久々に鉄の話題です。以前から健康のために鉄のサプリメントを摂取することには疑問を持ち、様々な記事を書いてきました。(「鉄不足だからと言って鉄のサプリメントを飲めば良い、ってもんじゃない!」「鉄はある種の症状を改善するかもしれないが、ある種のがんを増加させるかもしれない」「鉄はがんの原因のひとつとなる(長文)」など参照)
今回は無作為に2群に分けた人で、何もしない群と血液を取り除いてフェリチン値をある程度の範囲に維持する群で、死亡や非致死性心筋梗塞、脳卒中のリスクを比較しています。対象はほとんどが男性です。
最初のフェリチン値からどれだけの血液を除去するかを計算し、(測定したフェリチン値-25)×10mlの血液を取り除きます。最大でも500mlです。6か月ごとにフォローアップされて、最低レベルのフェリチン値は約25ng/mLと計算され、次の6ヶ月の採血前に測定されたピークレベルは約60ng/mLでした。この25~60ng/mLという範囲のレベルは、既存のデータに基づいて最適とみなされています。6か月ごとにフェリチン値を測定し、フェリチン値を25ng/mLに減少させるように取り除く血液の量を再計算します。
そのようにフェリチン値を定期的にコントロールした場合と何もしない場合を比較したのが次の図です。(図は原文より)
年齢によって4つの群に分けた一番若い群のデータです。Aが全原因死亡、Bが2次アウトカムである死亡+非致死性心筋梗塞および脳卒中の合計です。点線が何もしないコントロール群、実線が血液を取り除いてフェリチンを低下させた鉄減少群です。もちろん死亡率自体は非常に少ないので実際には微妙な差ではありますが、鉄減少群のリスクは全原因死亡のAのグラフでもハザード比が0.44で半分以下のリスクですし、死亡と非致死性心筋梗塞と脳卒中の合計のBではハザード比0.34と約3分の1のリスクになっています。
鉄を減らすことによって血管疾患を改善することができるかもしれませんし、発症前に鉄の量をコントロールすることで予防ができるかもしれません。
ある研究では、フェリチン濃度が約60〜80 ng/mLを超えると吸収が遅くなるという鉄吸収における自然なブレーキが存在していると考えています。しかし、大部分の人は、このブレーキを乗り越えてしまうような大量の鉄摂取をしているようであり、おそらく内因性の抗酸化メカニズムを圧倒するほどフェリチンレベルが上昇し、疾患のリスクが上昇すると考えられています。
最適な鉄の摂取量を維持することは、老化によって起こる病気を管理し、予防するための安全であり費用効果の高い戦略である可能性があるとしています。
鉄は非常に重要なものなのに、非常に様々な疾患のリスクとも関連しているように思えます。自然な食事での鉄摂取だけで十分だと考えます。また、フェリチンは本当に鉄の貯蔵量を反映しているのか、または他の何かを反映しているのかわからないデータでもあります。炎症上昇することはよくご存じだと思います。以前の記事「フェリチンの疑問がかなり解けた! フェリチンは細胞が死んだときに上昇する! 鉄はやっぱり危険!」では、フェリチンが細胞死のマーカーであるということを書きました。鉄とは関連は十分にしていますが、それだけではありません。
ただ、今回の研究のように血液を単純に取り除くだけで、疾患のリスクが低下するというのは、鉄が低下していることによるのか、それとも血液が薄くなることによるのか、それ以外の理由なのかよくわからないところではあります。
「Effect of controlled reduction of body iron stores on clinical outcomes in peripheral arterial disease」
「末梢動脈疾患の臨床転帰に及ぼす体内の鉄貯蔵の制御された減少の影響」(原文はここ)
米国のメジャーなメーカーのマルチビタミン・マルチミネラルのサプリでも、堂々と「NO IRON」とうたっているものがあります。男性用ですが。
ということは、ビタミン愛好家にも鉄を避けようとしている人がかなり存在するということなのかな、と思っています。
としきさん、コメントありがとうございます。
様々な研究で鉄の重要性と有害性が報告されています。
2面性がある栄養素はいろいろありますので、摂り過ぎには注意が必要だと考えます。