2型糖尿病でメトホルミンをSU(スルホニルウレア)薬に変更すると心血管疾患および低血糖イベントのリスクが増加するかもしれない

2型糖尿病の薬として、アメリカでは第1選択薬はメトホルミンとなっており、第2選択薬として、SU(スルホニルウレア)薬などがあります。SU薬としてはオイグルコン、ダオニール、アマリールなどがあります。SU薬はすい臓からのインスリン分泌を促し血糖値を下げる作用をあらわします。2型糖尿病はすい臓が疲弊している状態であり、インスリン抵抗性もあるのに、インスリンを無理やり分泌させる薬は、どう考えても良い薬とは思えません。

メトホルミンをSU薬に変更したり、SU薬を追加した場合に、心血管イベントや低血糖の発生はどのようになるのでしょうか?(表は原文を改変)

1000人年あたりの発生率(95%CI)調整されたハザード比(95%CI)
心筋梗塞
メトホルミン6.2(​​5.3~7.2)1
スルホニルウレア7.8(6.7~9.0)1.26(1.01~1.56)
虚血性脳卒中
メトホルミン5.5(4.7〜6.5)1
スルホニルウレア6.7(5.8~7.9)1.24(0.99〜1.56)
心血管疾患による死亡
メトホルミン8.1(7.0〜9.3)1
スルホニルウレア9.4(8.3~10.7)1.18(0.98~1.43)
全原因死亡
メトホルミン21.5(19.8~23.5)1
スルホニルウレア27.3(25.3~29.5)1.28(1.15~1.44)
重度の低血糖
メトホルミン0.7(0.5~1.1)1
スルホニルウレア5.5(4.7〜6.5)7.60(4.64~12.44)

 

上の表にあるように、重度の低血糖は7倍以上に増加します。SU薬は無理やりインスリンを分泌させるわけなので当たり前と言えば当たり前です。心筋梗塞や全原因死亡はSU薬で有意に増加し、脳卒中や心血管疾患による死亡は増加の傾向が認められました。

1000人年あたりの発生率(95%CI)調整されたハザード比(95%CI)
心筋梗塞
SU薬の追加5.0(3.8から6.5)1
SU薬に切替13.2(10.4~16.8)1.51(1.03~2.24)
虚血性脳卒中
SU薬の追加5.5(4.3から7.0)1
SU薬に切替8.9(6.6~11.8)0.88(0.58~1.33)
心血管疾患による死亡
SU薬の追加6.5(5.2~8.2)1
SU薬に切替17.9(14.6~21.9)1.22(0.87~1.71)
全原因死亡
SU薬の追加18.9(16.5~21.5)1
SU薬に切替49.1(43.4~55.5)1.23(1.00~1.50)
重度の低血糖
SU薬の追加3.4(2.5~4.7)1
SU薬に切替8.7(6.5~11.6)1.06(0.65~1.71)

上の表はSU薬を追加した場合と、SU薬に切り替えた場合を比較しています。そうすると、心筋梗塞と全原因死亡は有意に切り替えた方がリスクが増加しましたが、その他の脳卒中、心血管疾患による死亡、重度の低血糖のリスクの差はありませんでした。

つまり、第2選択薬としてのSU薬は、メトホルミン単独に比べて、心筋梗塞、全死亡原因、重度の低血糖のリスク上昇と関連していますが、SU薬を導入する際にはメトホルミンを継続した状態で追加した方が切り替えよりも安全だと考えられます。

もちろん、薬を追加しなければならなくなったという時点で、糖尿病は進行しており、それによって様々なリスクの増加が認められた可能性は否定できません。

しかしいずれにしても、SU薬はやはり時代遅れの薬でしょう。

 

「Sulfonylureas as second line drugs in type 2 diabetes and the risk of cardiovascular and hypoglycaemic events: population based cohort study」

「2型糖尿病の第2選択薬としてのSU薬と心血管疾患および低血糖イベントのリスク:集団ベースのコホート研究」(原文はここ

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