γ-GT(γ-GTPやGGTということもあります)は、肝臓や胆管の細胞が壊れると血液中にγ-GTが血液の中に流れ出てくることから、「逸脱酵素」といわれ、アルコール摂取量や肝機能障害の指標として考えられています。しかし、γ-GTは抗酸化物質であるグルタチオンの代謝に深く関与するため、酸化ストレスのマーカーとも考えられています。酸化ストレスが高く、活性酸素が大量に存在している状態では細胞内のグルタチオンも大量に必要となり、γ-GTもたくさん生成され、血液中に漏れ出てきてしまい、血液中のγ-GTが上昇すると考えられます。
しかし、増加したγ-GTが酸化ストレスを起こすとも考えられます。γ-GTがある範囲を超えると、過剰なγ-GTがグルタチオンを分解して、グルタチオンを枯渇させる可能性があります。グルタチオンが減少し、酸化ストレスから臓器や組織を保護するために残っている量が不十分であると、臓器や組織の障害が起こり始めます。
活性化したγ-GTは動脈のプラーク内で認められています。なぜ、プラーク内にγ-GTが蓄積しているのかということははっきりとはわかっていません。(図は原文より)
上の図の上の写真は冠動脈のアテローム病変です。赤く染まったところがγ-GTの酵素活性が認められるところであり、同時にアテロームのコアの部分です。つまり、内膜の深いところにしか認めません。
下の図はγ-GTがプラーク内でどのように関与するかを図示しています。細かいことは書きませんが、γ-GTはグルタチオンの代謝に関与しますが、その反応は鉄を必要とし、その反応の中で、LDLの酸化が起こり、プラークの発達と破裂などに関連しうると考えられます。
上の写真は頸動脈のプラークですが、Aがγ-GTの活性を示しています(茶色に染まった部分)。Bは酸化LDLが蛍光で示されています。γ-GTと酸化LDLの存在するところはほぼ同じ部分であると考えられます。(写真はこの論文より)
さらに上の写真も茶色く染まったところがγ-GTですが、この部位には酸化されたリポタンパク質を含んだ泡沫細胞を認めます。これもまたコアの部分です。(写真はこの論文より)
冠動脈プラーク内のγ-GTがこのようにコアにのみ存在するのは、アテローム発生および冠動脈疾患の進行において、LDLの酸化におけるγ-GTの直接的な関与の仮説に対する病理学的根拠を示しています。つまり、γ-GTが酸化ストレスを起こしていると考えられるのです。
γ-GTの値というのは一般的な正常範囲内の中であっても、アテローム性動脈硬化症だけでなく、様々な疾患のリスク増加を示している可能性があります。
γ-GTの増加が原因なのか結果なのかは私にはまだよくわかりません。しかし、γ-GTは低いに越したことはないのかもしれません。
「Gamma-glutamyltransferase, atherosclerosis, and cardiovascular disease: triggering oxidative stress within the plaque」
「ガンマ – グルタミルトランスフェラーゼ、アテローム性動脈硬化症、および心臓血管疾患:プラーク内の酸化ストレスを引き起こす」(原文はここ)