肥満と腎機能の関連はどのようになっているのでしょうか?当然、BMIが高いほど腎機能が低そうですね。
今回の研究では、40か国のコホートをもとに肥満と腎機能低下のリスクを分析しています。ここでいう腎機能低下とは、eGFRの40%低下、eGFRが10未満、または透析の導入を言います。(図は原文より)
上の図はBMIが横軸、縦軸が腎機能低下のリスク比です。BMI25を基準としています。●が有意差があるポイントです。そうすると、BMIが25よりも高くなればなるほど、つまり太れば太るほど腎機能低下のリスクは高くなります。しかし、BMIが低すぎてもリスクは高くなるようです。
左上の図は元のeGFRによる違いを示しています。最初の図と同様にBMI25を基準にして、それ以上であるとリスクがだんだん高くなっていますが、eGFRが60未満では、BMI25未満でもリスクが高くなっています。
男性(右上の図)や糖尿病(左下の図)でもBMI25未満でリスクが高くなっています。右下の図はアジア人と非アジア人の図です。アジア人はやはり欧米人より肥満になる人が少ないのか、BMI25以上でのリスクの上昇度が大きいです。そして、BMI25未満でリスクが逆に減少し、BMI18くらいまでリスク増加がありません。
この研究者はBMI25が最も良い状態だと強調したいようです。しかし、もともと体格の違うアジア人と欧米人ではBMIの基準値が異なるのは当然でしょう。欧米人では恐らくはBMI25が基準かもしれませんが、日本人を含めたアジア人ではBMI20~22程度が基準になると思います。様々な研究においてBMIとの関連を見る場合には気をつけなければなりません。
上の図は上のグラフが腹囲と腎機能低下のリスク比、下のグラフがウエスト/身長比と腎機能低下のリスク比を示しています。いずれもいわゆる内臓脂肪性の肥満との関連を見ています。どちらもお腹周りが増加するほどリスクが高くなっています。
まあ、当たり前の結果と言えば当たり前でしょう。糖質制限をするとタンパク質をいっぱい摂ることになります。以前の記事「高タンパク食は腎臓に悪影響がないばかりか糸球体濾過量(GFR)を増加させる」で書いたように、決して高タンパク食は腎臓に悪影響を与えるわけではなく、高タンパク食の方がGFRが高くなるのです。
そして、以前の記事「慢性腎臓病とコレステロールと死亡率」でも書いたように、コレステロールの低下は慢性腎臓病の人の死亡率を高めます。しかも、ステージ5の患者では逆に、コレステロール180以上だと死亡リスクの低下と関連していたのです。
糖質過剰摂取で、肥満となり、血糖値スパイクが腎臓に悪影響を与えると考えます。腎臓のために糖質制限をして、脂質やタンパク質はたっぷり食べましょう。
「Adiposity and risk of decline in glomerular filtration rate: meta-analysis of individual participant data in a global consortium」
「肥満と糸球体濾過率低下のリスク:グローバルコンソーシアムにおける個々の参加者データのメタ分析」(原文はここ)