食事に関する研究では食事アンケートという非常に質の低いデータが用いられるのが通常です。なので、その結果もあまりあてになりません。そして、糖尿病の専門が研究する場合、バランスの良い食事が必要であるとか、動物性タンパク質は良くないとか、糖質も50%程度が健康的とか、都合の良い結果が出ます。
原文は手に入っていませんが、今回の研究では、炭水化物摂取割合と心血管疾患リスクについて調べています。順天堂大学の研究です。順天堂大学の発表した内容(ここ参照)の最初の方の文章を読んで、ちょっと期待してしまいました。
「炭水化物の摂取割合が高いほど心血管イベントや死亡のリスクが増加し、逆に、炭水化物の摂取量を減らし、蛋白質や脂質の摂取量を増加させることがそのリスク低下に寄与することが分かりました。」
炭水化物(糖質)を減らして、タンパク質や脂質を増やした方が良いと言っているではないですか。でも糖尿病の専門の部門が糖質制限を推奨するはずがありません。
今回の研究の対象は、心血管イベントの既往がない2型糖尿病を有する731人で、平均年齢57.8歳、BMI24.6、平均追跡期間は7.5年で、その間に55人(7.5%)が心血管イベントまたは死亡という主要なアウトカムを発症しました。評価は、「総低炭水化物スコア」「動物性低炭水化物スコア」「植物性低炭水化物スコア」というかなりいい加減なスコアを使用しています。(図はここより)
分析の結果、炭水化物摂取割合が高いほど主要アウトカムの発生リスクが高く、「総低炭水化物スコア」や「動物性低炭水化物スコア」が高いほど、主要アウトカムのリスクが低いことも明らかになりました。さらに、飽和脂肪酸の摂取割合が高いと、リスクが低下することが認められました。
文章だけを読めば、糖質制限を勧めているように見えます。「炭水化物の摂取割合が高いと心血管イベントや死亡リスクが増加し、逆に、炭水化物摂取量を減少させ、動物性の蛋白質や脂質摂取量を増加させることがリスク低下に寄与することが分かりました。」と言っています。動物性タンパク質、飽和脂肪酸の摂取量増加は有害であるというこれまでの研究とは違いますね。
しかし、この研究では「炭水化物摂取割合が約45%で予後に良い影響を与える可能性があることが分かりましたが、さらに厳格な糖質制限食が予後に与える影響についても検討することが今後の課題です。」と言っています。45%?全く糖質制限とは程遠い割合でした。厚労省の炭水化物の摂取目標は、総摂取エネルギーの50~65%を目安としているので、あまりそこから離れた数字を出すのも問題があるのでしょう。
だからと言って、この45%が一つの有力なエビデンスとなっても問題です。所詮、質の低い食事アンケートの研究の一つで、今後も糖質過剰摂取を続けさせるために都合よく作られたエビデンスの一つでした。
「Relationship of Carbohydrate Intake Proportion to Cardiovascular Events in Japanese People With Type 2 Diabetes Mellitus 」
「日本人2型糖尿病患者における炭水化物摂取割合と心血管イベントの関係」(原文はここ)
糖質制限推奨と見せかけて、
糖質過剰摂取に誘導する
巧妙さ、ですね。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
こうやって、意味のない研究を出して、糖質過剰摂取を正当化するエビデンスを積み上げているのですね。