インフルエンザが猛威を振るっているというニュースが毎日のように出ています。そこで、今年の一番のインフルエンザ関連のニュースはインフルエンザの新しい薬「ゾフルーザ」でしょう。
なんと発売して、瞬く間にシェア1位となり、現在は恐らく60~70%くらいではないでしょうか?(2019年1月下旬に行われたある調査では、実際には12歳以上で開業医34%、勤務医21%、12歳未満で開業医15%、勤務医8%だそうです。すでにシェア1位ではないようです。)品薄とも言われています。(よくある品薄商法でしょうか?)患者さんは自らどの位の割合でゾフルーザを選んでいるのでしょうか?
しかし、私にしてみれば、よくこんな安全性も良くわかっていない薬を飲むもんだ?と思ってしまいます。タミフルのように長く使われていても問題点が指摘されているのに、全くの新薬です。何が起きるかわかりません。しかも、発売前から耐性の問題が指摘されているのです。
日本小児科学会はこの薬を現在のところ推奨していません。(関連記事はここ)
一番は耐性問題でしょう。治験では、12歳以上では9.7%、12歳未満の子供では23%に服用後に耐性ウイルスが出たのです。23%というのはものすごい数です。耐性ができたら回復に時間がかかります。
そんな中、亀田総合病院ではゾフルーザの採用を見送っています。その他の病院でも見送ったところはいくつも存在するでしょう。
亀田総合病院の採用見送り内容は、病院ホームページにあります。
理由として、1.ウイルスの排泄が2~3日後でタミフルより少ない状態となることが利点とされているが、本当にそれによって感染性が落ちることは示されていないこと
2.コストが非常に高いこと(タミフルのジェネリックの約3.5倍高い)
3.耐性の問題
4.未知の副作用の懸念
5.そもそも抗ウイルス薬必要なのか?
最後の5番目の「そもそも抗ウイルス薬必要なのか?」というのが最も重要と言っています。この記事の中で
当院では、院内ガイドラインの通り、治療が推奨されている5歳未満、基礎疾患あり、65歳以上、の場合しか、そもそも処方していません。ここ重要ですよ!ただし、これらの該当しない人でも、約1日は解熱が早まりますので、デメリット(嘔吐5%弱)も踏まえて、きちんと説明して、患者さんに内服するかどうか決めていただいています。実感としては、ほぼ80%くらいの人が、「じゃあタミフルはいりません」と言って、アセトアミノフェンのみで帰宅されます。
土地柄もあるのだと思いますが、きちんと説明すれば、医学的に必須ではない抗ウイルス薬を希望する患者さんは少ないのかもしれません。
と書いています。非常に重要な点です。タミフルが出る前にはみなさん、薬も飲まず(解熱剤は使用していたかもしれませんが)家で寝ていたのです。それで何も問題は起きませんでした。もちろん少しでも早く楽になりたいという気持ちはわかります。しかし、たった半日か1日のために副作用のリスクを負って薬を使う必要があるのでしょうか?また、薬を使うと免疫系が抑制される可能性があり、せっかくインフルエンザに感染したのに、免疫ができない可能性があるのです。そうするとまた次の年もインフルエンザを発症する可能性が高くなってしまうのです。
以前の徳島大学の発表によると、2008/09年シーズンにA型インフルエンザに罹患した患者の2009/10年シーズンにおける再感染率を、2008/09年シーズンの治療法別に調べたところ、再感染率は無治療であった群の8.6%に比べ、タミフル単独投与群では37.3%、リレンザ単独投与群でも45%と有意に高かったのです。インフルエンザの薬を使うせいで、次の年も苦しい思いをするリスクが大きく高まるのです。処方する医師はこのことについても説明すべきです。(図は原文より)
上の図はインフルエンザの治療薬による翌年の再感染率です。上から未治療群、タミフル単独群、タミフル+マクロライド(抗生剤)、リレンザ単独群、リレンザ+マクロライドです。薬は必要がないことがわかります。
しかも、今回は新薬です。ある意味「人体実験」です。医師の一部は新しい薬を試してみたいでしょう。興味がありますから。しかし、患者さんも新しい薬に興味があるのでしょうか?自ら「人体実験」に参加している人も少なくないでしょう。自分の子供にこのような薬を使おうと考える親もいるかもしれませんが、よく考えましょう。厚労省が承認したから安全とでも思っているのでしょうか?耐性が10%もできてしまう薬を承認した厚労省も問題でしょう。子供では4人1人程度が耐性ができるのですよ。お金の力でしょうか?しかも非常に高額の薬です。健康保険で自己負担が少ない日本ではコスト意識は低いでしょうし、子供は自己負担がないでしょうから、どんどん処方する小児科もいるかもしれませんね。
そんなに1回内服が利点でしょうか?そもそも薬が必要がないことも考えると、ちゃんと患者さん側も考える必要があると思います。
私は怖いので自分や家族には使いません。
以前の記事「インフルエンザでパニックになる日本国民」で書いたように、日本人はインフルエンザで、患者も医療側もパニックのようです。そして、インフルエンザが検査で陽性であれば、会社を休めるのに、陰性であれば高熱でも出勤させる企業もあるようです。「陰性=インフルエンザではない」ではありませんし、そもそも高熱が出ていればインフルエンザでも他の風邪でも仕事は難しいですし、インフルエンザでなくても高熱を出す風邪をうつしてしまいます。インフルエンザだけ特別扱いをするから、このようなパニックを起こしてしまうのです。
ちなみにイナビルという薬は、日本だけの薬で、海外では臨床第Ⅱ相試験の結果、症状改善までの期間に有意差が認められず、海外での販売を断念しています。そんな薬を日本ではどんどん使っていました。本当に日本人は薬が好きなんですね。
みなさんもインフルエンザビジネスに引っかからないようにしましょう。テレビや新聞のインフルエンザのニュースも、企業が仕掛けている可能性もあります。
「Immunomodulator clarithromycin enhances mucosal and systemic immune responses and reduces re-infection rate in pediatric patients with influenza treated with antiviral neuraminidase inhibitors: a retrospective analysis」
「免疫調節剤クラリスロマイシンは抗ウイルス性ノイラミニダーゼ阻害剤で治療されたインフルエンザの小児患者における粘膜および全身免疫応答を増強し再感染率を減少させる:後ろ向き分析」(原文はここ)