一部の高血圧の薬は腎臓を病的な状態に変化させる その1

高血圧の薬の中で最も処方されている一つがレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬でしょう。RAS阻害薬には、ACE 阻害薬やアンジオテシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)があります。そして、これらの薬は腎保護作用があると信じられています。本当でしょうか?

実はこのRAS阻害薬は、長期使用で時間が経つにつれて腎臓の血液のろ過能力を低下させることが分かっているのですが、その危険な副作用がどのようにして起こるのか?。RAS阻害薬は血管を弛緩させ、血液の流れを良くすることで作用します。(図はここより)

上の図は胎児と成人のレニン細胞の運命について示しています。胎児では、レニン細胞(薄緑色)は輸入細動脈(AA)に沿って、糸球体内外メサンギウム、およびより大きな細動脈と動脈に存在します。成熟すると、レニン細胞は血管平滑筋細胞(SMC)とメサンギウム細胞(両方とも赤色)に分化して、レニン細胞が存在するのは傍糸球体(JG)領域に限定されます。成人期の脱水、ナトリウム枯渇、低血圧、その他の操作などの恒常性維持の脅威に反応して、レニン表現型の再獲得により、胎児パターンのようにレニン細胞の数が増加します。(EA:輸出細動脈)どうやら、もともとのレニン細胞だったものは、その子孫の細胞が血管平滑筋細胞の表現型を示した後でも、レニン細胞だった記憶を保持していて、恒常性が脅かされたときにレニン細胞のアイデンティティを取り戻すようです。非常に面白いですね。

上の図はレニン細胞の刺激による腎細動脈の形態学的変化のさまざまな段階を示したものです。脱水症や低血圧、塩分の枯渇などの短期刺激により、細動脈に沿って血管平滑筋細胞がレニン発現表現型に変化します。この段階では、変化は可逆的です。危機が過ぎて恒常性が回復すると、細胞は以前の血管平滑筋収縮表現型に戻ります。レニン細胞は、恒常性が達成されるか死ぬまでレニンを産生し続けます。

しかし、恒常性が回復しない場合、例えばRAS阻害薬を長期に使用している場合などでは、細動脈細胞は絶え間なく進行性に変化し、血管新生および成長因子を産生して、腎細動脈および小葉間動脈の無症状で進行性の重篤な同心円状肥大を引き起こします。多数の肥大したレニン細胞が血管を取り囲み、細動脈壁内に雑然と配置され、さらに、多数の血管平滑筋細胞が内側に同心円状に蓄積し、血管腔を部分的または全体的に閉塞して、低灌流、局所虚血、線維化(瘢痕化)、および腎不全を引き起こします。

つまり、RAS阻害薬は本質的に腎臓の働きを変え、血液を濾過するという重要な仕事以外のこと、レニンを過剰に産生することをさせるようになるのです。

(下図はここより)

上の図のAは、健康な対照者、RAS阻害薬を投与していない良性腎硬化症患者、および RAS阻害薬を長期使用している良性腎硬化症患者の腎臓の組織です。RAS阻害薬を長期使用している患者では輸入細動脈に顕著な肥大が見られました。

図のBは傍糸球体領域の輸入細動脈の平均厚さ。RAS阻害薬を長期使用している患者は対照群やRAS阻害薬を投与していない良性腎硬化症患者と比較して、腎細動脈壁が有意に厚くなっていました。

図のCは腎臓組織におけるレニン細胞を示しています。RAS阻害薬を長期使用している患者では、傍糸球体領域に広範なレニン陽性領域が見られました。

図のDは傍糸球体領域の平均レニン陽性面積です。RAS阻害薬を長期使用している患者は対照群およびRAS阻害薬のない腎硬化症患者と比較して、有意に大きな面積を示しました。

図のEは長期にRAS阻害薬を使用し、RAS阻害薬を受ける前に腎生検を受けたIgA腎症の2人の組織です。患者1は57歳のIgA腎症の女性。最初の腎生検でIgA腎症と診断され、2回目の腎生検まで23年間リシノプリル(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)を投与されていました。

患者2は52歳の IgA腎症の女性。最初の腎生検でIgA腎症と診断され、9年間カンデサルタン (ARB) を投与されていました。2年間の自己中断の後、2回目の腎生検まで1年間ロサルタン (ARB) を投与されました。

両患者とも最初の生検では輸入細動脈に異常はなく、2回目の腎生検では顕著な輸入細動脈肥大が見られました。RAS阻害薬によってレニン細胞の刺激と糸球体前細動脈の同心円状肥大につながったのだと考えられます。

RAS阻害薬を長期に使用し続けると、重度の同心円状細動脈肥⼤により輸⼊細動脈が狭窄または閉塞し、最も重要な血液ろ過機能を低下させて、レニンをどんどん分泌し続ける、レニン産⽣のみに専念する、まるでゾンビのような不適応な臓器に変貌してしまう可能性があります。

深刻な腎臓の障害が起きても、患者は気付かないでしょう。そして、高血圧の患者は時間と共に腎機能が低下しても不思議だと思われません。高血圧による臓器障害が進行しているだけだとされてしまいます。高血圧の薬が腎臓にひどいダメージを与えているとは誰も思わないでしょう。そして、患者は医療に依存させられます。

当然、専門家はこのようなことを知っているはずですから、知っていながら、それを使い続けているのでしょう。ガイドラインではRAS阻害薬は第一選択薬です。

高血圧は糖質過剰症候群です。糖質過剰摂取を止めずに高血圧は改善しません。数値だけを正常化する薬では健康にはなれません。もちろん塩分制限は意味がありません。塩分制限+RAS阻害薬で腎機能低下は加速するかもしれません。よく自分自身で考えましょう。

次回以降では、RAS阻害薬が本当に腎保護作用があるのか?についてのいくつかの研究を取り上げてみたいと思っています。

「Transformation of the Kidney into a Pathological Neuro-Immune-Endocrine Organ」

「腎臓の病的な神経・免疫・内分泌器官への変化」(原文はここ

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