「練習は裏切らない」「練習はウソをつかない」というのを耳にしたことがある方は多いと思いますが、実は練習は大してパフォーマンスに影響がないという研究です。そんなこと言ったら、何のために練習しているの?と思ってしまいます。特にエリートの選手では練習の影響はわずか1%。もちろん、練習を全くしないというのは話にはならないと思いますが、ある一定のレベルに達するとそれ以上は練習では伸びないということでしょう。練習だけを妄信して、ケガをする選手もいますからね。故障したら元も子もないわけです。
エリート選手だけでなくても練習がパフォーマンスに与える影響は18%だそうです。やっぱり持って生まれたものの違いは大きいでしょう。あと、一番大きいのはメンタルでしょう。私はこれが一番だと思っています。
練習ではエリート競技選手のパフォーマンスは変化しないようだ
2016.6.28 EurekAlert リンクでダイエットより
エリート競技選手の間では、あるパーフォーマンスの実現に際して練習が影響を与える割合は1%に過ぎず、また子どもの頃の早い時期からそのスポーツを開始しているかどうかも熟練性には必ずしも影響を与えていないようだ、というケースウェスタンリザーブ大学の研究者による報告。
そもそも、競技レベルを高めていこうとする過程では量をこなすような練習を行う事は必要不可欠であるが、ある一定のレベルに到達すれば、以降は練習量の多寡によって、パーフォーマンスがより高いレベルに到達するのかそうでないのかということには影響を与えないようだ、と研究者は指摘する。ヒトのパーフォーマンスは、ことほどさように複雑なものなのであって、練習は多く存在しているその変数の一つに過ぎないというのである。
本研究では、52件のデータセットを用いて、練習とパーフォーマンスの関連性がどの程度存在しているのかを検討した。本研究の知見は、運動に関わる多くの人にとって、練習の時間対費用を検討する上で興味深いものだ。
エリートに限らないでスポーツにおけるパーフォーマンスを全般的に検討した場合、練習がパーフォーマンスの良否を左右する割合は約18%であるという。残りの82%は、練習以外の要因が原因となっていると考えられるのだ。
練習がそれほど大きなパーフォーマンスの決定変数にならないという知見は、これまで広く信じられてきた、1万時間の練習が競技成績を伸ばしていくためには重要であるという伝統的かつ理想的な考え方に拮抗するものだ。そもそも、このような量がパーフォーマンスを制する、という考え方のは、遺伝的な背景やスポーツによる特異性などは考慮されていないのである。
また、これまでのいくつかの研究ではスポーツを開始する年齢が速いことが技術を磨くためにはより有利であり、速く始めているかどうかが高いパーフォーマンスレベルを導くには重要であるということが示唆されてきた。しかしながら、本研究のもたらした根拠からは、こうした若年性の原則というようなにも疑問符が付けられているのだ。
高レベルのスキルを持つアスリートは、より技術レベルの低いアスリートたちと同年代か、むしろより年代が高くなってから競技を開始している割合が高い。実際、競技アスリートは専門競技を決定するまでにできるだけ時間をかけた方が良い傾向があって、身体的な成熟度が高ければ高いほど、そのスポーツの基本的な技術をより容易に身に着けることができ、また同じ動作を繰り返しすぎることによるオーバーユース症候群の発症も低下するのだという。1万時間の練習がエリートになる為に必要不可欠であると盲信することによって、あまりにも早い時期に専門競技を特定してしまい、スポーツを好きになる前に身体的にも精神的にも燃え尽きてしまう可能性も高くなるということなのだ。
練習以外の要因としてスポーツ・パーフォーマンスに影響を与えうるのは、速筋優位や遅筋優位などの筋線維の資質の際や血中最大酸素濃度など遺伝的素質による違いと、自信や不安、知性や記憶力など認知的及び心理的、行動的特質の違いがパーフォーマンスの決定要因として重要な役割を占めていると考えられるが、それぞれがどの程度重要であるかについては本研究では未だ明らかになっていない。
様々な要因を検討した場合に、スポーツに限らず、何らかのパーフォーマンスをそもそも100%の確率で予見しうる様な因子が存在するのかといえば、そんなことはないだろう。今後、現在よりもより高い精度で分析できる様になる可能性は否定できないが、やはりヒトのパーフォーマンスを決定づける要因は複雑な相関性を持ったものなのである、と研究者はまとめている。