口の中のpHはほんのわずかな糖質でも大きく低下する

ステファンカーブってご存じですか?ステファンカーブとは、口の中のpH(酸性かアルカリ性かの度合い)の変化を示したグラフです。pHは食事をとるごとに変化します。食べ物や飲み物が摂ると、脱灰(歯が溶ける)と再石灰化(修復)を毎回繰り返します。その臨界pHは5.5だそうです。pH5.5を下回る時間が長いほど虫歯になりやすいとも言えるでしょう。(図はここより)

上の図はステファンさんが行った有名な実験の結果のステファンカーブというものです。25mlの10%ブドウ糖水溶液で2分間口をすすいでもらったときの、各う蝕(虫歯)活動性グループにおける上の歯 pH 変化を示しています。Ⅰは虫歯なし、Ⅱは以前に虫歯があったけど現在は活動性がない、Ⅲはちょっと活動性のある虫歯、Ⅳは顕著な活動性のある虫歯、Ⅴは酷い虫歯です。

図を見ると明らかなように、虫歯の状態によってpHの低下度合いが大きく違います。

100mlで10gのブドウ糖を含んでいる水溶液なので、たった2.5gのブドウ糖でこれほどまでに口の中のpHは変化します。そしてベースラインに戻るのに、1時間程度かかってしまっています。

さらに、下の図を見てみましょう。(図はここより)

上の図はブドウ糖の濃度を変えたときのpHの変化です。先ほどの10%よりも低い濃度でどうなるかというと、最小の0.025%という非常に低い濃度でさえ、大きくpHが低下してしまって、ほぼ臨界pHの5.5になっています。0.025%ブドウ糖15mlには、たった0.00375gしかブドウ糖は入っていません。そして当然ながらブドウ糖の濃度が高くなるほどpHの低下は大きくなっています。

コーラや100%フルーツジュースは糖質濃度が10%を超えますし、ポカリスエットは5.7%です。糖質まみれの食事をして、間食に糖質たっぷりのものを食べ、糖質過剰のドリンクを頻繁にダラダラ飲んでしまっては、口の中のpHはいつも酸性状態です。

さて、今回の研究では、フルーツジュース、フルーツドリンク、炭酸飲料、スポーツドリンクで10ml30秒間口をすすぎ、その時のpH変化を調べます。対象は15歳から19歳の若者16人または19人、2つのグループです。フルーツジュースとフルーツドリンクの違いは、恐らくフルーツジュースは100%のもの、フルーツドリンクはフルーツ風味のものだと思います。(図は原文より)

上の図は各ドリンクの糖質量とpHの平均値です。フルーツドリンクと炭酸飲料は製造から1週間のものと5カ月のものを分けています。初めて知りましたが、製造から日にちが経つと、ドリンクの中で砂糖の一部が果糖とブドウ糖に分解されてしまうのですね。トータルの糖質量は変わらないのに、1週間のものよりも5か月のドリンクの果糖とブドウ糖が増加して、砂糖が減少しています。

フルーツジュース、フルーツドリンク、炭酸飲料には、平均して9.3~9.8%の糖質が含まれ、スポーツドリンクの糖質は4.4%でした。各種ドリンクの平均pH値は3.1~3.6でした。フルーツジュースは、酸の量が最も多く、他の 3つのグループの約2~3倍でした。

上の方の図はオレンジジュース、オレンジドリンク、コカコーラで30秒すすいだ結果です。歯垢pHはどのドリンクでも一瞬のうちに低くなり、ほぼ同じでした。下の方の図はスポーツドリンク(ゲータレードおよびプリップス プラスという製品)も歯垢pH値が低くなりましたが、コーラよりは少しだけpHの回復が早いですね。

上の図はコカコーラをグラスまたはストローで飲んだ場合とすすいだ場合とで比較しています。pHの低下はグラスやストローで大幅に小さくなりました。つまり、飲み方でpHの低下度が違うようなのです。すぐにゴックンと飲んだ方が良いですね。口の中に溜めて飲むのは危険ということです。ただそれでも、急激にpHは低下しています。

結局は糖質が入っていれば、何を飲んでも、口の中のpHは低下してしまいます。

子供にこんな飲み物を頻繁に与えていれば、虫歯だらけになる可能性があります。水分は水かお茶で十分です。

そう考えると、アメなんかなめているのは最悪ですね。私は子供の頃にチュッパチャップスをなめていました。種類も豊富で、30分もなめ続けられるので、子供心にはうれしかったのですが、いっぱい虫歯になってしまいました。私の両親も無防備だったんですね。失った歯は元に戻りません。

まあ、でも、私の好きなコーヒーも酸性だからpH下がっちゃいますけど。トホホ…ただ、恐らく虫歯は一時的にpHが下がることだけが問題ではないと思います。pHよりも糖質でしょう。糖尿病などでは持続的に唾液のpHの低下やグルコースの上昇があり、その方が飲食によるpH低下よりも重要でしょう。また一番は糖質摂取による口腔内細菌叢の違いだと思います。虫歯の原因菌のミュータンス菌は口腔内の常在菌で、普段悪さをするわけではありません。糖質を与えるから、ミュータンス菌が糖質を代謝し酸を産生して、虫歯になるのです。

常在菌が悪いのではなく、常在菌を暴れさせる食事が悪いのです。糖質制限をして、コーヒーもブラックならば、暴れないのではないでしょうか?

「Sugar content, acidity and effect on plaque pH of fruit juices, fruit drinks, carbonated beverages and sport drinks」

「フルーツジュース、フルーツドリンク、炭酸飲料、スポーツドリンクの糖分、酸度、歯垢のpHへの影響」(原文はここ

3 thoughts on “口の中のpHはほんのわずかな糖質でも大きく低下する

  1. コメント失礼いたします。

    今回の研究では上がっていないですが、キシリトールも口腔内のペーハーをきっと下げるのではないでしょうか?

    血糖値は上げないとされてされているわけですが、口腔内のペーハーの事については私は存じておりません。

    きっと口腔内が酸性になるのでしょうね。

    口腔化粧品でも歯磨き粉でもキシリトール配合と書かれている商品は多々あります。

    なかなか選択が難しいところではあります。

    1. JNさん、コメントありがとうございます。

      キシリトールもpHを下げますが、砂糖ほど、つまり歯が脱灰するほどには下げません。
      歯にとっては少しは良いかもしれません。しかし、全身的な影響(血栓など)も考慮すべきでしょう。

  2. 糖質制限のお陰か、57歳
    虫歯も歯周病もありません。

    定期的に歯科で歯垢などを
    クリーニングが推奨されますが、
    それもどうなんでしょうね?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です