HDLコレステロールは高ければ良いってもんじゃない? その5

前回の「その4」で書いたように、apoCⅢを含むHDLは、HDLでありながら機能不全を起こし、心血管疾患のリスクを上げてしまうと思われます。つまり、質の悪いHDLなのです。だから、いくらHDLコレステロール値が高くても、質の悪いHDLが増えたのでは意味がありません。

では、どのような因子がapoCⅢを含むHDLの増加と関連しているのでしょうか?(図は原文より)

上の図はapoCⅢを含むHDLとapoCⅢを含まないHDLがそれぞれの因子に関連してどれぐらい増減するかを示しています。濃いバーがapoCⅢを含むHDLで、薄いバーがapoCⅢを含まないHDLです。因子として並んでいるのは上から順に、CRP、中性脂肪、LDLコレステロール、アディポネクチン、HbA1c、身体活動、高血圧、糖尿病、閉経後でホルモン療法をしていない女性に対する閉経前または閉経後のホルモン投与をしている女性、心筋梗塞の家族歴、標準体重に対する肥満、標準体重に対する過体重、アルコール摂取(1日15g当たり)、非喫煙者に対する喫煙者、年齢です。

見てみると、中性脂肪がapoCⅢを含むHDLの増加とapoCⅢを含まないHDLの減少に非常に関連していることがわかります。つまり、高中性脂肪値を示すことは、HDLの質を非常に低下させるのです。中性脂肪値が高い状態でHDLコレステロール値が高くても喜んではいられません。まあ、ほとんどは中性脂肪が高くなるとHDLコレステロール値は低下しますが、その低いHDLも質が悪いHDLであれば、非常に危険な状態だということはわかるでしょう。

同様に、HbA1cの上昇、糖尿病、肥満や過体重がapoCⅢを含むHDLの増加とapoCⅢを含まないHDLの減少に関連しています。糖質過剰摂取に関連するものばかりですね。弱いながらも喫煙も同様な結果になっています。

女性の場合、apoCⅢを含むHDLとapoCⅢを含まないHDLの両方が増加していますが、閉経前やホルモン療法を受けているとapoCⅢを含まないHDLの方の増加が大きくなっています。これはエストロゲンの効果でしょう。やはり女性はエストロゲンに守られています。

非常に面白い結果なのはアルコールです。1日15g当たりのアルコールで、両方のHDLが増加しています。ややapoCⅢを含むHDLの増加が多いでしょうか。「HDLコレステロールは高ければ良いってもんじゃない?」や「HDLコレステロールを上げる食事、下げる食事」でも書いたようにアルコールはHDLコレステロールを増加させます。アルコール摂取量が増えればHDLコレステロール値は上昇しますが、質の悪いapoCⅢを含むHDLもどんどん増えてしまいます。アルコール15gとは、ビールだと350ml、ウイスキーのシングル、ワイン1杯(120ml)程度でしょうか。日本酒1合で25gくらいになってしまいます。毎日飲酒の習慣がある方で、摂取量が多いのであれば、HDLコレステロール値がいくら高くても差し引いて考えないとならないかもしれません。

お酒はほどほどに。

 

「Apolipoprotein C-III as a Potential Modulator of the Association Between HDL-Cholesterol and Incident Coronary Heart Disease」

「HDLコレステロールと冠状動脈性心疾患発生との関連の潜在的な調節因子としてのアポリポタンパク質C-III」(原文はここ)

2 thoughts on “HDLコレステロールは高ければ良いってもんじゃない? その5

  1. 57才の男性ですが、2月7日から糖質制限を開始したところに、それまで100を超えたことがなかったHDL-Cが1か月後に123、2か月後に144に上昇しました。
    中性脂肪はあまり変化なく40~50程度なのですが・・・

    1. まさとしさん、コメントありがとうございます。
      HDLコレステロールが144というのはすごい値ですが、これだけの情報で
      良いか悪いかは何とも言えません。
      まれにCETP欠損症のこともあると思います。
      毎月のようにHDLコレステロールを測定しているということは、
      何か薬でも飲んでいるのでしょうか?お酒は?
      様々なことがHDLに関連します。

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