飽和脂肪酸は脳卒中のリスクを低下させ、心血管疾患とは関連していない

飽和脂肪酸は「悪玉」ではありません。もうそんな「昭和」的な考えは捨てましょう。来年で平成も終わるのですから。

下の図は健康な日本人男性と女性(35~89歳 3,731人)を17年間追跡したものです。動物性のタンパク質、動物性脂肪(飽和脂肪酸)、コレステロールを多く摂るほど脳梗塞による死亡率が低下することがわかると思います。植物性の脂肪(油)は摂取量が中程度で非常にリスクが高くなっていますが、たくさん摂るとそれよりはリスクが低くなっています。なぜかはわかりませんが、植物性のタンパク質も脂肪も多く摂るほどリスクが変わらないか増加しています。つまり、脳梗塞を予防するためには、植物性のタンパク質や植物性の油を減らして、肉や卵をたくさん食べることです。(図はこれより改変)

別のデータで、40~79歳の日本人男性(23,024人)と女性(35,429人)を14年間追跡しましたものです。最も飽和脂肪酸を少なく摂取(1日に2.5g)した群を100として、様々な心血管疾患のリスクを調べています。飽和脂肪酸をたくさん摂るほど脳卒中のリスクは低下しているのがわかると思います。心疾患は飽和脂肪酸の摂取量が多くなると全心血管疾患が低下する傾向はあるが、虚血性心疾患や心筋梗塞は関連していないことがわかります。

昨年話題になったPURE試験でも次のように述べられています。(「簡単に言えば、脂肪は「善」、糖質(炭水化物)は「悪」」参照)

全脂肪および脂肪の各タイプの摂取は、総死亡率のリスクが低いことと関連していました。最高5 分位では最低5分位に比べてリスクは、全脂肪 0.77 、飽和脂肪0.86、一価不飽和脂肪 0.81、多価不飽和脂肪0.80でした。また、飽和脂肪摂取量が高いほど脳卒中のリスクが0.79と低いことが示されました。総脂肪および飽和および不飽和脂肪は、心筋梗塞または心臓血管疾患死亡のリスクと有意に関連していませんでした。」

飽和脂肪酸を炭水化物に置き換えることは、血液の脂質に対する最も有害な影響と関連していました。飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸で置き換えるといくつかのリスクマーカー(LDLコレステロールおよび血圧)は改善しましたが、他のもの(HDLコレステロールおよびトリグリセリド)は悪化しました。」

 

これでもまだ、飽和脂肪酸を避けたい方はどうぞ避けてください。私は今日も肉をたくさん食べます。

2 thoughts on “飽和脂肪酸は脳卒中のリスクを低下させ、心血管疾患とは関連していない

  1. はじめまして
    いつも興味深く拝見させていただいております。

    先生のご意見はいつも確証に基づいているのでうなずけます。

    質問なのですがサイトに既に掲載してあれば申し訳ありません。

    既に心疾患を持っている人が飽和脂肪酸を積極的に摂取することは
    いかがなのでしょうか。
    現状の病態を変化させ得ないのでしょうか。
    このような思考はやはりLDL=悪玉となるのでしょうか

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