むずむず脚症候群の薬にご注意を

むずむず脚症候群と診断され、巷では薬物療法が行われています。その中でもドパミン作動薬を処方されている場合は、十分にそのリスクをわかっている必要があります。

私の外来の患者さんで、プラミペキソール(商品名:ビ・シフロール)でどうしようもなく悪化し、治療に難渋してしまった人もいます。

新しいアメリカのガイドラインではすでにドパミン作動薬は推奨されていません。(ガイドラインはここ)それは、最近の研究では、ドパミン作動薬の長期使用は、むずむず脚症候群症状の強度と持続期間が徐々に悪化する「増強」(Augmentation)のリスクを伴うことが多いことが明らかになっています。

「増強」とは、むずむず脚症候群症状の医原性の増悪を指し、治療開始前よりも午後に症状が早く出現すること、症状が上肢に広がること、安静時に症状が現れるまでの潜伏期間が短いことが特徴です。増強のもう1つの特徴は、ドパミン作動薬の用量を増やすと症状が逆に悪化することです。増強は、治療自体の結果であると示唆されています。

増強現象の有病率は、研究期間とともに上昇し、短期研究では10%、2~3年間の研究では15 ~ 30%、約10年間の研究では42~68%と報告されています。酷いですね。

むずむず脚症候群のドパミン仮説も実は怪しいのかもしれません。

現在ではドパミン作動薬ではなく、プレガバリン(商品名:リリカ)やガバペンチンエナカルビル(商品名:レグナイト)などが第一選択薬になっていますが、プレガバリンでも増強がゼロではありません。ある研究(ここ参照)では、52週間の治療の増強率は、ドパミン作動薬のプラミペキソール0.25 mgで6.6%、プラミペキソール0.5mgで9.0%、プレガバリンで1.7%でした。自殺念慮は11件あり、プレガバリン投与群で6件、プラミペキソール0.25mg投与群で3件、プラミペキソール0.5mg投与群で2件というのも気になりますね。

他の報告(ここ参照)では、むずむず脚症候群でプレガバリンやガバペンチンエナカルビルなどで治療した場合、ドパミン作動薬と比較して、自殺関連の発生頻度が高くなっていました。自殺傾向は1000人年あたり21.6対 10.7、自傷行為を伴う自殺傾向は1000人年あたり23.0対11.1、薬の過剰摂取および自殺関連イベントは30.0対15.5 人年でした。

むずむず脚症候群に対するドパミン作動薬のもう一つの問題は、「衝動制御障害」です。どんなことが起きるかというと、病的賭博、窃盗癖、強迫的買い物、性欲過剰など、さまざまな衝動行動が見られました。犯罪、自殺傾向、夫婦間の不和も見られました。(ここ参照)

ある研究(ここ参照)では、むずむず脚症候群に対するドパミン作動薬による衝動制御障害の頻度は全体で17%、強迫的買い物9%、病的賭博5%、強迫性摂食 11%、性欲亢進 3%、パンディング7%でした。パンディングというのは、共通の物体の継続的な取り扱いや仕分け、技術的機器の操作、過度の身だしなみや掃除、溜め込みなど、複雑で定型的で、多くの場合無目的な反復行動を特徴とする異常行動です。具体的には、両手の指をからませる、同じ所を布巾などで拭く、タンスの衣類を出し入れする、機器を分解するなど様々です。

衝動制御障害の症例報告を見てみましょう。
1.ギャンブル歴のない 60歳の女性は、スロット マシンをプレイしたいという「抑えきれない衝動」が現れる前、数か月間ドパミン作動薬を服用していました。彼女は少なくとも週に2回カジノに通い、毎月約6,000ドルの損失を出していました。「すべての資産を使い果たすまで止めることは不可能だった」ためです。患者がガバペンチンに切り替えられたとき、ギャンブル行動は改善しましたが、患者はその後、自分でドパミン作動薬を再開しました。

2.裕福な79歳の男性は、ドパミン作動薬を服用して約3か月後、「自分の半分の年齢のガールフレンドを一度に複数」接待するようになりました。彼はガールフレンド2人のために5万ドル以上を車に費やし、別のガールフレンドのために125万ドルのペントハウスを購入しました。さらに、彼はドパミン作動薬を服用してから数時間、「何かカリカリしたもの」を食べたいという強い衝動を感じたと報告しました。

3.47歳の女性は、ドパミン作動薬を毎日 6 か月間服用した後、気になる行動が見られるようになったと報告しました。彼女はショッピング チャンネルでの購入 (「必要もないダサい服や宝石」) で推定5,000ドルを失い、「セールを見逃すわけにはいかない」という理由で早朝に目覚まし時計を設定していました。彼女は過食症で、ピザ1枚またはドーナツ12個を一度に「空腹ではないのに」食べていました。時には「夜通し」クロスステッチをしていました。最後に、彼女は公共の場で性行為を行うことで「よりリスクを冒すようになった」と報告しました。これらの行動はほぼ2年間続きましたが、ドパミン作動薬の服用を中止してから1~2か月で完全に解消しました。

4.59歳の男性は、インターネットを介した不適切な性行為に関連して進行中の訴訟に対処しています。妻と孫たちはショックを受けています。彼は暴食で200ポンド以上体重が増え、妻は不必要な買い物を頻繁に店に返品し、彼は毎日10~12時間をコンピューターのチャット ルーム、ゲーム、ポルノの視聴に費やしていました。これらの行為はすべて、彼がドパミン作動薬を毎日服用し始めてから 1 年以内に始まり、服用をやめるとすぐに解消しました。

報酬系のドパミンは人間にとって非常に重要なものです。そこに作用する薬はあまりにも危険であると思います。その危険性をどこまで医師がわかっていて、どこまで患者に説明しているか、非常に疑問です。

鉄欠乏がむずむず脚症候群の病因の一つだと考えられています。しかし、鉄だけが原因ではなく、鉄が十分でもむずむず脚症候群の人は珍しくありません。

むしろ、やはりむずむず脚症候群は、以前の記事「むずむず脚症候群では糖質制限を」で書いたように、糖質過剰症候群ではないかと思います。

脚がむずむずする前に、まずは糖質制限を。

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