高齢者は血圧を下げすぎてはいけない! その1

80歳以上の高齢者になっても、漫然と高血圧の薬が処方されており、中には「低すぎるのでは?」と思う患者さんもいらっしゃいます。それを本人や家族に言っても、「内科の先生が薬を減らしてくれない」と愚痴のようなことを言う方もいるのです。

以前の記事「当たり前の話だけど、血圧を下げ過ぎるのも危険!」「高齢者の血圧が高いのは意味がある。何でも正常値にする危険性」などでも血圧の下げ過ぎの有害性について書きました。

血圧を下げる薬を減量したことで、元気になり、認知機能も改善した方もいらっしゃいます。

私は80歳以上になったら最低限の薬に減量すべきだと思います。もちろん同じ80代でも様々な健康状態の方がいます。しかし、不必要とも思える薬を飲みすぎの人が非常に多くいるのは事実です。

80歳以上の高齢者を対象とした、お隣の中国の研究があります。(図は原文より)

 

上の図は3年間での全原因死亡率と血圧の関係を表しています。左の図は収縮期血圧(血圧測定で高い方の血圧)、右が拡張期血圧(低い方の血圧)です。縦軸はリスクの高さを表しています。そうすると、右の拡張期血圧は全く死亡率とは関連していません。左の収縮期血圧はU字型の曲線を描いています。つまり高すぎても低すぎても死亡率が高くなるということです。

もっともリスクの低い血圧は129でしたが、収縮期血圧が107より低い、または154よりも高い場合には有意にリスクが高くなっていました。

 

上の図の上のグラフは収縮期血圧と心血管疾患の死亡率、下のグラフは心血管疾患ではない死亡率を表しています。確かに、血圧の上昇とともに、心血管疾患での死亡率は緩やかに上昇しています。逆に心血管疾患ではない死亡率は血圧の下降とともに死亡率が上昇しているのです。つまり、心血管疾患だけを考えただけの治療で、血圧を下げ過ぎれば他の疾患での死亡率が上がってしまうのです。

年齢とともにどうしても動脈硬化は進行していきます。そうすると、ある程度の血圧がなければ体中の様々な臓器や隅々の組織に十分な血液を運べません。正常な血圧の値というものを、全ての年齢に当てはめるのは無理があります。例えば70代は150、80代以降は160程度は十分な許容範囲だと考えています。高齢者はある程度の高い血圧を保ち、十分な血液量を保ち、脳をはじめとする様々な臓器に十分な血液を運んだ方が健康的だと考えます。

個人差はもちろんありますが、80代で110以下の血圧は危険です。血圧が低めの高齢者の方で、転倒したり、認知機能が落ちたりした場合、その人にとって血圧が低すぎではないでしょうか?

薬を飲むことで不健康になっていませんか?

 

「Revisiting the association of blood pressure with mortality in oldest old people in China: community based, longitudinal prospective study」

「中国のもっとも高齢な高齢者の血圧と死亡率の関連性を再考する:コミュニティベースの長期的前向き研究」(原文はここ

 

 

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