倍増加しましたが、時間の経過とともにベースラインに向かって減少しました。つまり、これもデザイン通りではなく、だんだんと炭水化物制限の遵守率が低下したと考えられます。
つまり、低炭水化物食の炭水化物摂取量の定義もなく、対照群も標準化せず、研究のデザイン通りに全く行っていない研究を6つ集めて、それを分析してしまった、非常に質の低いメタアナリシスです。恐らく糖質制限否定派であり、低炭水化物食は血糖コントロールに対して有効ではないというのを示したかったのでしょう。
この論文の利益相反のところを見ると、第一著者はほとんど利益相反がなく見えますが、最終著者は教授で、次の企業と利益相反があると思われます。
小野薬品工業株式会社、おいしい健康株式会社、山田養蜂場、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社、キッセイ薬品工業株式会社、田辺三菱製薬株式会社、第一三共株式会社、サノフィ株式会社、武田薬品工業株式会社、アステラス製薬株式会社、MSD株式会社、協和キリン株式会社、大日本住友製薬株式会社、興和薬品工業株式会社、ノボ ノルディスク ファーマ株式会社、三和化学研究所株式会社、日本イーライリリー株式会社、大正製薬株式会社、テルモ株式会社、帝人ファーマ株式会社、日本ケミファ株式会社、アボット ジャパン株式会社、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカル社、テルモ株式会社
これでも査読は通ってしまいます。結果ありきの研究であると思われます。何の意味もない研究がいくつも積み重なって、メタアナリシスだからとエビデンスレベルが高いと思わせ、結果だけが独り歩きすることになるかもしれません。エビデンスなんて所詮こんなものです。
糖尿病は糖質過剰症候群です。ちゃんと糖質制限をすれば、脂質異常症(中性脂肪とHDLコレステロール)は改善するだけでなく、当然血糖コントロールは大きく改善します。専門家を信じると医療に依存した人生になる可能性が高くなるでしょう。
「Efficacy of long-term low carbohydrate diets for patients with type 2 diabetes: A systematic review and meta-analysis」
「2型糖尿病患者に対する長期低炭水化物食の有効性:系統的レビューとメタ分析」(原文はここ)
医療依存への誘導圧力は、
やはり強力なのですね。
それだけ医療で潤っていらっしゃる
勢力が大きいのでしょうか。
(当人は糖質制限生活してたりして)