慢性疾患はがんのリスクを増大させる 特にコレステロール低下でリスクが増大

もう、当たり前の話だとは思いますが、慢性疾患はがんのリスクを増大させるようです。全ての根幹は同じだということがわかれば、当然の結果です。

今回の研究では、慢性疾患はがんの発生の5分の1以上を、がん死亡の3分の1以上を占めることが報告され、さらに運動によりかなり、がんのリスクを低下させることができることも示されました。

疾患のマーカーとして選んだものが適切なのかどうかは疑問が残りますが、慢性に経過する疾患のほとんどはインスリン抵抗性や酸化ストレスの増大などが大きな原因と考えています。

下は、上の図はがん発生、下の図はがんの死亡のリスクをそれぞれ示しています。ほとんどの項目でがんの発生率よりもがんの死亡率の方が疾患マーカーとの関連が大きくなっています。

 

何気なく見てしまうと、通常はそれぞれの項目で、下に行くほど値が高くなるように並んでいますが、気をつけてみてほしいのは、total cholesterol (総コレステロール)と一番下のuric acid(尿酸値)です。この2つの項目は下に行くほど値が小さくなります。つまり、総コレステロールも尿酸値も低いほどがんのリスクが高くなるということです。

コレステロールは最も高いレベル(240mg/dL)と比較して、最も低いレベル(160mg/dL)では44%もがんの発症が増加し、64%もがんの死亡率が増加するのです。コレステロールを低下させることは、がんのリスクを増大させることになります。低コレステロールは糖尿病よりもリスクが大きいことも意外な結果ですが、それほどコレステロールは人間にとって必要なのかもしれません。

コレステロールに比べると尿酸値の関連は小さく、尿酸値が416〜475μmol/ L(7~8mg/dL)に対し、低尿酸値が297μmol/ L未満(5mg/dL未満)でがん発生リスクは15%増加、がん死亡のリスクは22%増加しました。これは尿酸が抗酸化物質であることと関連しているのかもしれません。

 

上の図は適度な運動でがんの発生も死亡もリスクが低下することを表しています。青い線が身体的活動が少ない人で、グラフの一番下の茶色い線が身体的に活発な人です。

 

上の図はがんの種類とリスクの関連です。がんの発生と大きく関連しているのは肝臓がん、次に膀胱がん、腎臓がん、口腔がん、胃がんと続きます。がん死亡との関連は、膀胱がんがトップで、次に肝臓がん、腎臓がん、口腔がん、大腸がん、乳がんと続きます。

 

上の図は、生存年数の損失を表しています。リスクのスコアが高いほどもちろん損失年数は大きくなります。個々の項目で見てみると、最も損失年数が大きいのは、男性では心拍数が90以上で(7.4歳)、それに続くのは微量蛋白尿または蛋白尿(6.6歳)、肺疾患(5.8歳)、糖尿病(5.0歳)、糸球体濾過率<60mL/分/1.73 m2(3.3歳)、高血圧(3.1歳)、総コレステロール<4.15mmol/L(2.6歳)、および尿酸<297μmol/L(1.5歳)です。女性では、最も損失年数が大きいのは、微量蛋白尿または蛋白尿(6.9歳)、それに続くのは糖尿病(5.9歳)、糸球体濾過率<60mL/分/1.73m2(5.7歳)、心拍数≧90拍/分(5.4歳)、総コレステロール<4.15mmol /L(4.6歳)、高血圧(4.2歳)、肺疾患(3.7歳)です。。ただ、女性では尿酸<297μmol/Lは、2.8歳の生存年数の増加を認めています。男性と女性では尿酸値に対する生存年数の増減が全く逆になっていますが、これはどのように解釈すべきかはわかりません。コレステロール値を低下させることは、命を削っていることと同じなのかもしれません。

生活習慣要因については、喫煙は男性(4.3歳)と女性(4.8歳)の両方で生存年数の損失と最も大きく関連していました。

いずれにしても、体を動かすことは重要です。適度な運動を心掛けましょう。

 

「Cancer risk associated with chronic diseases and disease markers: prospective cohort study」

「慢性疾患および疾患マーカーに関連する癌リスク:前向きコホート研究」(原文はここ

要約

目的:
主要な慢性疾患とがんリスクのある疾患マーカーの独立した共同研究を評価し、慢性疾患や疾病マーカーに関連するがんリスクを軽減するための身体活動の恩恵を探る。

 

参加者:
心血管疾患のマーカー(血圧、総コレステロール、心拍数)、糖尿病、慢性腎疾患マーカー(タンパク尿および糸球体濾過率)、肺疾患および痛風性関節炎マーカー(尿酸)を測定し、標準的な方法に従って診断された、405,878人を平均8.7年間追跡した。

結果:
血圧および肺疾患を除いて、8つの疾患およびマーカーについてはそれぞれ、補正後のハザード比で1.07から1.44の範囲にあり、有意に増加したがんのリスクが観察された。8つの疾患およびマーカーは全て、統計的に有意にがんの死亡リスクと関連しており、補正後のハザード比は1.12から1.70の範囲であった。8つの疾患およびマーカーを要約した慢性疾患リスクスコアは、その増大と共にがんのリスクと正の相関があり、最も高いスコアはがんの発生で2.21倍、およびがんの死亡で4.00倍高いリスクを示した。高い慢性疾患リスクスコアは、かなりの生存期間の損失と関連しており、最高スコアによる損失生存年数は、男性では13.3年、女性は15.9年だった。8つの慢性疾患およびマーカー全てを合わせた、がん発生率またはがん死亡率に寄与する割合は、それぞれ20.5%、38.9%であり、5つの主要な生活習慣要因(喫煙、運動不足、果物や野菜の摂取不足、飲酒、肥満)を合わせた場合の24.8%、39.7%に匹敵するものだった。身体的に活発な人では、活動的ではない人と比較して、慢性疾患およびマーカーに関連するがんのリスクの増加は、がん発生率が48%、がん死亡率が27%減少した。

結論:
慢性疾患は、5つの主要な生活習慣要因を合わせたものと同じくらい重要であるが、がんにとっての見落とされる危険因子である。この研究では、慢性疾患はがん発生のリスクの5分の1以上、がんの死亡のリスクの3分の1以上に貢献した。身体活動は、慢性疾患に伴うがんのリスクの約40%を減少させることと関連している。

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