1日どれだけの卵を食べると健康的なのかは正直なところ不明です。もちろん個人差もあると思われます。私は1日3個程度を推奨しています。3個の根拠は十分ではありませんが、全くないわけではありません。例えば、以前の記事「大量のコレステロールを摂るとどうなるか? その2」でも糖質制限と1日3個の卵がメタボリックシンドロームに関連する危険因子を減少させながらHDLコレステロールを増加させる、ということを書きました。
今回は別の研究です。1日の卵の摂取量で血中の脂質がどのように変化するかを調べた研究があります。
対象は18~30歳の40人の健康な男女。1日に0個を2週間、1個、2個、3個の卵をそれぞれ4週間食べた時の血液検査の結果です。(表は原文を改変、図は原文より)
0個/日 | 1個/日 | 2個/日 | 3個/日 | |
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VLDLとカイロミクロン | ||||
総量 nmol/L | 53.1 | 48.4 | 51.8 | 51.9 |
大きい(60–100nm) nmol/L | 3.2 | 3.2 | 3.3 | 3.1 |
中程度(40–60nm) nmol/L | 16.2 | 14.8 | 15.0 | 15.2 |
小さい(30–40nm) nmol/L | 33.8 | 30.4 | 33.5 | 33.6 |
平均の粒子径 nm | 47.2 | 48.1 | 46.6 | 46.8 |
LDL | ||||
総量 nmol/L | 923 | 986 | 995 | 1050 |
大きい(23–30 nm) nmol/L | 299 | 363 | 396 | 410 |
小さい(18–23 nm) nmol/L | 452 | 429 | 410 | 396 |
平均の粒子径 nm | 20.7 | 20.8 | 20.9 | 20.9 |
HDL | ||||
総量 μmol/L | 36.7 | 37.5 | 38.3 | 37.7 |
大きい(10–13 nm) μmol/L | 9.0 | 9.6 | 9.9 | 10.2 |
中程度(8.2–10 nm) μmol/L | 14.1 | 14.7 | 14.6 | 14.7 |
小さい(7.3–8.2 nm) μmol/L | 14.6 | 13.7 | 14.9 | 14.2 |
平均の粒子径 nm | 9.6 | 9.6 | 9.6 | 9.6 |
VLDLとカイロミクロンは卵の摂取量により差はありませんでした。LDLは総量では0個のときよりも1日1個のときの方が増加し、1日2~3個のときの方がさらに増加しました。大きいサイズのLDLは0個のときよりも1~3個のときの方が多くなりました。1日の摂取量が多いほど、大きいサイズLDLが増加する傾向にありました。小さいLDLは有意差はありませんが、卵の摂取量が多いほど減少する傾向にあります。一般的には小さいサイズのLDLは危険であり、大きいLDLは善玉であると考えられています。
HDL粒子サイズについては異なる意見があります。今回の研究では卵の摂取量が多くなると、大きいHDLが増加しました。
しかし、以前の記事「HDLの糖化は機能障害を起こす」で書いたように、HDLに含まれるPON1というものがHDLの重要な機能である抗酸化作用を発揮します。PON1の活性が低下してしまうとHDLは抗酸化作用を発揮できなくなり、機能障害を起こすと考えられます。上の図はPON1の活性を示しています。横軸は卵の摂取量です。PON1活性は、1日3個の卵の摂取が1日1~2の卵と比較して有意に増加しました。
上の図はルテインとゼアキサンチンについてのグラフです。ルテインとゼアキサンチンは、卵黄中に少量存在する抗酸化カロテノイドです。Aが1日のルテインとゼアキサンチンの摂取量であり、卵の摂取量にかかわらず差はありません。Bは血漿のルテインとゼアキサンチン濃度です。0~1個の卵と比較して2~3個の卵では血漿のルテインとゼアキサンチン濃度が増加しています。
多くの野菜と比較して、卵のルテインとゼアキサンチンは比較的少ない量でしかありません。重要な違いは、卵からのルテインとゼアキサンチンがより生物学的に利用可能であるということです。ルテインとゼアキサンチンは親油性であるため、それらの吸収には脂肪の同時摂取を必要とします。サラダからこれらの抗酸化カロテノイドの吸収は単独では低いと考えられます。塩やノンオイルのドレッシングでサラダを単独で食べるのでは、野菜由来のカロテノイドの生物学的利用能は非常に低いと思われます。オリーブオイルやマヨネーズなどの油を含んだものを使用するのが適切ですし、脂肪を含んだ料理と一緒に食べた方が吸収が良くなります。
ルテインとゼアキサンチンは卵には少量しか存在しませんが、卵黄1個に脂質が約6g含まれています。この量は、カロテノイドを効率的に吸収するのに十分と考えられています。この研究で、ルテインとゼアキサンチンの摂取量は増加しないのに、卵の摂取量が増加すると血漿のルテインとゼアキサンチン濃度が増加しました。ただ、このカルテノイドの増加には1日1卵という摂取量では十分ではなく、2〜3個必要だということです。
つまり、1日3個の卵の摂取は、大きい粒子サイズのLDLを増加させ、HDLの重要な機能である抗酸化作用を増加させ、さらに抗酸化物質の血中の濃度も増加させるのです。このような変化は健康的な変化だと考えられます。
卵は非常に栄養価が高い食材です。1週間に6個まで、なんていう人もいますが、私は1日に3個を推奨します。
「Intake of up to 3 Eggs per Day Is Associated with Changes in HDL Function and Increased Plasma Antioxidants in Healthy, Young Adults」
「1日3卵までの摂取は、健康で若い成人のHDL機能の変化と血漿抗酸化物質の増加と関連しています」(原文はここ)